深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】無伴奏~にじり口から入る世界でしか生きられない人がいる~

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≪内容≫

1969年反戦運動や全共闘運動が起きていた激動の時代。高校3年生の野間響子は、親友と制服廃止闘争委員会を結成し、革命を訴えシュプレヒコールをあげる日々をおくりながらも、実はベトナムにも安保にも沖縄にも強い想いがあるわけではなく、学園闘争を真似しているだけの自分に嫌気がさしていた。そんなある日、響子は、親友に連れられて入ったバロック喫茶「無伴奏」で、 フランクだがどこか捉えどころのない大学生・渉と、渉の親友・祐之介、祐之介の恋人・エマの3人に出会う。「無伴奏」で会って話をするうちに、いつしか響子は渉に惹かれて行く。
初めてのキス、初めてのセックス。"革命"以上に刺激的な恋の魔力に響子が囚われていたある日、思いもよらない衝撃的な事件が起こるー。

 

 

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 えぇええええええ!!!!

 ていう話です。

 私は学生運動の話だと思ってたので、そこ関係ないんかい!ってびっくりしました。

 まぁ、池松くんが出ている時点で普通の恋愛じゃないだろうなぁとは思っていましたが。

 この話はネタバレしたらめっちゃつまらなくなるので、観る予定がある人は予告のみで他人の感想は見ない方がいいです。

 

青春時代

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社会の波に呑まれて、自分の意思も流されていく。

なんとなく大人はイヤだけど、これといって強く反対する気持ちも、なにかを変えたいという気持ちも持っていない。

だけど、何も持っていないことを認めてしまえば人生はつまらない。

だから一生懸命に輝こうとする、それが青春時代。

 

 何となくつまらない、何にもそこまで興味が持てない、そんな主人公・響子(成海璃子)が出会ったのは大学生の三人組。カップルである佑之介エマ。そして(池松 壮亮)

 どこか影のある渉に惹かれていく響子だったが、彼を知るたびに彼が分からなくなるのだった。

 

 話の内容は社会運動より恋に熱狂する話です。

 何やってんだか分かんない大学生と出会って、そのグループに入ったらなんか自分も大人になれた気になって浮かれてたら、実は超ドロドロの関係に巻き込まれてたって話です。

巻き込まれたは違うかな。

いつでも響子は自分で引くことが出来たはず。それをさせないのが、初恋。そして池松壮亮演じる渉の魅力。

 

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「紙の月」の記事を読む。

 

初恋は実らない

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 僕から離れたくないからって言ってくれないの?という渉。

 

 自分を好きとは言うが自分を見ていないことは明らかなのに、それでも風邪を引いていると聞けば桃缶持ってお見舞いに行っちゃう響子の健気さよ。

 どこか秘密を持っている彼。決して自分には打ち明けてくれない。それでもいい。それでも好き。こういうところが初恋であり、実らない所以だと思います。

 初恋ってイイ所しか見えないんですよね。

 変だな?って思っても、その変な部分が重大な問題に繋がるっていう予測が出来ない。傷付くことより、自分以外の誰かと心を通わせられるかもしれないっていう期待の方が大きくて、この人がいれば何もいらないっていうように世界が狭くなってしまう。

 

 このあと初めてのセックスをこの場でするんですが、それを佑之介にのぞき見されていました。

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ヒャァアアアアアアアア(<○><○>)メポ

 まぁここに至るまでに何度も「だろうな・・・」って伏線があるので、やっぱり・・・と思いましたが、まさか覗いているとは。軽いトラウマ級。

 

愛した男に、もし好きな人がいたら

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 エマが妊娠したことをきっかけに、結婚の話が進んだ佑乃介はエマを殺害

 失踪した佑乃介を心配する渉のもとに彼は帰ってきた。

 

 もし自分の初恋の相手が、その親友と恋愛関係にあって、それを知ってもなお自分のことを好きだと言ってきたらどうしますか?

 

 これってもし初恋じゃなければ受け入れたり、拒絶出来たりしたと思うのですが、初恋ゆえにしがみついてしまった。

 こんな目の前でイチャつかれてしかも二人の性行為まで見ちゃっても、やっぱり渉が好きで身を引くことはできない響子。

 エマは何も知らないので妊娠の報告を二人にするが、二人は気まずくなってしまう。

 しかし響子は「おめでとう。協力するよ。」と告げます。

 

 愛する人を自分のモノにするには奪わなきゃいけない。そういう気持ちが響子に芽生えます。佑乃介と渉を否定したり、邪魔することはしない、でも絶対に譲らない。

 エマの妊娠で、完全に渉は響子のモノになるはずだった。だけど、エマは殺され渉は自殺した。

 

 観てると、エマが妊娠したーって喜んでいる時点で「多分エマ殺されるな・・・」と勘付くと思います。何となく中盤から展開が分かってしまう内容なんですが、とにかく健気な響子が悲しい。男とデキてた初恋の人。それならばと男装してみたり。男が返ってこないと泣くのを慰めたり。

 

てか、佑乃介と渉はそんなに好き合ってるなら付き合えばいいじゃんか!

二人で東北に行けばよかったじゃんか!

カモフラにされた二人の女は、一人は殺され、一人は裏切られ、散々ですけど!

てかカミングアウトすれば良かったじゃないかー!!!

って思うのですが、この時代では無理だったんですかね?

 

 渉がはっきり「本当に好きなのは佑乃介で君は代わりだった」くらい言ってくれればあきらめつくのに、「初めて好きになった女性は君だ」とか言って死んじゃうからずるいよなぁと思う。

  裏切られた!っていう憎しみより、あぁこの人は本当に不器用で辛くて優しすぎたんだろうなぁ・・・って、さらに愛しく感じそう。

 

にじり口から世界と世界を行き来する佑乃介と渉。

それぞれに別の世界へ旅立つも結局はにじり口に戻ってしまう。

閉じ込められた世界の中は他の誰が入っても壊れなかったんですね。

自分たちで壊すまでは。

 

 なんで覗かれる危険を冒して茶の間でいたすかね?と何度も思ったのですが、それはあの空間の持つ意味。

 誰もが平等である世界ということがあの二人の関係を許していた。

 にじり口の先の小さな茶の間でしか許されない愛を持ってしまったら窮屈で苦しいのは当然のように思う。

 

伴奏=社会でその中の主旋律というのは自分自身。

自分の人生の主人公は自分であり、同性愛者じゃなければ当たり前に社会という伴奏がついてくる。

同性愛者という伴奏から認められない人間は無伴奏の中で生きるしかない。

という意味の無伴奏なのかな?って思いました。

 

 今もし好きになった人が、同性愛者で、君も好きだけど彼も好きなんだと言われたら、それは浮気だから怒るけど、友人でいたいなぁと思う。

 切ない恋愛は好きだけど、死んじゃうような恋愛は出来るだけない方がいい。

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