深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

少女七竈と七人の可愛そうな大人/桜庭一樹~誰にも食べられずに朽ちる美しさはいらない~

≪内容≫

「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竈は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だが、可愛そうな大人たちは彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈――誰もが七竈に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竈の間柄にも変化が――。雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。

 

旭川に行ってみたいな。

北海道に行ったことがないから想像が乏しいのと、あまり雪の描写がないんですが、この坦々としたストーリーがしんしんと降りそそぐ雪の様に思えて、それがまた綺麗で儚い感じがします。

 

GLAYの「Winter Again」の一節

降り続く白い雪は 心模様 そっと
滔々と白い雪は 無常なる人の世を
すべて 許すように降り続いて行く 

 がぴたりとハマって、久しぶりにGLAYを聴きました。

 

少女七竈と雪風

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大変美しく生まれてしまった二人。

鉄道が好きな二人。

川村七竈と桂雪風は義兄弟。

大人は何も言わないけれど、鏡のように似たかんばせが何より物語る。

やがてときがたちかつてぼくがいたという記憶もただ七竈の心の中だけに残る。しかし現実の北海道にはぼくなど最初からいなかったような。

そんなふうにして、ぼくは消えてしまう気が。

あぁ、時間よ止まれ。

日々がただ美しいうちに。

 進学の季節がやってきて、レールは二手に分かれる。

 

ずっと一緒にはいられないことを受け入れた七竈と、旅立つ七竈にさよならを決める雪風

雪風の「ここで生まれてここで死ぬ」という表現が、真っ白な雪で閉ざされた北海道を連想させる。

たったひとりの友人で、親友で、兄弟で、好きな人と離れて、七竈は大人になる。

 

 

少女七竈と乃木坂れな

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(前略)

わたしは大人にかんばせを褒められたり、同級生の女子に憎まれたり、異性に憧れられたりし続けてきました。しかし誰もわたしの本質にふれたものはいなくて、それは他人を責めるようなことではく、自分自身もまた、自分を知ることができずにいました。

わたしはどんな女であるのか?

ラメの輝きをもつかんばせに邪魔されて、わたしはずっとわからずにおりました。

 

七竈を東京に誘ったのが芸能マネージャーの梅木という女で、その女は昔、乃木坂れなというアイドルをしていた。

七竈の母である優奈は乃木坂れなのファンだった。

 

きっと七竈も同じなのではないかと思う。

誰も七竈の本質には興味がなくて、美貌だけが一人歩きする虚しさ。

 

非凡な美しさを持ちながら母に愛されなかった二人。

果たして七竈は可愛そうな大人たちの中で、自分を見つけられるだろうか。

 

ここにいたら、あっというまに年を取りそうだ。そして乃木坂れなのようにかつて美しかったもの、というべつの生き物に、あっというまに、なるのだ。

そう思うとわたしはうきうきした。

それこそ生きるということのように思った。

わたしは生きてなかったのだ。

母の呪縛に、囚われて。

成就せぬ恋に、絶望して。

ずっと凍りついていた。

 

少女七竈といんらんな母・優奈

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目を閉じて、探してみる。

自分という女のからだ中を、探してみる。

どうしても、みつからない。

もうどこにも存在しない。

衝動が。欲望が。ここに触れてほしい、誰かに愛してほしいという願いが。もうどこにも見当たらない。

 

私は主人公の七竈よりいんらんな母優奈の方に感情移入しています。

 

母の望んだ形を崩したくて、妻子を持つ男への愛しさを忘れようと、男と寝まくった。

誰の子供か分からない七竈が生まれて、ふと散歩した矢先に焦がれていた男と再会する。

そしてその男とも、寝まくった男たちと変わらない情事をして、優奈の中には空虚だけが残った。

 

その男が死んで、優奈も炭になりどこにも行けなくなってしまった。

 

これ漫画「紳士同盟クロス」の灰音の名前の由来のくだりに似てるなーと思いました。

紳士同盟クロス 1 (りぼんマスコットコミックス (1590))

紳士同盟クロス 1 (りぼんマスコットコミックス (1590))

 

 夫との子供に恵まれなかったことを利用して、元彼との行為で宿った子供を夫との子供として育てることを決める母。

そして元彼との恋が灰になってしまったからと「灰音」と名付ける・・・。

 

七竈の話を優奈にも七竈にもしているのはこの優奈の思い人である田中先生なんです。

この話から優奈は七人の男と寝ると決め、その後に出来た子供だから「七竈」と名付ける。

 

手に入る事のない人と寝て、そして絶対に手に入らないことも知った。

けれど、この狭い世界で暮らせばまた手が届いてしまうかもしれない。

だから彼女は旅をして、

そして田中先生が死んで、彼女の旅は終わる。

 

きっと、尊敬してほしいのね。

異なる生き方をするわたしを。

誰よりも、血を分けた娘に

 

母の意に背く生き方というのはしづらいものです。

母が死んで優奈は気付いたけれど、七竈は進学のタイミングで気付いた。

母と分かりあえない苦痛は兄弟や父とは比べものにはならないと思います。

 

だからこそ異なる生き方をする覚悟を認めてほしい。

認めてほしい母が優奈にはもういないから。

唯一の血がつながった女である七竈に。

 

私が子供を産んでもう一度読んだら感想が変わるかもしれません。

でも子供が男の子だったらわかるかな?

 

姉がよく母のせいにするんですが、なぜか聞いてみると

「だって、お母さんの言う通りにしなさいってずっと言われてきたから、そうしないとダメな気がするんだもん。だからお母さんのせいなんだもん。」

と言ってます。

 

母と姉は昔から仲良いと私は思ってて、それが羨ましかったんですけど

姉は姉で縛られてるのねーと何だか複雑な気持ちになりました。

「もう大人なんだから自分で責任持ちなよ」と言ったのですが、姉の中の母の言葉ってすごく強いんでしょうね。

 

家は特に厳しいとかではなかったと思うのですが、それでもこんな感情が芽生えるみたいなので、本当に母が権力を持っている家の娘って呪縛がきつそうです。

 

なので母の死をきっかけに呪縛から解かれようと必死に自分を削って、もがいて、戦った優奈が好きです。

母としては失格かもしれませんが、子供のせいにして子供にあたる母より健全な気もします。

比べることじゃないけど・・・。

というか母失格とか誰が決めるかって子供であって世間じゃないですよね。

 

少女七竈と七人の可愛そうな大人

真っ白な雪に閉ざされた世界の物語。

 

GLAYの冬ソングをBGMに是非読んでみてください。