深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

作家別

IT/スティーヴン・キング~「忘却」は大人を守り、子供を幽霊に変える。~

≪内容≫ 一本の電話が、六人それぞれの平穏を破る。長いあいだ記憶の底に眠っていたものを、揺り覚ます。二十七年前、ある場所で、あることが起こった。そして、ひとつの約束がなされた。いま、その時がきたのだ。「さあ帰るんだ、故郷の町へ」。だれもそれを…

サリンジャー選集 (別巻1) ハプワース16、一九二四~神に祈ろうが問題は全て自己の内にある~

≪内容≫ グラース家の長男、7歳のシーモア・グラースが、1924年の夏休みにメイン州のキャンプ地・ハプワースに来てから16日目に家族に送った長い手紙を、1965年に弟バディがタイプライターで書き写している、という形式で叙述される書簡体小説。シーモアの、…

我が父サリンジャー~サリンジャー、カモメに激怒する~

≪内容≫ 今でも隠遁生活を続けているアメリカ文学の巨匠サリンジャー。ドイツ人女性との最初の結婚、英国貴族の娘との再婚、隠遁生活をコーニッシュに求めた理由など、多くの謎に包まれた彼の実像をすべて明らかにした娘の回想録。 サリンジャー読んでるとす…

ナイン・ストーリーズ/サリンジャー~バナナフィッシュにうってつけの日の謎~

≪内容≫ バナナがどっさり入っているバナナ穴に行儀よく泳いでいき、中に入ると豚みたいにバナナを食べ散らかすバナナフィッシュ。あんまりバナナを食べ過ぎて、バナナ穴から出られなくなりバナナ熱にかかって死んでしまうバナナフィッシュ……グラース家の長兄…

大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア-序章/サリンジャー~愛が悲しいものだということを神は知っている。~

≪内容≫ 画一化された価値観を強いる現代アメリカ社会にあって、繊細な感受性と鋭敏な洞察力をもって個性的に生きようとするグラース家の七人兄妹たち。彼らの精神的支柱である長兄シーモアは、卑俗な現実を嫌悪し、そこから飛翔しようと苦悶する―。ついに本…

サリンジャー選集(2) 若者たち~理想はリアルからすごく遠い場所~

≪内容≫ ライ麦畑の原型「気ちがいのぼく」やホールデンの兄ヴィンセントの物語も収録。 ずーっとサリンジャーを読んでいるので、しばらくサリンジャー記事になってしまいます。サリンジャーの「ナインストーリーズ」と「フラニーとズーイ」はすでに半年くら…

第四解剖室/スティーヴン・キング~やさしい少年が書いたやさしい物語たち~

≪内容≫ 私はまだ死んでいない、死んでいないはずだ。ゴルフをしていて倒れた、ただそれだけだ。それだけなのに。だが、目の前にある解剖用の大鋏は腹へと迫ってくる……切り刻まれる恐怖を描いた標題作のほか、ホラーからサスペンス、ファンタジー、O・ヘンリ…

タイド/鈴木 光司~大いなる母と壮大な兄弟げんか、選ばれた者は捨てられた者の怨念を引き受ける~

≪内容≫ 高山竜司、二見馨という二人の男の人生を生きた記憶を持つ、予備校講師の柏田誠二は疑問を抱えていた。おれは何のためにこの世界にいるのか…。謎の病に伏した少女を介し受け取った暗号に導かれ、伊豆大島に渡った柏田は、『リング』という本に記され…

エス/鈴木 光司~神が唯一できないことを、人はする~

≪内容≫ 映像制作会社に勤める安藤孝則は、ネット上で生中継されたある動画の解析を依頼される。それは、中年男の首吊り自殺の模様を収めた不気味な映像だった。孝則はその真偽を確かめるため分析を始めるが、やがて動画の中の男が、画面の中で少しずつ不気味…

生と死の幻想/ 鈴木 光司 ~家族を守るために闘うはお父ちゃん~

≪内容≫ 平和で安全な世界でなければ生きる価値はない、と思う人間があまりに多すぎやしないか。どんな悪行がはびころうとも死が間近に迫ろうとも、世界は生きるに値する…。生の根源の闇と光を見据えた新世代作家の、現代日本への警告。 リングシリーズとは全…

バースデイ/ 鈴木 光司~リングシリーズのあの時こうなってました話~

≪内容≫ リングの事件発生からさかのぼること三十年あまり。小劇団・飛翔の新人女優として不思議な美しさを放つひとりの女がいた。山村貞子―。貞子を溺愛する劇団員の遠山は、彼女のこころを掴んだかにみえたが、そこには大きな落とし穴があった…リング事件フ…

ループ/鈴木光司~いつからここが現実だと錯覚していた?~

≪内容≫ 科学者の父親と穏和な母親に育てられた医学生の馨にとって家族は何ものにも替えがたいものだった。しかし父親が新種のガンウィルスに侵され発病、馨の恋人も蔓延するウィルスに感染し今や世界は存亡の危機に立たされた。ウィルスはいったいどこからや…

らせん/鈴木光司~ベストセラーというパンデミック~

≪内容≫ “リング”の恐怖に連なる、カルトホラー!幼い息子を海で亡くした監察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山の解剖を担当し、冠動脈から正体不明の肉腫を発見した。遺体からはみ出した新聞に書かれた数字は「リング」という言葉を暗示していた。 リング…

リング/鈴木光司~おまえにとって最大の敵は、その貧弱な想像力だ~

≪内容≫ 同日の同時刻に苦悶と驚愕の表情を残して死亡した四人の少年少女。雑誌記者の浅川は姪の死に不審を抱き調査を始めた。―そしていま、浅川は一本のビデオテープを手にしている。少年たちは、これを見た一週間後に死亡している。浅川は、震える手でビデ…

夜行/森見 登美彦~「見えない」と「存在しない」はイコールではない~

≪内容≫ 僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったか…

罪と罰/ドストエフスキー~人を一人殺せば人殺しだが、数千人殺せば英雄である~

≪内容≫ 鋭敏な頭脳をもつ貧しい大学生ラスコーリニコフは、一つの微細な罪悪は百の善行に償われるという理論のもとに、強欲非道な高利貸の老婆を殺害し、その財産を有効に転用しようと企てるが、偶然その場に来合せたその妹まで殺してしまう。この予期しなか…

潤一郎ラビリンス〈2〉マゾヒズム小説集~マゾヒストの始まりから終わりまで~

≪内容≫ 「饒太郎」「蘿洞先生」「続蘿洞先生」「赤い屋根」「日本に於けるクリップン事件」の五篇を収める。自らマゾヒストを表明した主人公饒太郎。日本に生れたこと後悔すると言いながらも、西欧の書物から被虐の喜びを求めるひとが世界の至るところに居る…

潤一郎ラビリンス〈1〉/谷崎 潤一郎~快楽に導くのは究極の我慢~

≪内容≫ 荷風の激賞をうけ颯爽文壇に登場した谷崎。―清吉と云う若い刺青師の腕きゝがあった。彼の年来の宿願は、光輝ある美女の肌を得て、それへ己れの魂を刺り込む事であった。官能的耽美的な美の飽くなき追求を鮮烈に描く「刺青」ほか、「麒麟」「少年」「…

眼球譚(初稿)/バタイユ~この世界がまっとうに思えない人たちへ~

《内容》 一九二八年にオーシュ卿という匿名で地下出版されたバタイユの最初の小説。本書は、著者が後に新版として改稿したものと比べて全篇にわたって夥しい異同がある。サド以来の傑作と言われるエロティシズム文学として、「球体幻想」を主軸に描き上げた…

青の炎/貴志祐介~映画と小説って似て非なるよな、と実感した話~

≪内容≫ 櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏みにじる闖入者が現れた。母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、…

ロング・グッドバイ/レイモンド・チャンドラー~金と美では生き抜けない。~

≪内容≫ 私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは…

ティファニーで朝食を/カポーティ~普通よりは自然になりたいんだ~

≪内容≫ 第二次大戦下のニューヨークで、居並ぶセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。気まぐれで可憐、そして天真爛漫な階下の住人に近づきたい、駆け出し小説家の僕の部屋の呼び鈴を、夜更けに鳴らしたのは他なら…

また、同じ夢を見ていた/住野よる~正論側のタイミングでやるから上手くいかないこともある~

≪内容≫ 友達のいない少女、リストカットを繰り返す女子高生、アバズレと罵られる女、一人静かに余生を送る老婆。彼女たちの“幸せ"は、どこにあるのか。「やり直したい」ことがある、“今"がうまくいかない全ての人たちに送る物語。 住野さんは三作目ですが、…

乳と卵/川上未映子~ジェンダーレス、どうでしょう?~

≪内容≫ 第138回芥川賞・受賞作品。現代の樋口一葉の誕生! 初潮を迎える直前で無言を通す娘と、豊胸手術を受けようと上京してきた母親、そしてその妹である「わたし」が三ノ輪のアパートで過ごす三日間の物語。三人の登場人物の身体観と哲学的テーマが鮮やか…

アンナカレーニナ/トルストイ~生きるって地道の連続~

≪内容≫ 青年将校ヴロンスキーと激しい恋に落ちた美貌の人妻アンナ。だが、夫カレーニンに二人の関係を正直に打ち明けてしまう。一方、地主貴族リョーヴィンのプロポーズを断った公爵令嬢キティは、ヴロンスキーに裏切られたことを知り、傷心のまま保養先のド…

戦争と平和/トルストイ~人間の愛で愛していれば、愛から憎悪に移ることがある~

≪内容≫ 19世紀初頭、ナポレオンのロシア侵入という歴史的大事件に際して発揮されたロシア人の民族性を、貴族社会と民衆のありさまを余すところなく描きつくすことを通して謳いあげた一大叙事詩。1805年アウステルリッツの会戦でフランス軍に打ち破られ、もど…

イワンのばか/トルストイ~悪でもって悪をとりのぞくことはできない、ではどうしたら悪をとりのけるだろう?~

≪内容≫ ここに収められた「イワンのばかとそのふたりの兄弟」はじめ9篇の民話には、愛すべきロシアの大地のにおいがする。そして民話の素朴な美しさの中に厳しい試練に耐えぬいたトルストイ(1828‐1910)の思想の深みがのぞいている。ロマン・ロランが「芸術以…

君の膵臓を食べたい/住野よる~誰かと比べて足りないところがあっても、あなただけの魅力がある~

≪内容≫ ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて―。読後、きっとこのタイトル…

R帝国/中村文則~幸福に生きることと正しく生きることは違う~

≪内容≫ 舞台は近未来の島国・R帝国。ある日、矢崎はR帝国が隣国と戦争を始めたことを知る。だが、何かがおかしい。国家を支配する絶対的な存在″党″と、謎の組織「L」。やがて世界は、思わぬ方向へと暴走していく――。世界の真実を炙り出す驚愕の物語。『教団X…

冷血/カポーティ②~私達は答えのない苦しみをずっと抱えて生きていく~

≪内容≫ カンザス州の片田舎で起きた一家4人惨殺事件。被害者は皆ロープで縛られ、至近距離から散弾銃で射殺されていた。このあまりにも惨い犯行に、著者は5年余りの歳月を費やして綿密な取材を遂行。そして犯人2名が絞首刑に処せられるまでを見届けた。捜査…