深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

MORSEモールス/ぼくのエリ~LET THE RIGHT ONE IN正しき者を受け入れよ~

≪内容≫

母親と二人暮らしのオスカルは、学校では同級生からいじめられ、親しい友達もいない12歳の孤独な少年。ある日、隣のエリという名の美しい少女が引っ越してきて、二人は次第に友情を育んでいく。が、彼女には奇妙なところがあった。部屋に閉じこもって学校にも通わず、日が落ちるまではけっして外に出ようとしないのだ。やがて、彼女の周辺で恐るべき事件が…スウェーデンでベストセラーを記録したヴァンパイア・ホラー。

 

 

「ぼくのエリ」がすごく好きで。

ぼくのエリ 200歳の少女 [Blu-ray]

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 この映画すごく綺麗なんです。

冒頭が雪のシーンなんですが、そこからもうすごく綺麗なんです。

スプラッタ要素があるのでジャンルはホラーになるかもしれませんが、私の中ではダークファンタジーなんですよね。

これが好きな人は、多分これも好きだと思う。

パンズ・ラビリンス (字幕版)

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スプラッタ要素有りのダークファンタジー。

こちらも冒頭から惹きこまれます。

現実と夢の残酷さと美しさの対比がとても哀しい。

 

「屍鬼」「ポーの一族」とやはりどこか似てます。

 エリとオスカルの出会いは「ポーの一族」のエドガーとアランの様で、人間とヴァンパイアの関係でいうと「屍鬼」の人間と起き上がりの様な感じです。

日本での吸血鬼のイメージって「ドラキュラ伯爵」のように元が西洋なのでどうしてもファンタジーに思ってしまうんですよねぇ・・・。

リアルに感じるなら「屍鬼」の人間と起き上がりの方がしっくりくる。

しかし「屍鬼」アニメ版の人狼はなぜか耳が生えているという結果ファンタジー。

 

小説もオススメですが、映画もかなりオススメです。

北欧の真っ白な雪の世界に鮮血が映える映える。

血が美しく見えるのは北欧ならではですね。

これが熱帯地域だとそこから血生臭さも漂ってきそうですが、極寒の地はそんな人間らしさも隠してくれます。

そして雪で覆われた土地という独特な閉鎖感もイイ。

面白いのが「屍鬼」で選ばれた土地は限界集落で、「MORSE」で選ばれた土地は新しく出来た未発展の土地なんです。

人から見捨てられた土地、見捨てられた者が辿りついた土地、そこにはなにか人ならざる者を呼ぶ力があるのかもしれません。

 

 

オスカル・オスカー

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原作はオスカル・エリクソンなんですが、映画はオスカーになっています。

エリクソンはスウェーデンの通信機器メーカー。

そこも意図しての名前かは不明ですが、オスカル(オスカー)の名前に関しては、「トーマの心臓」の考察と同じ考察をしています。

www.xxxkazarea.com

イエス・キリストが死んだかを確認するために使った神の槍。

オスカルは200年以上彷徨ってきたエリの死を看取る人になるんじゃないかと思っています。

オスカルは原作だと太ってて新聞に載る猟奇的な事件をスクラップノートに集めるという、ちょっと変わった男の子です。

そしてこういう変わった子というのはいじめられやすい。

故にいじめられっこなんですね。しかも、両親は離婚、兄妹はおらず母は働いていて、友達もいない。

そんな中で出会ったのがエリというわけです。

子供が感じる「孤独」というのは世界が狭いだけに深刻だと思うんです。

しかも、彼が受けているいじめは一歩間違えば死ぬようないじめなわけです。(電車が来る線路に押し出されそうになったり、プールの中に5分間閉じ込められたり)

 

「悪」の餌食にされていた彼にとってエリは「正しき者」。

例え「悪」が自分と同じ人間で、「正」が人間を殺すヴァンパイアだとしても。

 

しかも面白いことに原作だと、オスカルはエリヴァンパイアだということより男の子だという方に戸惑っています。

ヴァンパイアは別にいいけど、男の子は困るなぁ・・・みたいな。笑

オスカルにとっての常識はゲイは困るけど、人間か否かは問題じゃない。

そばにいて、何でも言い合えて、一人じゃないと思える相手、女の子なら彼女、男の子なら友人。それ以外は何でもいいといった具合。

こういう気持ちが純粋というんじゃないかなぁと思います。

実際、原作の方ではそこまで好き好きしてるわけじゃなくて友情とも取れるんですよね。そこがまだ12歳という設定においてのリアルだと思います。

 

 

 

エリ・エライアス

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少女名・エリ。少年名・エライアス。

この名前は「エリヤ」という預言者の名前からきてるんじゃないかなーと。

エライアスは「エリヤ」と訳されているようですし。

「エリヤ」とは旧約聖書における預言者でイエス・キリストの再来とみなされる解釈もあるようです。

イエス・キリストが磔にされたとき「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」と叫んだのを聞いた人が「エリヤを呼んでいる」と言ったという記述があります。

このエリヤは聖書に死が書かれていないのです。

死のないヴァンパイア・エリは、オスカルの存在によってイエスに変わるのじゃないかなぁーと思ったり。

「名は体を表す」というのは創作にこそ当てはまることわざだと思っているので色々考えてしまいます。

 

 

二人の受難

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物語のいいところはどんなに悲しい話でも一番キレイなところで終わるところだと思っています。

二人は二人だけの旅に出るところで終わります。

とてもキレイな終わりです。

しかし、二人の行き先には数々の受難が待ち受けていることでしょう。

まだ12歳のオスカルと、永遠に12歳のヴァンパイアのエリです。

オスカルは生きてくことの大変さを痛感し、家に帰りたいと思うこともあるでしょう。

エリはオスカルと生きることでヴァンパイアである自分への嘆きや、自らで血を調達しなければいけない事に嫌気がさすかもしれません。

それは肉体的にも精神的にも二人に重くのしかかると思います。

だからこそ二人に込められた名前が、救いのように感じるのです。

 

どんなに十字架を背負っても最後まで一緒にいる。

原作でエリは自ら杭を胸に打とうとしますが、出来ません。

きっと200年以上も彷徨う中で何度も同じことをしただろうと思います。

それが出来ないのは見届けてくれる人がいなかったからではないのかな・・・と。

 

オスカルを信じたエリとエリを信じたオスカル。

「信じる者は救われる」

正しき者を受け入れた二人にはきっと最後が訪れると思います。

 

正しい者を入れて

古い夢は死ぬままにして

悪い者は去るままにして

彼らにはできない

きみが彼らに望むことは

 

ーモリッシー『正しい者をこっそり入れて』