深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

最後の家族/村上龍~家族の在り方はそれぞれ~

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≪内容≫

リストラにおびえる父親・秀吉、若い大工と密会を重ねる母親・昭子、引きこもりの長男・秀樹、10歳年上の元引きこもりの男と交際する長女・知美。ある日、向かいの家で男に髪をつかまれて引きずられる女を目にした秀樹は、それが「ドメスティック・バイオレンス(DV)」だと知り、いつしか女を救うことを夢想しはじめるが…。

 

私の思う普通の家族とは、親が不貞を働いてなく、真面目に仕事をしていて子供も非行(犯罪等に当たるもの)に走らず、就職する(フリーターでもok)という感じです。

 

誰かの為になっているということ

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DVを目撃した秀樹の中である思いが芽生えます。

「彼女を救いたい」「彼女はそれを求めてるはず」

自分の存在意義を彼女に見出しました。それからDVについて調べていくうちに弁護士さんと会うことに・・・。ここでこの小説の核となる部分に触れます。

 

「女性を救いたいというのは、DVの第一歩なんです。救いたいという思いは案外簡単に暴力につながります。それは、相手を、対等な人間として見てないからです。対等な人間関係には、救いたいというような欲求はありません。彼女は可哀相な人だ。だから僕が救わなければいけない。ぼくがいないと彼女は不幸なままだ。(中略)そういう風に思うのは、他人を支配したいという欲求があるからなんです。(中略)他人を救いたいという欲求と支配したいという欲求は、実は同じです。」

 

私達は発展途上国に対して「可哀相」「募金してあげよう」「自分達に出来る事は何だろう」と大多数の人が思っていると思います。

 

それは間違いなのか?支配したいと思っているのか?

 

答えは「No」だと思います。助けたいと思ってるとは思います、可哀相とも。

 

だけど、それは正解ではないかもしれません。

なぜ募金しても発展途上国は貧困から抜け出せないのか。それは国の問題です。一時の募金額で救われるのはその国の中のある程度裕福な人と聞きます。上の人からどんどんお金をくすねて最後に、本当に貧しい人たちには渡らないと・・・。

 

だから私達に出来る事は募金ではなくて、その国が変わるのを見守ることだと思ってます。学校を作る。教育する。お金ではなく、その国のその土地で生きる人々が生きていける仕事をマネジメントする事・・・ではないでしょうか。

でも自分の募金で一人でも餓死がなくなれば・・・という思いが前提に絶対あってほしいです。

 

自立することで変わる

自分を変えるのは自分。誰かを変えることは出来ない。他人に出来るのは言葉をかける、行動で示す。それだけ。

 

秀樹を救ったのは母です。その理由として母がカウンセラーやNPO、大工の恋人(?)と話す内に自立したからと弁護士は言います。

 

親しい人の自立は、その近くにいる人を救うんです。

 

と。

誰もが一度は無意識の内に「家を出て行きたいけど、お母さんが悲しんでしまうかもしれない」の様な事を家族なり、恋人なり、親しい人に感じた事あるのではないでしょうか?

 

だけど、母が自分がいなくても楽しそうにしてたらそんな事思いませんよね?両親が家族の為に生きてます!!!って感じだと息苦しくてたまらない。

 

もしかしたら家の両親が執拗に家を出てけと言ったのも「縛られるな」という親心があったのかもしれないなぁと今では思います。

 

結婚しようが、一人で生きていけるように自立すること。

それこそが夫を、子供を救うことになる・・・。

 

まだ、全然実感ないですが、いつか分かる時が来たらいいな。

余談ですが、私の大好きな少女マンガの名台詞はホットロードの「てめーおれがいないと生きてけねーような女になるなっ」なので「俺がずっと守ってあげるよ」的な感じだと閉まっちゃうおじさんに捕まったぼのぼのの様な気持ちになります。

ぼのちゃんとしまっちゃうおじさん

ぼのちゃんとしまっちゃうおじさん

 
ホットロード 1 (集英社文庫(コミック版))

ホットロード 1 (集英社文庫(コミック版))

  • 作者:紡木 たく
  • 発売日: 1995/08/18
  • メディア: 文庫
 

「ホットロード」の記事を読む。

結局自分のやりたいよーにやってる人って輝いてるし、人を巻き込んでるようで元気にしてるんだよなーって思うことが多いので自分のやりたいよーに生きようと思います!

 

あとがきから

 

この小説は、救う、救われるという人間関係を疑うところから出発している。誰かを救うことで自分も救われる、というような常識がこの社会に蔓延しているが、その弊害は大きい。そういった考え方は自立を阻害する場合がある。 

 

自分ひとりでも生きていける力を身につけること。

それは一人で生きてくって事でもなくて、人の助けを求めないって拒否する事でもなくて、逆に親しい人の箍を外すきっかけになりうるということ。

 

人が勝手に決めてる自分ルール。でもふとした瞬間

「それってやっていいんだー」

「もっと自由に生きていいんだー」

そう思える瞬間があると思います。

 

あなたが、私が自立することを引き止める人がいるかもしれない。

「そんなに強くならなくていんだよ」とか

「どこにも行かないで」とか。

それでも、自立するべきだと思う。

最後の家族 (幻冬舎文庫)

最後の家族 (幻冬舎文庫)

  • 作者:村上 龍
  • 発売日: 2003/04/01
  • メディア: 文庫
 

自立したあなたの姿が誰かのきっかけになるかもしれないから。