深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

伏 贋作・里見八犬伝/桜庭一樹~ひとを愛する心を持ってから、死にたい~

≪内容≫

伏―人であって人でなく、犬の血が流れる異形の者―による凶悪事件が頻発し、幕府はその首に懸賞金をかけた。ちっちゃな女の子の猟師・浜路は兄に誘われ、江戸へ伏狩りにやってきた。伏をめぐる、世にも不思議な因果の輪。光と影、背中あわせにあるものたちを色鮮やかに描く傑作エンターテインメント。

 

エンタメ小説って感じでした。

楽しい!ワクワク!どーなるの!?みたいな。

読んだことはないけど、大好きなアニメ「有頂天家族」もこういう感じなのかなぁ?

 こちらはたぬきのお話なんですが、めっちゃ面白かったんですよね。アニメ。

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 現在2期が放送中(2017年4月)。

 

本書は映画にもなっていて、映画も見たんですが良かったですね~。

桜庭さんの作品って少年少女の割にアニメ向きではないので、今回はちょっと番外編というイメージです。

エンタメ感も普段そこまで感じないのでそういう意味でも珍しい。

 

 

 

信乃VS浜路

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月の光を、俺ぁ、あたしは、まだ見ていない・・・

ひとを愛する心を持ってから、死にたい・・・。

ほかにはなんにもいらん・・・。

だが、まだ死ねぬ。まだなにかをしてない、なにかが足りない、そんな気がして、かなしくてさびしくてならぬ・・・。

 

俺ぁ・・・。

あたしぁ・・・。

 

月の光を、まだ見ていない・・・。

 伏の信乃と猟師の浜路はまだ恋したことがない。

そんな二人の小さな嘆き。

 

この台詞とこのシーンがほんと好きです。

胸がぎゅってなる。

生まれたからには伏だろうが娘っ子だろうが、誰かを愛する心を持ちたい。

それが続かなくても、永遠にならなくても、叶わなくても、生まれたからには愛するってことを感じたい。

 

二人は自分の職業(?)にだけ集中してきました。

それが役目。それが自分のすべきことだと思って。

 

だけど死ぬってなったら、急になにかが足りない気がしてきた。

二人は一心不乱に走ってきたけど、ほんとうは怖くてほんとうは誰かに甘えたかった。一人で戦うより誰かを守って戦いたい、誰かのために、愛のためにってヤツをまだしていない。

 

ここじわ~って涙が出てきてほんと切ないです。

ほんと桜庭さん好き。

 

 

やさしくて汚いもの

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いや、神さまっていうのはですね。きっとね、もともと我々よりもどっか卑しいもんだと思うのですよ。

そうして、だからこそ、ぼくら人間のさもしくて不浄な部分を無償で引き受けてくれる。わけも聞かずに赦してくれる。そういう、優しくって汚ねぇもんだ、ありがてぇ、って 

 伏に惹かれる冥土の言葉。

この「贋作・里美八犬伝」の作者が冥土です。

伏を追う浜路と伏に惹かれる冥土。

冥土にとって伏は神さまのようなものだといいます。

 

何かやさしくて汚ねぇもんだ、ありがてぇってすっごい腑に落ちるなぁと思って、この言葉も好きです。

 

今更ですが、伏って犬人間みたいな人間です。

その昔、伏姫という女子と八房という犬が夫婦になり、その子供が生まれ子孫が隠れ隠れ生きているというお話です。

 

私は原作を読んだことがないので、聞いたことあるなぁ~くらいの知識なのですが有名な古典ですよね。いつか読んでみようかな・・・でも古典が苦手なんだよなぁ・・・。

 

 

その昔、伏姫のはなし

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信乃と浜路の切ないシーンも好きですが、一番そそられるのは伏姫のところです。

この時代の描写は「銀の歯の森」という、名前を呼ぶと消えてしまう森というなんともダークファンタジー溢れる世界観になっています。

この「銀の歯」というのは葉っぱが歯の形をしていて色が銀色です。

私の予想ですが、消えてしまったものたちが銀の歯として生まれ変わっているんじゃないのかなぁ・・・って思います。

銀の歯の葉は風に揺れると人の話し声みたいに聞こえるらしいし。

そして銀色は死者の色なんじゃないかなーと思うのです。

魂を奪う色。

 

この伏姫が生まれたときのお城は夢みたいな国でした。

吊城がこの世のものとは思われないほど平和で日々が光輝いていたのは、ここが地上の楽園だからではない。

怪女が人身御供となって、人柱のように天守閣にとじこめられ、不吉なことすべてを瘦せ細った一身に引き受けているからだ、と感じた、あの夜の恐怖・・・。

しかしそれは、父上の妹が物言わぬ獣となり幽閉されていたからだと悟った伏姫。

これはオメラスを思い起こさせますね。

 収録されている「オメラスから歩み去る人々」は正義を問う話です。

 

伏姫と弟の鈍色。

城を守ろうとするなら・・・どうなるか分かりますよね?

 

兄妹という不思議な因果。

いつだって光と影のように存在する関係。

 

その因果を終わらせたという信乃と、まだ終わっていないと伏を追い続ける浜路・・・というところで終了します。

 

大昔から今に至ってもずっと在り続ける光と影。

それは人間と伏の関係もそうだと思います。

戦勝国と敗戦国もそう。

 

物語って自分次第でどこまでも深読み出来るなって思うのですが、それって作り手がもっともっと深く書いているからなんですよね。

何層にもなっているから、上澄みだけでも楽しめるし、最奥まで行く事も許されている。ミルクレープみたいだなって思います。笑

 

 

不思議で切ないお話です。

本が苦手な人はアニメでも見られます。

 主題歌はcharaです。これもまた素敵。

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