深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

島の卑怯者/小林よしのり~私たちの役回りとは~

≪内容≫

日本人よ、これが戦争だ!

ゴーマニズム宣言スペシャル戦争論』で戦後日本人の戦争観を覆した小林よしのりが、戦後70周年の節目に、初の戦場ストーリー巨編に挑む。舞台は天皇皇后両陛下も訪問したパラオペリリュー島を想定した南の島。玉砕戦に臨む日本兵を主人公に、壮絶な戦闘シーンと極限の人間ドラマを描ききる。日本の戦争ドラマにありがちな「反戦平和」や「お涙頂戴」などのお約束をすべて排除し、戦争のリアルだけを追及したこの作品は、『プライベートライアン』や『地獄の黙示録』といった戦争映画に比肩するスケールと迫力を持つ。究極の戦争ドラマに、血湧き肉躍り、心震える!

 

これぞリアル!と思うけど、本当のリアルも本当の「分かる」も経験してない人間は毛ほども分らないだろう。

だけど、戦争映画とか小説とか何かいい話風にしてないか?と思う。

何か違和感ってゆうか、息子に赤紙が届いて泣きながらバンザイする母とか

恋人に赤紙が来て涙しながら「お国の為に・・・」とかいう娘とか

もちろんそうゆう人たちも居たと思うし、否定するわけじゃないけど全員が全員そんな「国のため」で割り切れたのかなって建前だとしても心情は描かれていなくって想像に任せる的な・・・。

 

この本はすごく言葉にして書かれています。察してねというレベルではないです。結構気持ち悪くなります。

傷口に沸く蛆

全身ヒルに噛みつかれながら沼に沈んだ死体を踏み歩き

隊長が切腹して出た血を飲ませるため自分のヘルメットに入れる

食糧確保の為に弱音を吐く奴を沼に落とす

そんな中で米軍は戦場でたらふく食いながら娯楽室まで作って、夜は女も一緒にパーティやりながら戦っているという状況・・・。

 

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この軍神様、映画「キャタピラー」とほぼ同じですね。片腕ありますが・・・

キャタピラー [DVD]

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 この時代は軍神様をリアカーに乗せ歩く事が普通だったのでしょうか?いや、もう普通とは何?という感じですが・・・

この左側の桃を渡されてる女の子は軍神様に好かれていて結婚を申し込まれますが

嫌と言います。その事に対し、隣の青年は怒りをあらわにします。

女(桃を河に捨てる)

「な・・・何してるんだ!?」

「いやなのよ私・・・あんな人に気に入られるのがいやなのっ!」

「なんて女なんだ・・・これだから女なんか信用出来ないんだ!」

「なによ?何が言いたいわけ?」

「御国のためとか言いながら、男があんな姿で帰ってきたら差別する!それが女の本性じゃないかっ!女は本来的に子を産み、育てる存在なんだから、本能が保守的に出来ている。恋人や夫や息子が戦場で死ぬことを、女が万歳三唱で喜ぶなんてあり得ないことだ!嬉しそうにバンザイ、バンザイ叫んでる国防婦人会なんて嘘っぱちな連中なんだよ!手足をなくした帰ってきた傷痍軍人には、建前で軍神さまと拝みながら、裏では使い物にならない肉の塊と嘲笑ってるんだよ!君も同種の卑怯な女の仲間だ!」

 

食糧難になり、動けぬ兵士が生きるために食べてしまうシーン

「隊長、俺を始末してください。生きたくて・・・負けてしまう。斬り込みのための食糧を食べてしまった!」 

(中略)

隊長「盗人でも帰りたがるその国を守るために・・・明治以来、膨大な数の若者が死んでいったのだ!そしてここで我々が玉砕を恐れ逃げることが・・・帰るべき祖国を永久に失う結果につながるかもしれん!今、この時、祖国の存続を誰が保証する!?まさか、米国が保証するときさまたちは言うのかっ!?」

(中略)

「悲しいことだが俺達は不遇の時代に生まれた。戦争の時代に!これが俺たちの役回りである!!」

 

卑怯者こと主人公は五体満足のまま国に帰りますが、そこはもう自分の知ってる日本ではなかった・・・

 殺しあった米軍が大手を振って歩いている。

バンザイといって送り出した人々が誰も敬意を払わない。

新聞も女も子供も占領軍に媚を売っている。

あの軍神様は傷痍軍人として物乞いをしてた・・・。

 

卑怯者は最後バスジャックの犯人のナイフを自分の腹に突き刺しあの忌まわしき島へ犯人と共に行きます。

平和になれば平和になったで自分の存在価値が分らず犯罪を犯す者が生まれる。

「こんな世の中つまらないだろう?」

「おまえも来い!死臭が鼻をつき、うめき声が鼓膜をふるわせるあの時空へ!死神に包囲されながら、生の輝きが凝縮したあの島へ!」

「死と生がべったり密着した世界をおまえにも教えてやりたい!!」

 

私たちの役回りとは

なんでしょう?平和になり、貧困の差が更に開き、出生率は下がり、高齢化が進んだ社会。私は不謹慎なんですけど、昔っていいな・・・って思うんです。今よりもっと不便でもっと何も無くって汚くって・・・安全じゃなくって、理不尽で、男尊女卑で・・・でもだからこそ希望が輝いてる。自分次第でどうにもなれる。ダイヤの原石みたいな。

今はもう物がありすぎて、自分の価値なんて石ころみたいで。

自分がしなくったってもうあるし、何やっても二番煎じみたいな・・・。

結婚だって別にしなくったって生きていけるし、独りで楽しめる娯楽もたくさんある。

これは私の考えでそーじゃない人だってたくさんいるけど、人って辛い時、大変だった時が一番活性化されてると思います。

自分が頑張ることで誰かの為になる。そこに何の疑問も持たずに一心不乱になれる環境、それが人を一番輝かせると思うんです。

今、孤独な人って実はたくさんいるんじゃないかなと思ってます。普通に働いて、生きていけるお給料をもらって、美味しいもの食べて・・・それでも人って自分の価値が見出せなきゃつまらないんじゃないかなって思います。

まぁ人って・・・とかいって私がそうなので私だけじゃないよねと思いたいので。笑

 

平和を命懸けで掴んでくれた先代の人が語り部となり、戦争を語ってくれた時代ももう長くありません。これから戦争を知らない世代だけになった時、日本はどうなるんだろう?そして私たちはこの平和な日本でどんな役回りをすべきだろう。何をしたらいいんだろう。

 

美化された映画やドラマよりもっと切実に戦争という悲劇、この時代に生まれた意味・・・考えさせられる本でした。

是非読んでみてください。

卑怯者の島: 戦後70年特別企画

卑怯者の島: 戦後70年特別企画