深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】嘆きのピエタ~金 人生 死とはなに?~

 

≪内容≫

天涯孤独に生きてきた借金取りの男。男の母親だと名乗る謎の女。初めて母の愛を知った男を待つ、衝撃の真実…そして世界が言葉を失った、ある愛のカタチ。この愛は、本物か、偽物か。

 

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キム・ギドク監督。

韓国映画ってちょっとずつなんかしら見てるんですが、ビンタ多くないですか?

この主人公は取り立て屋+ビンタされ屋なんじゃないかと思う。

あと、母との買い物が理想のデートすぎる。

買いもしないメガネをかけること(買ってたけど)って悪魔で候/高梨みつばの中で描かれていたぞ!

悪魔で候 全7巻セット (集英社文庫―コミック版)

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 レストランで「あーん」とかしたりさ。

風船ではしゃいだりさ。

これが韓国の親子なのか!?家族主義の韓国ならではなのか!?

まるでカップルのような二人にちょっと失笑。

 

ていうかこの作品ナゾというか独特というか。

シュールというか。

だってさ、いきなり「あなたのお母さんよ」とか言ってきた人にここまで心委ねる?とか、出会いがチャボ(?)をとっ捕まえたりとか、うなぎに連絡先つけたり、借金のカタに持っていくのがウサギだったり・・・「ぇ!?」っていうのが多すぎる。

でも笑える内容じゃないし・・・。

 

グロイけど、タイトルから想像するものと内容が合致していて分かりやすい。

途中で展開も分かるけど、それでも微かな望みを抱いて見てしまう。

 

 

金 人生 死とは何?

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 借金を払えない奴は障害者にして保険金から払わせようとする極悪取り立て屋ガンド。

この作品のテーマが「金 人生 死」だと思います。

生きるために金を借り、金の為に殺される。人生とは一体なんだろうか。そんな作品。

 

ガンドは天涯孤独のため、ヤミ金の社長らしき人物に育てられた模様。

何の慈悲も聞かないガンドだったが、それは社長への恩があったから。

母と名乗る謎の女が現れてからガンドは少しずつ変わっていく。

 

ガンドは色んな人間から恨みを買っていますが、それは守るものがなかったからです。

借金をしてでも守りたいものがある彼らはガンドの眼にはバカらしく見えていたでしょう。

返せない金のために自殺するなんて理解不能だし、障害者になるのだって自業自得と思っていたでしょう。

だけど彼に守りたいものが出来たとき、彼は「俺を殺せ」と言うのです。

 

守りたいものはなくても金のある人生。

金はなくても守りたいものがある人生。

 

守ってくれる人もいないまま死んでいく人生。

守りたい人のために死ぬ人生。

 

 金 人生 死 とは なに ?

 

 

親の愛

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たいがい「やめてくれー!」と言うのに、この男は生まれてくる子供のために片手だけでなく両手を潰してくれという。

ガンドが「羨ましい」と言うと彼は「なぜだ?親なら当然だろう?」と本当に不思議そうな顔をするのだった。

 

ガンドは極悪人だけど、とってもかわいそう。

もしも、彼を拾ったのがヤミ金じゃなかったら。

恨みを買うような仕事じゃなくて、幸せを提供するような仕事をしていたら。

親がいなくても、人とのコミュニケーションの中で優しさや愛を感じられることがあったかもしれない。

どこまでも「愛」に嫌われたガンド。

 

母と名乗るミソンが企てた復讐は、何よりも重い罰だった。

誰かに殺されるという人との共有さえも許さない。

一人で生まれ一人で死んでいく、どこまでも孤独を与えること。

そして、愛が偽物なんだということ。

お前は永遠に愛に触れることはできないんだと突きつけること。

 

殺された方がきっと幸せだった。

そう思うくらいにどこまでも一人ぼっちだったガンド。

 

登場人物、みんなが泣いてる。

 

 

慈悲と嘆き

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ガンドがかわいそう・・・と言って泣くミソン。

自分が騙したのに。

でも分かる。分かってしまう。

ここに書いてあったけど

愛する言葉

愛する言葉

 

女は可哀そうなもの、

独りでひそかに泣いているものを、

胎内にくるみ込んでやりたい本能がある。

それは女の無条件の優しさなのだ。

(岡本敏子)

 まさにこの本能なのです。

愛する息子を死に追いやった憎むべきガンド。

ガンドの前で自分が死ぬことで大切な人が目の前で奪われる苦しみを味あわせてやろうと、母のふりをして近づいた。

憎しみは健在ながらも、一緒に生活していく内に彼が独りっきりで泣いている姿を、母親を探して泣く姿をみて抱きしめてあげたい本能が疼くのだった。

 

女性が全員こういうものかは分からない。

でも私はめっきりこういう男性に弱い。マンガとかでいつもこういうキャラが好きなんです。烈火の炎の紅麗とかね。

姉に「あんたってかわいそうな人好きだよね」って言われたのがグサってきました。

自覚なかっただけに。

 

パッケージからも分かりますが、嘆きのピエタ=ミソンなんですよね。

イエス(自分の子供)を抱きしめるマリアのように、復讐者であるガンドも抱きしめるマリア。

その姿は何とも嘆かわしいですよね。

復讐をしてすっきりザマァミロってなる筈だったのに悲しくてたまらない。

 

この映画ヒネリがないストレートなお話なだけにとても悲しいです。

せめてガンドが心を開かなければ、ミソンが憎しみだけで突っ走ってくれたらこんなに悲しくはならなかった。

取り立てる家々には罵りあいながらも助けあう温かさがあった。

何一つぬくもりを得られなかったガンド。

最後にミソンが自分の為に編んでいたと思っていたセーターを着た息子の死体を見てどう思っただろうか。

それを剥いで自分が着ることでぬくもりは得られただろうか。

そのセーターを着て死ぬことでミソンの子どもになれただろうか。

 

金 人生 死 とは なに?と書いたミソンの子ども。

この中に「愛」がないのは、考えることもないくらい愛に包まれていたからなんだろうな。

ガンドなら金が愛に変わる気がする。

お金がなくちゃ生きていけないけど、何のために生きるって守りたいもののためであって、大前提に愛がなければ金の価値は生まれないんじゃないかなって思った。

 

 

ずっと愛を知らないまま生きるのと、愛を知ることで死を選ぶの、選べるならガンドはどちらを選ぶだろうか。

嘆きのピエタ [DVD]

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