深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

道徳という名の少年/桜庭一樹~問題は、それが道徳に反していないかではなく、そこに愛があるのか?ということ~

≪内容≫

美しい娼婦の四姉妹が遺したものは?(「1、2、3、悠久!」)。愛するその「手」に抱かれて、わたしは天国を見る。(「ジャングリン・パパの愛撫の手」)。死にかけた伝説のロック・スターに会うため、少女たちは旅立つ。(「地球で最後の日」)。エロスと、魔法と、あふれる音楽!―直木賞作家が描く、甘美な滅びの物語集。最初期から最新作までを網羅したインタヴュー集「桜庭一樹クロニクル2006‐2012」も同時収録。

 

桜庭さんてなぜエロを書いてもエロくないんでしょうか。

これが作家の個性なのか?

村山由佳さんとかエッロって思うのに、なぜか桜庭さんの書くベッドシーンはいやらしくない。

これが私の桜庭さんを好きな所以なのですが、なぜか清潔感があるんだよなぁ。

 

この作品は、「傷痕」がちょっと近いかな。

後半のインタビュー集ですが、全部読んでたから面白かったし桜庭さんが好きな作品を知れて嬉しかったです。

ただ読んでいない人は猛烈なネタバレになるので読まない方がいいです。

作者が作品を解説するのは私はあまり好きではないのですが、桜庭さんの作品はほとんど読んでいるので楽しめました。

けど、まぁ知ってしまった故に狭くなってしまった感は否めません。

それでも知れた方が良かったから後悔はしていませんが・・・。

 

 

道徳と戦う話

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すっごく乱暴にいうと道徳と戦う一つの血筋の話です。

 

最初はたいへん美しい女が産んだ4人の美女と1人の男児。

次は、その中の4女と長男が結ばれ、息子(ジャングリン)を産む話。

その次は、ジャングリンとその恋人と、ジャングリン・パパの話。

そのまた次は、ジャングリンと息子ジャングリーナの話。

そして、またジャングリーナが誰かと作った男児(ジャン)が生まれ、戦争で死に

最後はジャングリーナが死んでおしまい!

 

たいへん美しい女は誰が父親か分からずに子どもを産んで出ていった。

ゆえにたいへん美しく生まれた4人の姉妹は生きるために娼婦になり働いた。

その中の4女と義父兄弟の弟は近親相姦。

ジャングリンの妻になった少女が恋したのは、ジャングリン・パパ。

ジャングリーナはジャングリンを殺し、旅に出てスーパースターになった。

そこでファンの女の子を殺すけど、ジャングリーナほど稼げるアーティストがいないため、死体は関係者がそっと処理をする。

そしてジャングリーナと誰か分からない女の間に生まれたジャンは、戦争に駆り出され死んだ。

血が途絶えたスーパースターのジャングリーナが死んで、世界は悲しみに包まれ終了。

 

不貞の女から生まれた娼婦たち、近親相姦、呪いみたいな誓い、親殺し、人殺し、最後は戦争で死ぬ。道徳とかけ離れた人たち。

最後まで生き残ったジャングリーナは

そうしてまた、殺すことも、犯すこともなく、できることといったらせいぜいちょっとしたものを盗むぐらいの、世にはびこる善人ども、幸福の羊のようなくだらない人生、己の敵たる、いわゆる、糞ったれの道徳の奴隷どもをあざ笑うように、歌い続けた。 

 こんな歌を歌っていたジャングリーナが死んだとき、少女たちは地球で最後の日のような気がして、永遠に失われた美しいもののために泣き続けたのだった。

 

道徳とはなんぞや?

 

 

ジャングリン・パパの愛撫の手

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一番好きな話です。

ジャングリンと結婚する幼馴染の少女には父がいません。

なので、ジャングリン・パパに懐いていて、ジャングリン・パパの大きな腕にぶら下がるのが大好きでした。

ある日、ジャングリンが「ママから誕生日に欲しいものを聞かれたけど、答えられなかったんだが君は欲しいものがあるかい?」と尋ねる。

少女が「ジャングリン・パパの腕が欲しいわ」と言うと、ジャングリンは「仲良くしてくれたらあげるよ」と言いました。

 

そのあと戦争が始まりジャングリンも召集され戦地へ旅立ちました。

何年かして帰ってきたジャングリンをジャングリン・パパと一緒に迎えに行くと、ジャングリンの両腕がないことに気付きました。

ジャングリン・パパはそれからジャングリンの腕になりました。

普段の生活から少女と結婚したのちの夜の行為をするときも、ジャングリンと同化したように、ジャングリン・パパの腕は自然にジャングリンに馴染んでいました。

 

暫くしてジャングリン・パパは眠るように死んでしまいました。

二人はとても悲しみ、ジャンクリン・ママの隣に埋めました。

そして墓地を後にしようとすると、ジャングリン・パパの幽霊が着いてくるのを少女は感じました。

ジャングリンは気付いていないようでした。

ジャングリン・パパが寝込んでから、ジャングリンの腕の代わりにジャングリンの足が器用に動くようになりました。

その夜も、ジャングリンの足が器用に少女の服を脱がせ始めました。ジャングリン・パパはまだ近くにいます。

 

実は少女はある時から口がきけないようになっていました。

そのある時とは、ジャングリン・ママが敵の銃に射ち殺され、肉塊になり飛び散った破片を集めるジャングリン・パパが「姉さん・・・!」と言ったのを聞いた時のことでした。

近親相姦という背徳に脅え声を失ってしまったのです。

 

しかし、ジャングリン・パパがいなくなって初めてのジャングリンと二人だけの夜に少女は声を取り戻しました。

その声を聞いて、ジャングリン・パパは闇のなかに溶けて消えました。

 

というお話です。

少女はジャングリン・パパを愛していたけど、ジャングリン・パパの背徳は受け入れられませんでした。

彼女はジャングリン・パパがこの世からいなくなるまで、「愛する」ということを知らなかったのだと思います。

世の中には、愛してはいけない人という人が存在します。

その線引きは「道徳」です。

道徳の奴隷であった少女は、失って初めてジャングリン・パパが犯した背徳の意味を知り、言葉を取り戻したのです。

 

後日談で、少女はジャングリンとの間に一人の男児を産み、その後まもなく「腕しかないお化け」にさらわれて永遠に消えてしまったと、ジャングリンが息子に言っています。

彼女の「ジャングリン・パパの腕が欲しい」という望みは永遠に叶えられたのです。

 

こういうダークファンタジーはとても好きです。

愛を知るというのは、出来れば知らない方がいいと教えたくなるくらい業にまみれています。世の中が啓示するモラルや道徳に反することがたくさんあるからです。

背徳は悪いこと、だけど人は道徳の奴隷でいる内は本当の愛を知らないも同然なのだと思います。

 

人を愛することは善きことながら条件付きです。

家族でないこと、パートナーがいない人であること、異性であること、ある年齢を過ぎた人間を対象にすること・・・。

人はそこまで器用じゃありません。

浮気するし、不倫するし、兄妹で愛を持ったり、同性を愛したり・・・愛は条件付きじゃその本質に辿り着けないのではないかなぁと思います。

 

善き人のフリをしている人間こそ、人間らしさから遠いものに感じます。

問題は、それが道徳に反していないかではなく、そこに愛があるのか?ということなのだと思います。

 

 

桜庭一樹クロニクル

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ここからは桜庭一樹さんのインタビューになっています。

内容は

「少女七竈と七人の可愛そうな大人」

「赤朽葉家の伝説」

「私の男」

「GOSICK」

「ばらばら死体の夜」

「傷痕」

「無花果とムーン」

についてのインタビューになっていますが、「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」や「伏・贋作里美八犬伝」「ファミリーポートレイト」の話も出てきています。

 

私が上記の中で一番桜庭一樹らしくないなぁと思ったのが「ばらばら死体の夜」。

主人公が少女ではないこと、テーマが借金というお金に困るあらゆる立場の人たちが織り成すストーリーだということが、今までの作品と大分違うと感じさせます。

 

桜庭一樹の作品で「お金」の話が出たのって、ばらばら位な気がします。

いつもお金を自分で扱えない少女(中学生)が主体なので、「うちは貧乏だ」位の表現でした。

ばらばらは個人的には不快な作品です。

後々、書評しようと思うのですが再読する気になれない。

 

私は、「愛」に関しては好きになっちゃったらしょうがないっていうどこか寛容というか諦めというか、理性では抑えきれない力を持つのが恋だと思っているので、それをモラルで押さえ付けるのは無理あるなぁと思うのですが、お金に関しては自分でコントロール出来るでしょう?と思ってしまうのです。

 

ウシジマくんの原作漫画を読まないのも、何というか・・・よく分からないんですよね。

そして知りたいとも思えないから。

山田孝之が主演だからこそ見ていた作品です。

お金はもちろん必要で、宝くじ当たったらいいなぁとは思うのですが、お金持ちが夢なわけではありません。

 

桜庭さんは、夢そのものがお金という人もいるかもしれないと思ったと書いていて、そこから一番遠いのが書物や本を読んで何か考えるということなのでは?と思い、古本屋の二階を舞台の一つにあげたそうです。

 

他にも桜庭さんがどこから影響を受けて、どんなところに魅力を感じているのかとか、少女に対する考え方とか、色々話しています。

私は、桜庭さんの作品は大好きだけど、よく分からないなって思うところがたくさんありました。

自分が大好き!って思う作品を書いている作者に親近感が沸くのは自然なことと思いますが、それがガラガラと崩れていったような気持ちです。笑

 

自分が思っていた以上に、一つ一つの言葉に、舞台に、色に、意味をきちんと持たせていて、大切に書いているのが分かって、あぁ私はこんなに好きだけど、まだまだ理解不足だなぁ・・・と思ったり。

 

読書って作者との答え合わせではないのに、インタビューとか解説を読んじゃうと、つい「答え」を見つけたくなっちゃって、真実は作者にあると思っちゃうんですよね。

でも、多分、書きだしたのは作者でも、答えを作者は用意していないし、持っていない。

読書ってやっぱり、自分との対話なんだと思います。

 

 

ダークファンタジー好きな人には大変オススメ。