深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】ピアニスト~もう二度と見たくないと思った映画~

≪内容≫

ピアノ教師と年下の生徒、その愛憎を激しく切なく描いた作品。
観るものの感情を極限状態に追い込み、愛の不毛を問いかける衝撃作。

 

私はラブロマンスが見たかったんです!!

昨日見た「きみに読む物語」的なやつ!!

 

パッケージに騙されたよっ!!!!!

こういうの予備知識なく見るとダメージ大きい。

「ダンサーインザダーク」とかは、変な監督って知ってたから自分の中で噛み砕けたけど、これは恋愛映画だと勘違いしていたせいで始終「!!??いつ!?いつ結ばれるの!?」と、最後まで希望を持って見てしまった。

 

だから良くなかった。

 

ていうかこれブラックスワンじゃんかー!!!!

 主人公のエリカは39歳にもなったというのに、まだママと同じベッドで寝ているし、男を知らない。

父の存在はよくわからないけど、ママはエリカにひどく干渉する。

部屋に教え子(男)が来たとなると「大人なんだから好きにしなさい」と言ったすぐあとに「これが・・・全てを捧げた結果か・・・」と口にする。

 

39歳になっても自分を子供扱いするママに対して、自分がどんどん大きくなるのは罰だとでも言うように自分を子供のままの状態にするエリカ。

f:id:xxxaki:20170524205709p:plain

自分で自分の股を鏡で見ながら傷付けます。

血がそこから流れるように。

39歳で閉経は早すぎると思いますが、過度のストレスで早まったのかもしれません。

体は老化に向かうのに、ママはそれを求めていない。

だから人工的に生理を作る。

 

ママに反抗したい、でも傷付けたくない、嫌われたくない、ママの子供でいたい・・・。

自分が大人になってしまったら愛されないと思っているエリカは、日々をすり減らして生きていました。

 

 

社会との架け橋である父性

f:id:xxxaki:20170524210751p:plain

そんなエリカにアタックするのがこの青年。ワルター。大学生くらいの年齢。

専攻は低電圧です!とかいう理系の学生はエリカの気を惹きたくて音大に編入してきます。(なにこのハイスペック)

 

エリカは恋やオシャレを禁じてきたので、こんなアタックに動揺します。しかし、心の底では恋がしたい、セックスがしてみたい、男を知りたいという欲望が確実にあります。

 

彼女の中で男というのはとても遠い存在です。

日本でいう漫画喫茶?みたいな個室に入りAVを鑑賞するエリカ。しかも男性が精液を拭き取ったであろうティッシュを「スーハー」と思いっきり吸い込む。

他にもカーセックスしている車の近くにしゃがみ込み放尿してみたり。

 

とにかく男とかセックスが彼女にとっては夢、幻のようなもので「自分には手に入らないもの」「無縁なもの」というような印象を抱きました。

 

彼女は決してかわいい性格ではありません。

どちらかというとヒステリックな印象で、勝ち気で命令口調が多いです。人からなめられないように必死な感じです。

だからもしかしたらワルターがアタックするまで彼女を口説こうと動いた男性はいなかったかもしれません。

 

なのでワルターの熱心なアプローチに絆されてしまうのですが・・・。

 

ここで思ったのが父の役割です。

この作品でも「ブラックスワン」でも父がいません。そしてどちらの主人公も禁欲的な生活を送っていました。

 

ブラックスワンでは、演技に色気がない!ということで妖艶な黒鳥を降ろされそうになります。しかも黒鳥の代役に立てられたのはヘラヘラしてだらしなさそうなまさに奔放という女性。

まさに白鳥の主人公にとって彼女にあって自分にないものが、世間から求められているものだという事実と、自分が彼女のようになれなければ黒鳥を踊れないというジレンマに苛まれます。

 

本作では、彼女はワルター出現の前から恐らくAVを見ているし、のぞき行為もしていたと思います。

もう逃げたくてしかたなかったのだと思います。母との二人きりの生活から。

恐らくブラックスワンの主人公も黒鳥を降ろされ、それ以降潔癖な役しか演じられずになったなら、エリカと同じような人生になったかもしれない、と思う。

 

閉鎖的なんです。

この二つの作品の母娘関係は。

だから社会に繋がる扉がない。

 

父の役割とは大きくはそこなんだと思います。

家族という閉鎖空間から社会へ繋ぐ存在。

 

エリカは一回り以上下のワルターに助けを求めます。

「ここから連れ出してほしい」「現状を変えてほしい」「助けてほしい」と。

 

母と息子なら「俺は男だから母ちゃんを守らなきゃ!」と外に出ることに違和感はありませんが、母と娘となると「母ちゃんのそばにいなきゃ」となってしまうのかなぁ、と。

母がそれを求めた場合、娘は永遠に籠の中の小鳥。

成長して籠が窮屈になっても扉は開かない。

 

開けられるのは外から来るものだけ。

 

お母ちゃんだって扉を開けられるんですけど、父の方がより自然に開けられると思います。というか父がいるから母をおいて飛び立っても平気なんだ、と思う心理があると思います。

だから、ホンマでっかTVとかで男はいらない、とか言うけどそんなことはない。

父ちゃんは必要だし、男がいなきゃ籠の中で圧死する鳥が生まれると思う。

 

 

想像と現実は違う

f:id:xxxaki:20170524214940p:plain

エリカはワルターに手紙を書く。

内容はおったまげるようなSMプレイの要望である。

「殴って!怒ったなら殴って!殴ってよおぉおおお」と頼み込むエリカ。

 

ワルターは病院に行った方がいいと忠告し、手が傷付くから殴らないという。(え、ここで俺腐ってもピアニストだぜ?的な?)

 

とりあえずワルターに隷属したそうなエリカ。

しかし純粋に愛し合いたいワルターは去っていく。

ここから形勢逆転でエリカがワルターを追っかけるんですが、これワルターもめっちゃ傷付いています。

 

なんか内容がグロくて書きたくないから書きません。

 

とりあえず吹っ切れてキレたワルターは夜中にエリカ宅に押し入り、「今から手紙の書いてあった通りにやってやんよ!シナリオ暗記してきたぜ!!」と意気揚揚に乗り込み、母を閉じ込めエリカを殴る!!!

f:id:xxxaki:20170524215902p:plain

エリカは自分で望んだのに、というか手紙の内容の一部分であるビンタしかされていないのに涙がぽろぽろと出てきて止まりません。

 

ここでエリカは男を知ります。

ここに来るまでちょっとした行為はあったものの、それはエリカの想像の範囲内でした。「男ってこうすればいいんでしょ?」「男なんて何言ったって傷付かないでしょ?」「私の言うことを聞いてればいいのよ!」という考えをワルターは口を挟みながらも受け入れてきた。

 

しかし、自分の望みであったビンタは想像よりもずっと痛くて気持良くなかった・・・。

ワルターからすればなんでエリカが泣くのか、それもシナリオの一部なのか、泣いてる自分に浸りたいのか、本当に拒絶しているのか分からない。

 

だけど多分エリカも自分で自分が分からなかったんだろうと思う。

 

ワルターが自分の望み通りに動いてくれれば幸せになれるはずだった。母から逃れ、男を知り、知ったことで母に復讐出来るはずだった。

なのに、実際は目の前のワルターが怖くて閉じ込められた母が可哀相で自分がどうしたいのか分からない。

 

ここからラストに向かいます。

私的にはエリカが新たな道に進んでいくことを決めたっぽかったので良かったかな?って思ってます。

エリカが着のみ着のまま歩いて行った先で殺されてしまっても、このまま閉じ込められた生活を強いられるよりは、自分で選んだ道だからいいんじゃないかなぁと思いました。

 

もしもエリカの心に触れようとしたのが知的な姉様に憧れる青年ではなくて、傷付いた野良猫を助けてあげようとする老紳士だったなら、少しは違っていたんじゃない?と思う私でした。

若さってそこが魅力だけど、真っ直ぐすぎて痛いときがある。

「変態かよ!病院行けよ!」じゃなくて「なんでこう思ったの?」「何かお母さんと問題があるの?」と聞いていたら。

無防備なくらい大胆に迫ってきたからドラマチックさで言えば若者に軍配が上がるのは分かるけど、何年もかけて氷を溶かすような長く温かい目で見つめ続けてくれるおじ様も素敵だと思います。

 

たぶんエリカに必要なのは、そういう優しい眼差しを持ったお父さんなんだろうな・・・と密かに思ったり。

 

とはいえワルター青年も時折この変態的恋愛を思い出してトラウマになるだろうな、と思います。最後に「先生」と割り切ったように話しかけてきていても、本当は傷付いてるんじゃないかなぁ、とか。

 

 

愛されなきゃ女じゃない、って言葉は違うと思うけど

 誰だって愛されるために生まれてきたってことを証明したいじゃないか。