深夜図書

毎日23:30更新の書評ブログです。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】atHome~大事なのは本物かではなく自然かということ~

 

≪内容≫

空き巣の父・和彦(竹野内豊)と結婚詐欺師の母・皐月(松雪泰子)は、犯罪で生計を立てながら 3人の子どもたちと暮らしていた。
そんなある日、 母の詐欺が相手に見破られたことで誘拐され、身代金を要求されてしまう。
血のつながりはなくとも、それぞれに苦しい過去を持つ寄せ集めの家族は、ささやかな幸せを守るため立ち上がる。

 

 

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誰一人血が繋がっていなくて、誰とも過去に共通点がない。

歴史のない家族。

これ最後は「八日目の蝉」のようになってしまうのではないかと悲観的に見ていたんですが、爽やかな終わりでした。

 

 

 

家という牢獄

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首輪をつけられ風呂に繋がれた弟。

父から性的虐待を受けるお姉ちゃん。

家族から人間として扱われないお兄ちゃん。

夫のDVに耐える妻。

 

誰もが「家」に繋がれていた。

家は、牢獄になる。

外からは決して見えない鉄壁の牢獄。

この中で行われている処刑は誰も知ることが出来ない。

 

一番かわいそうだったのがこの風呂に繋がれた少年。

逃げることも死ぬこともできない。

完全に外界と切断された薄暗い風呂場で、たまに食糧を持ってくる母を待っていた。

 

たまたま空き巣泥棒である和彦(のちの父)が発見したから外に出られたけど、もし和彦が来なかったら大人になるまで繋がれていたかもしれない。

 

この少年より少し大きなお姉ちゃんは死を、さらに大きなお兄ちゃんは逃亡を選択した。

小さければ小さいほど選択肢がないのだ。

虐待は「家」の中で行われている。

他人の城に無断で入る悪人が、子どもを牢獄から解放する。

 

「家」という牢獄から出るためには家族の手では導かれない。

自分の足か、足が繋がれているなら全くの他人の手でしか開かれない。

 

 

 

恐れからの脱却

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彼が撃たなければ、このまま幸せな家族生活は続くはずだった。

大人になるとどんどん合理的になっていきます。

彼以外の家族は、母がリンチで血だらけになっていても相手への怒りより、これからの自分達の生活を思っていた。

しかし彼はこのとき、自分のために引き金をひいたのだと思う。

ぼく決めたんだ

ぼくの家族は殴らせたりしないって

自分にとっての誓い。

人殺しはいけないし、銃を撃った後どうなるかなんて、少しは分かっていたと思う。

ここで相手を許せば、自分が受けたひどい過去も許すことになる。

暴力に屈するしかなかったあの時の自分。

その自分を見捨てることになる。

 

この少年の存在こそが、バラバラの他人を繋げていたと思う。

それなりに生きてきた大人たちはオートで「他人に合わせる」ことや「愛想笑い」が出てきてしまう。

自分の意思より、他人の様子を窺ってしまう。

 

まだ小さくて純粋な彼の存在は家族の安寧を壊してしまったけれど、創造の前には必ず破壊が必要なのだ。

 

 

家族とはなにか

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家族ってなんだろうね。

この作品を見て思うのは、泥棒が悪いとか殺人が悪いとかそういうリアルなことじゃなくて、家族って何をもって家族というんだろうかってことです。

 

家族という言葉が持つ強制的な幸せというイメージ。

「家族は大事にしろよ」とか「家族なんだから」とか家族=絶対的な味方・・・みたいな。

家族だから解りあえるとかすごく横暴だと思うんですよ。

 

大事なのは本物かではなく自然かということ

 

っていうこの作品が言っていることは、自分がどれだけ自然でいれるかってことで血の繋がりではないんですよね。

 

私は少し前まで家族と距離を取っていて。

なんか虐待を受けたとかそういうんじゃないんですけど、家にいると気を使っちゃって。

なんか「ここは父と母の家だから自分も誰かと家を作らなきゃいけない」とか「帰りが遅くなったら迷惑だから(夜に玄関から物音がしたら怖がるかも的な遠慮)そういう時は満喫に泊まる」とか。

父が迎えに来てくれるときも「ありがとう」より「申し訳ない」って気持ちでいっぱいで。

 

それで実家から離れた場所で一人暮らししていて疎遠にしていたんですが、最近実家の近くに引っ越してきたことで、一緒に暮らしていたときより「家族」って意識が芽生えてきたんです。

よく実家に帰るようになりました。

帰りたくもなったし、気も使わなくなりました。

 

家族って最初から家族なんじゃなくて、家族になっていくものなんだと思うんです。

血が繋がっていようが、繋がっていなかろうが家族になるには時間が必要なんだと思います。

家族の在り方や、捉え方は人それぞれですが、家族って血が繋がっているからとか同じ家に住んでいるからとかじゃなくって、どれだけ自分が自分らしくいられる場所かってことだと思います。

自分が自分らしくあるための戦いの場でもあるし、傷付いた羽根を癒す場所にもなるだろうし、絶対的な味方にも一番身近な敵にもなりうる。

 

家族って基本的に選べないじゃないですか。

だけど、この話の中の人たちは選んで家族になって、本物の家族よりも自然な家族になった。

大事なのは「家族」が本物か偽物かじゃない。

どれだけ自然かということ。

 

 

 最後のシーンはすっごいジーンときたなぁ。

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