深夜図書

毎日23:30更新の書評ブログです。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

ホットロード/紡木たく~ずっとずーっと長いあいだいっしょにいたよーな気がするんだ、オヤよりも~

≪内容≫

子供のやさしさと正義を持ちながら。自分のことすら見えずただひたすらテイルランプの光を追う主人公和希。欠落した恐怖心と生意気な顔を持つ少年ハルヤマ…。追いかける瞳を笑うように、細いうしろ姿は一瞬の狂気を抱いて走っていた――。

 

漫画原作の映画で一番良かったと思う。

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予告編だけで涙出る。

ホットロードの映画版ですごい良いなぁと思ったのは、原作に書かれてる湘南の青い風景が綺麗に映し出されていること。

それから尾崎豊の「OH MY LITTLE GIRL」。

これに尽きる。

作者の紡木たくさんはずっと映像化を拒否してたようなんですが、能年ちゃんなら・・・と承諾したというお話です。

能年ちゃんがのんに改名したくだりとか、きっと和希と似たような弱さと強さを持っているんだなーと思ったし、作者はそこを見抜いていたのかなと思いました。

 

 

和希

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和希、14歳。

春山と出会ったのは中学2年生のとき。

好きではなかった本当の父との子で、本当に好きだった鈴木くんと不倫をしている母。

鈴木に夢中な母と二人きりの暮らしで居場所のない和希。

暴走族のハルヤマと出会い、不良たちと交流するようになり自分も不良になっていく。

 

私、不良って嫌いでした。

クラスにいる不良っぽい人とか怖かった。

なぜかというと、同世代ながら一歩大人だからだったと思います。

一歩先へ踏み出す勇気がない私と、踏み出している彼らでは見てる景色も考え方も違う。

そして一番違うと思うのは時間の価値観。

一般の生徒達は「未来」に向かって生きていて、彼らは「今」を全力で生きている。

だから怖いものが違うのです。

未来が台無しになる恐怖より、今大切なものを失う恐怖。

10代半ばで命をかけられるほど大切なものを見つけた彼らと分かりあえないと思っても無理ないと思うし、当たり前に未来を信じ切ってる人間にとって「いつ死んでもかまわない」というのはあり得ないんです。

だって死んだら未来がないから。

 

だけど来るかもわからない未来の為に今の自分には背いてる感覚がどこかにあるから、今を生きている彼らに惹かれると思うんです。

和希のクラスメートの男子が「暴走族がそんなにえらいのかよ!人に迷惑かけてよー!」と和希につっかかってくるシーンがあるんですが、これが大半の意見だと思います。

子供が命を簡単に投げ出して楽しそうにしてるのは誰が見たって不快でしょう。

ハルヤマがもしノーヘルじゃなかったら一生残る障害を負わずに済んだかもしれないのです。

ハルヤマのように一命を取り留めた者もいれば、そこで本当に死んでしまった者もいるだろうし植物人間になってしまう者もいたかもしれない。

 

和希に対して「愛を教えてあげられなかった」と嘆く母に鈴木くんがこう言うのですが、これは答えのない問題だと思います。

自分が誰かに大切にされているんだってことを本当に知っていたら自分の命を粗末になんか決してできないはずだよ。

親でも兄弟でも恋人でもいいからそういう人が必ずいるんだってことを

だれがいつあの子たちにおしえてやることができるんだろう

自分で経験しないと分からないものです。

経験は年齢と比例するものなので、経験値がないまだ幼いときには「恐怖心」が歯止めをかける役割を担う。

だけど、ハルヤマのようにもともと恐怖心が薄い子供でなお且つ自分が誰かに大切にされているってことを頭では理解しながらも心が拒否している場合、どうやって彼を生かすことができるだろう。

人に優しくできる人って結構自分は大事にしていない人が多いと思います。

自分はどうなってもいいけど、他人は大事にしなくちゃね。

この考えって一見綺麗だけど、周りを一番悲しませるんです。

他人を大事にしてるようで、求めていない。

そんなハルヤマに気付かせたのは和希で、和希を見つけたのはハルヤマで。

 

不良って家庭環境に問題がある子に多いというのは、あながち間違っていなくて。

ただ家庭環境と一括りにするのは当てはまらなくて。

親がどれだけ子供と向き合うか。だと思うんですよ。

親が逃げたら子供も逃げるしかないから。

和希の親が逃げだしたように、ハルヤマの母が殴ってでもハルヤマを止めなかったように。

人が一人じゃないと感じるのは、単に誰かと一緒にいるときじゃなくて、誰かと向き合っているときだから。

真剣に、はぐらかさずに、逃げずに。

それが対親や兄弟で出来る子もいれば出来ない子もいる。

家庭環境とはそういうことだと思う。

 

和希は弱いけど、本当に大事にしたい人の為に動ける強さがあった。

女には男が必要で、男には女が必要ということが身にしみて分かる一冊。

 

 

ハルヤマ

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 ↑超名再現シーン

女好きっぽいハルヤマですが、色んな女性と付き合っても「愛」は最後の最後まで見つかってなかったと思います。

ハルヤマは女にフラれるが、それはハルヤマが女を見てなかったからで彼女達はそれが分かったから。

何を言っても泣いても彼は命を大事にしない。

彼にとって一番大事なのは単車であり、チームである。

そんな彼を変えたのが和希だった。

和希と出会ってから自分の変化を自分で受け入れられなくて別れようと言ったこともあった。

何度も確かめるように「別れよう」とか「どうする?」とか和希に告げる。

今までなら「死んだら死んだまで!」っていう感情だったのに、「あれ?俺死んだらこいつ大丈夫かな?」とか、自分の彼女だってことで危険な目に遭ったらどうしようとか、今まで揺るがなかった自分のやりたいことが和希の存在で大きく揺れ始めた。

だって大事だもん

あたしこんなに誰かが大事なんて思ったことないもん

自分より大事なんて思ったの初めてだもん

ここでかの有名なセリフ

おめーよーっ

オレがいなきゃなんもできねーよーな女んなるな

オレのことなんかいつでも捨てれる女んなれ

そんでも俺が追っかけてくよーな女になれ 

 が出てくるわけですが・・・もうほんとここ泣く。

そのあとハルヤマと和希は会わない期間が続くのですが久しぶりにあった和希は今までの弱い和希じゃなくて、前に進もうとする和希になっていて、ハルヤマは和希を選ぶことにしたんだなぁと思いました。

 

正直、和希はハルヤマにとってペットみたいな感じだったと思います。

親や学校や気にくわないことから逃げて、それでも恋しくて泣いて、ひとりじゃどこにもいけないし、しゃーねーなーみたいな。

恋愛というより、拾った猫みたいな。

「オレがいなきゃなんもできない女」でもまぁいっかと思ってたのは「結局他人だから」と線を引いていたから。

だけど、一緒に生きていこうと思ったから「オレがいなきゃなんもできねーよーな女んなるなn」と言ったんだと思います。

他人だから「オレがいなきゃなんもできない女」でも、結局オレが死んでもなんだかんだ生きていけるだろうとか思えていたわけです。

でも、本当に好きになったら、他人から恋人になったら。

「オレがいなきゃなんもできない女」のままだと荷が重すぎるわけです。

次のケンカでもしかしたら死ぬかもしれない、というのはハルヤマの心にあるので恋人である以上、和希に強くなってもらわなきゃいけないわけです。

もし自分が死んでも、親と上手くやれるように。

高校にちゃんと行けるように・・・。

「だってアイツすげーキレーなんだもんよ中身が

そーゆーのって・・・つえーよ

守ってやりたくなってくるしぃ アホみたく

けど 今のオレじゃーできそーもねーし

 

そんなのにこいつオレみてーのが そんなに大事なの?って

もしオレがいなくなっちったら

こいつどーすんだろって思ったら

なんか かわいそーになっちゃって

オレいなくなっちゃったらかわいそーじゃんよ あいつ」

 

って俺・・・あんな顔見たことねくって

したら・・・

「今度のケンカいったらさすがにふられっかも」なんて・・・笑ってっから

「頭やめちゃえ」って・・・いったんだ・・・けど

「まだやめれねー」って・・・

 

「でも オレもしかしたら

たかが女ひとりのために変わるかもしんない」ってぇいってたか・・・

 

 

 

道は続く

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ハルヤマが目を覚ましたあと、二人の距離は一気に近づきます。

それはお互いを逃げ場所にしてた関係を卒業したからなんですね。

自立。

それぞれ目を反らさずに現実と向きあうことを決めた。

暴走族から卒業したら終わりじゃなくて、母との関係が良好になったから終わりじゃなくて、道はずっとずっと続いてる。

前を走る赤いテイルランプを追いかけてた道を降りて、二人で肩を並べて歩いて行く。

 

Oh My Little Girl 暖めてあげよう
Oh My Little Girl こんなにも愛してる
Oh My Little Girl
二人黄昏に 肩寄せ歩きながら
いつまでも いつまでも 離れないと誓うんだ

 

失ったものは大きくて取り戻せないものだけど、道は続いてる。

和希の小さな夢が叶いますように。

和希のキレーなものはハルヤマが今までもこれからもずっと大切にしてくれる。

自分のキレーなもの相手のキレーなもの、それを見つけて大切にする。

それが「愛」なのかな。

 

二人の命をかけて駆け抜けた二年間。

ぜひ映画も見てほしい。

決してやさしくて甘やかしてくれる恋愛ではないけれど。