深夜図書

毎日23:30更新の書評ブログです。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

ブルースカイ/桜庭一樹~この世には咲かない花だってあるんですよ。きっと。花壇には花がいっぱいあるから、先生は気づいてくれないんですよ~

≪内容≫

西暦1627年、ドイツ。魔女狩りの足音が忍び寄るレンスの町で、10歳の少女マリーは“アンチ・キリスト”に出会う。西暦2022年、シンガポール。大人になれない3Dアーティストの青年ディッキーの前に、絶滅したはずの“17歳の少女”というクリーチャーが現れる。そして、西暦2007年4月の日本。火山灰が舞い散り、桜が咲き狂う鹿児島で、あたしは―ひとりの少女と世界とのつながりを描く初期傑作、解説を加え新装版で登場。
 

 

SFかな・・・?

桜庭一樹らしく少女感がありますが・・・私はあんまり好きになれなかった。

最初のドイツの話は「クラバート」を思い起こさせ、旅立つマリーは「レアリア」感がある。

三っつの世界はそれぞれ魅力的なんですが、繋がっているかとなるとちょっと微妙・・・。

 

ちなみに最後のあとがきにある、桜庭さんが思うSFとは

SuperFatherの略というのが何とも可愛らしくて、桜庭さんの少女感を感じるところ。

考えてみれば、お父さん子って大人になっても少女感がある気がする。

守ってくれる存在に無条件で甘えられるってところがそうさせるのかもしれません。

 

 

 

突然大人になる

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わたしたち女というものは、子供時代から、ある日とつぜん大人の女になるのよ。途中はないわ。とつぜんなるの。

そのときがきたらあなたにもわかるはずよ。

いまだわ、花が開いていくわ、とね。

そのときは、ちっともおそろしいものではないわ。

だって、とても自然なことなんだもの。

一つ目の世界は中世のドイツ。

魔女狩りの時代。

 

今を生きていると、昔の人が15歳で子どもを産むとか働くとか信じられないですよね。

まさに"いきなり大人になる"って感じ。

主人公は日本の17歳の女子高生・青井ソラ。

日本の17歳の女子高生とは、大人でもなく、かといって子どもかというと「子ども扱いしないで!」と声を荒げるなんとも厄介な生き物である。

 

ある日突然花が開くように、突然大人になっていた昔。

現代は花を開くも開かぬも自由にしていいよ~と放任主義なので、女子高生たちはいつ花を開けばいいのか"そのとき"とはいつなのか、迷いに迷う時代である。

 

いきなり大人になることを余儀なくされたマリーと、蕾のまま彷徨い続ける青井ソラ。

 

今日から大人ですよ!って言われたら反発したくなるけど、自分で決めてね!と言われても自分で決めるのは難しい。

結局命令されている方が楽で、反発する方が楽だよなぁと思います。

自決は結構難しい。

 

 

子どもでも、大人でもない

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近代になって学生である期間が伸び、人生において、こどもでも大人でもない不思議な時間が生まれた。

そこで、幼女でも大人でもない"少女"という名のクリーチャーが生まれた。

彼女たちは、いまを生きるぼくたちにはすっかりおなじみの生き物だけど、でも、あのゲームの世界観設定の時代、中世には、じつはいなかったんだ。

二つ目の世界は2022年のシンガポール。

3Dグラフィックデザイナーの青年ディッキーの世界。

 

大人になれない・・・と深刻に悩むディッキーは24歳。

周りの女性からは男ではなく"青年"と呼ばれている。

 

魔女狩りのような野蛮に命を落とす事もない平和な時代。

制作意欲は湧き上がり、新たなカルチャーを作り出すことに生きがいを見出しながらも誰かを好きになるという感情が分からない。

身体だけは老いに向かうが、精神はこどものまま。

誰も好きになれないまま。

ぼくたちはすべてに肯定的で穏やかな、きわめて優しい気持ちを持っているけれど、でも、特定の異性を強く愛することはできない。

そんなことができるのは大人だけだ。

愛とはまさに、大人であることの証拠物件だよ。

少女が絶滅し、その後に生まれたのが青年。

ゆえに青年は恋愛対象物を失っていた。

そこに現れたのが青井ソラ。17歳の女子高生。

 

突如ディッキーの前に現れた絶命した筈の"対象物"である少女。

ディッキーはやっと対象物を見つけたと思い、彼女と共に旅立とうとするが、その時ディッキーを止めたのは対象物ではないチャムという女友達だった。

 

けして対象物ではない。話しも噛み合わない。

それでも必死にディッキーを止める彼女はどこか子どもっぽいものがあった。

ビッグマムである筈の、大人の女性だった筈のチャム。

だけど本当は完全な大人ではなく、どこか子どもの部分もあるのではないか。

そう思ったディッキーは、対象物の手を放し永遠に失う。

 

 

大人って大人じゃないよなーと思う。

20歳の成人式を機に大人ってことになってるけど。

自分が小さい頃は大人になれば何でもできると、何でも知っていると思ってた。

だけど、それこそ夢物語で。

自分が想像する大人になるためには、それなりの努力が必要で、それなりの戦いが必要なのだ。

勝たなきゃ死んじゃうような戦いから、傷付くための戦いまで。

 

 

少女時代

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だいたい"青春"が"輝いてた"なんて、ばかな大人の、腐った魚の目をした廃人みたいなやつらの、謎の集団幻覚だと思うもん。

世の中、そんな謎の映画とかドラマとかで溢れてるけど、あんなの嘘だよ。輝いてた過去なんて、現在のその大人と同じ時間軸で繋がってるわけないよ。

現実の青春は灰色だったでしょ?

憂鬱とか、将来の悩みとか、友達とか、恋愛とか。

それからええと、漠とした不安?

あ、それはアクタガワの死因だった。

現代国語で習ったばっかりだ。あはは。

嘘だよ。

めっちゃ嘘だよ。

 

でもこんなのはどうとでも言えるからあながち嘘でもない。

良かったことも辛かったことも後から何とでもどうとでも脚色できる。

ただ、現実はドラマとか映画みたいにキラキラしていないことだけは事実。

そういうことに憧れてキラキラさせることができる子もいれば、できない子もいる。

 

最後は2007年の鹿児島。

主人公・青井ソラ17歳の世界。

 

受験めんどくさいし、大人もインチキくさいし、生きるのめんどくさいし、とりあえず3か月続いている彼氏と何となーく付き合い続けてる。

彼氏である浩史のロマンチストぷりに、主人公は信じられないながらも泣きだしたくなったりする。

不安しかない未来なのに「ずっと一緒にいたい」とか言っちゃう男の子の気まぐれに絆されてしまうのだった。

 

彼女が大切にしていた携帯。

"せかい"と繋がる為の楽しいおもちゃ。

 

記録的な桜島の噴火事故の時間に"せかい"にアクセスしていた人たちが異空間に飛ばされ、捕まえられ、同じ空の下に投げ出された。

たくさんの人たちと一緒に落ちて行った。

みんなと一緒に落ちて行った。

繋がってる。

 

・・・ってどういうこと!?っていう終わりになってます。

あとがきでも「繋がりを感じてくれたらうれしい」と締められているんですが、これって時空を超えて繋がってるってこと?

青井ソラは彼氏にだって心許してないのに、まったく知らない他人を"せかい"(友達)だと認識しているってこと?

 

ちょっと私には理解しかねた。

でも桜庭先生があとがきで「あなたと繋がれたらうれしい」と書いているので、先生の中では理路整然にまとまっているんだろう。

 

ちょっと強引だけどきれいにまとめるなら、色んなものが信じられなかったソラが色んな世界を見ることで、世界の美しさや彼氏への愛おしさとかそういうものを感じられるようになって、最後の最後には青い空(灰色の青春から輝く青春)に昇華出来たっていうめでたしめでたし。

灰色の青春っていうので桜島の灰に染まった空を選んだと思うが、それと対比するように名前を青井ソラと輝く青春に意味づけたのはステキだなぁと思う。

 

これは全部桜庭作品読んだらもう一回読もうと思います。

ちょっと今はあまりすっきりしていません。

 

 

一つ一つの世界は面白いし、心理描写の書き方はやっぱり大好き。

謎の集団幻覚とか、現役女子高生なら思うだろうなって思う。

あと、はじめてあとがきで桜庭一樹の小説ではない文を読んだけど、父との思い出がほんわかしていいなぁと思った。

 

 

 青い空(青井ソラ)を見たか?