深夜図書

毎日23:30更新の書評ブログです。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

虐殺器官/伊藤計劃~目も口も閉じれるけど耳は閉じられない~

≪内容≫

9・11以降の、“テロとの戦い"は転機を迎えていた。
先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。
米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……
彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官"とは?

 

何か1年前位に本屋さんで映画予告と一緒に宣伝してあったなーという記憶。

なんと、製作会社の経営破綻から延期されてた模様。

この手の映画化となると「スカイ・クロラ」が浮かぶのですが「スカイ・クロラ」より断然分かりやすいだろうなと思う。

スカイ・クロラ」のシリーズ全部読み終わってないのであの一遍だけじゃ「???」でなんとなーくそーゆーことかしら?みたいなふわっとしてます。

もったいないので時間ある時にシリーズ読破したいです。

主人公のクラヴィス中村悠一さん

謎の男ジョン・ポールを櫻井孝弘さんで今冬公開予定だそうです。

秋は「君の名は。」だし、良き年だなぁ。。

 

話が反れましたが、SFなんですけどすっごく読みやすかったです!!!

これは私の読解力が上がってきたのでしょうか!?以前は想像力皆無だった為SFすっごく苦手でした・・・。今よりももっともっと情報化されてセキュリティが徹底された時代になっています。これは9・11後のアメリカ、米軍が主軸のストーリー。

 

テロとどう向き合うか。

作者、伊藤計劃さんはこう想像したんだなー。と思いました。今日、アルカイダによるテロが世界各国で起ってますよね。「怖い」と思いつつ日本にいるとなんだか遠い国の話のように感じませんか?日本も標的の一つと公言してる様ですが、実際起こってからでは遅いのに、起こらないと自覚を持てない。もしも自分がアメリカ人で、あの貿易ビルに恋人が、家族がいたら。トルコでフランスでバングラディシュで愛する人が巻き込まれていたら・・・テロから自分の国を守る為にどうしたら良いか。

愛する家族をテロによって奪われたジョン・ポールが出した答えとは。

 

「私は考えたんだ。彼らの憎しみがこちらに向けられる前に、彼ら同士で憎みあってもらおうと。彼らがわれわれを殺そうと考える前に、彼らの内輪で殺しあってもらおうと。そうすることで、彼らとわれわれの世界は切播り離される。殺し憎み合う世界と、平和な世界に。」

憎しみの矛先が、いまにもG9に向かいそうな兆候のある国を見つけ出す。

自分たちの貧しさが、自分たちの悲惨さがぼくらの自由によってもたらされていることに気がつきそうな国を見つけ出す。

そしてそこに虐殺の文法を播く。

国内で内戦がはじまれば、怒りを外に向けている余裕はなくなる。国内で虐殺がはじまれば、外の人々を殺している余裕は消し飛ぶ。外へ漏れそうだった怒りを、その内側に閉じ込める。ジョン・ポールは、ぼくらの世界へのテロを未然に防ぐため、虐殺の旅を重ねたと言っているのだ。

 

神様がアダムとイヴを作って人類みな兄弟というなら、どうして殺しあうの?どうして奪い合うの?1つ手に入れればもっと欲しくなる。そんな浅ましさをどうして人に与えた?それを乗り越えるのが試練?

地球が滅びて新しく生まれ変わったって人は殺しあい、奪い合うと思う。アメリカやイギリスが支配しなくったって代わりにどこかの国が支配する。

それは自分の国を豊かにする為、他国を虐げるという事。もちろん他国からは恨まれて当然だろう。言葉があるのに解りあえない。人は手にしたものを手放せない。

それが人一人の命を救うと分かっていても実際目にし、実感を得ないと動けない。

例えば政府がこれから発展途上国のインフラを設備する為に無償で作業に行ってきます!だからお金は皆税金で出してね!月に一人1万5千円ボランティア税取りまーす!!なんて言ったら素直に了承出来ますか?

その1万5千円で恋人と素敵なディナーが食べられるし、日帰りで温泉に行ったり、貯金すればいざという時力になる。老後だって心配だし。

今まさに餓死寸前の子供<生きてるかもわからない自分の未来

大事じゃないですか?他国と比べてどうかはわかりませんが、日本は島国なので国境がない為さらに他人事感が強いんじゃないかなと思います。難民とか言われても国境とか言われてもイマイチな人って多いんじゃないでしょうか。私はそうです。

大変だなって思ってる。でも日本に難民がたくさん来たら今までの平和は壊れてしまうかもしれない。そこで私はアジアからの難民なら近いししょうがないけど中東は遠いし仕方ないよねって目を反らしている。まさに人は見たいものしか見ない。ジョン・ポールの言う通りだ。

 

虐殺の文法とは

虐殺器官とは脳の中にあらかじめ備わった、言語を生み出す器官。

その器官が発する文法こそが虐殺の文法という事・・・だと思う。

 ジョン・ポールは研究を進めるうちに言葉の内に潜む暴力の兆候が見えるようになった。そしてこの文法による言葉を長く聴き続けた人間の脳には価値判断に関わる脳の機能部位が抑制される。それが「良心」と呼ばれるものの方向を虐殺へと向かわせるという事・・・だと思う。

詳しく文言が書いてあるわけではないのでそれがどんな文法なのか気になりますがそれは読者への楽しみなんでしょうかね。考えてみて!的な。

人が話す言葉とはリズムです。よく棒読みという表現がありますが人はリズムを自然に持ってるからそうゆう表現が出来ると思ってます。

そしてそれは国によって日本なら表拍、欧米なら裏拍が身体に染み込まれています。二本人だと救急車の音って「ピーポーピーポー」ですが欧米人は「ポーピーポーピー」と聞こえるらしいです。

人は見たいものしか見ない。話したいことしか話さない。

「・・・耳にはまぶたがない、と誰かが言っていた。わたしのことばを阻むことは、だれにもできない」

私の中で一番グサっときたところです。

五感の中で嗅覚も瞼はないですが口呼吸とか息を止めるとかまぁ無理すれば防げます。でも耳は・・・。耳ってすごく無防備だよなって思いました。

それ故に影響力は抜群ですよね。昔、職場で五感が一つずつなくなっちゃうとして最後まで残ってて欲しいのは?っていうテーマで4人で話してたんですが、私以外は視覚でした。確かに見えないのは怖いです。

でも私は聴覚が一番消えて欲しくなくて、理由は自分が音楽を愛してることもそうだし声にはその人の隠しきれない想いが振動で伝わるし、映画とか無音だったら楽しめないけど風邪のときとか眼を閉じてて聞いてるだけでも楽しい時あるし、風の音や鈴虫の音とかにすごく癒されるなってなんだか結構耳を使って生きてるみたいです。

声が弾んでると表情って大体明るいので声って嘘つけないなとも思いますし。

あと会話って人と繋がってるって、一人じゃないって思えるのでやはり人との繋がりを最後まで残しておきたい・・・といった所ですかね。

 

ラヴィスの下した決断

射殺されたジョン・ポールの残した虐殺の文法を生成出来るエディターを使いアメリカ全土に虐殺を仕掛けた。アメリカ以外の全ての国を救うために。

 

結局全ては平等にならないし、戦争は終わらない。どこかの国でいつも争いは起きてる。ここでアメリカが壊滅しても新たなアメリカは現れる。私達に出来ることはありきたりだけどこれ以上悲しみを増やさないこと。だけど悲しみがなくなればきっと新たな悲しみが生まれる。どうすればいいんだよー。私には何の力もないけど、どうしたら戦争がなくなるのか凄く考えてしまう。

それともう奪い合わないで欲しいと思う。その土地にある資源に手を触れないで、その土地の人たちで生きていけるように手を差し伸べてくれたら・・・と。

そうしなきゃ世界共通語が英語になったって解りあえないじゃんよーと思う私なのでした・・・。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

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