深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

悲しみのイレーヌ/ピエール・ルメートル~文学という歪んだ鏡に映るのはなに?~

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≪内容≫

『その女アレックス』のヴェルーヴェン警部のデビュー作。 奇怪な連続殺人をめぐる物語がたどりつく驚愕の真相。 

 

「その女アレックス」の前作です。

 奇怪な連続殺人をめぐる物語というより猟奇的な殺人という言葉が合うかなぁ。

もうとりあえず気持ち悪いです。

食事しながら読むことはできませんでした。

 

ヴェルーベン警部補シリーズ

悲しみのイレーヌ

その女アレックス

傷だらけのカミーユ

 

人はなぜミステリーが好き?

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 本書の犯人はこう言います。

 

ミステリがこれほどもてはやされるのは、人々が無意識のうちに死を求めているからです。そして謎を。

誰もが死のイメージを追い求めるのは、イメージが欲しいからではなく、イメージしか手に入らないからです。

血に飢えた人々のために政府が用意する戦争や虐殺を除くと、ほかになにがあるでしょう?

 

ううん・・・そうですかね?

正直自分がそこまでミステリーが好きではないので、よく分かりません。

というか、死のイメージを追い求めることは理解できても、そのために狂人のような殺人を描く必要はあるのか?などと思ってしまう。

 

映画SAWもそうですが、残虐な方が好奇心をそそるという心理はなんなんでしょうね?これもまた、ミソスープに書いてある、イメージすることで自分の世界が正常であることの確認する心理からきているのでしょうか?

 「インザ・ミソスープ」の記事を読む。

 

原題は「丁寧な仕事」。

タイトルって重要だと思うから、「丁寧な仕事」にしてほしかった。

だって、結局この本どんな本だった?って聞かれたら「丁寧な仕事」だから。

補足として「猟奇的な」などの言葉が入る感じです。

 

ミステリーを好きになれない理由

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なんか、テレビを見てる感じというか。蚊帳の外というか。入りこめない。

すでに起きた事件について「これこれあーでこーでこーなってます」と言われているようで自発的に考えるには情報が無さ過ぎる。

 

なので、小説を読む際に物語と自分が並行して進むことが出来ず、小説が先へ行って色んな情報を知り、読者に「今こうだって!」って言っている感じというか・・・。

 

私が読むのが下手なのか、想像できることと言えば「こいつ怪しいな・・・」とか「こいつ殺されそうだな・・・」とかそれ位しかない。

それ位の想像、というか、そんなゲスな想像をするために読書をしたいわけじゃない。

 

後は、殺す理由が浅はか過ぎてどこにもいけない。

中学校のころ、コナン金田一論争がクラスでありまして、単純に二大人気推理マンガのコナンと金田一どっち派?というものです。

 

私の中ではコナン=娯楽ミステリー、金田一=哲学ミステリーというような印象になっています。

コナンでどんなに蘭ねえちゃんがいいこと「正義って言葉はそんなことに使っちゃだめですよ・・・」とか言うより、金田一のありきたりな「死ぬなよ!」って方が響く。

 

コナンをディスっているわけではありません。

私は正直コナンに関しては事件の内容より、新一にいつ戻るの?とか新一と蘭の恋とか和葉と服部いつくっつくの?とかそっちの方がメインと思っていますし。

 

好みの問題ですが、私は事件のトリックとか猟奇的な殺人内容とかより、なぜその犯行をするに至ったのかっていう犯人目線が知りたいんですね。

 

別にそれで死んだ被害者が戻ってくるわけでもないし、犯人は可哀想な過去を背負っているからいいよなんて事にはならないんですが、そういうのがないと、ただ事件が起きて、犯人が捕まらなくて、刑事が焦って、また誰か死んで、ようやく逮捕、ちゃんちゃん。って感じでなんか、決められた運命は変えられないんですよって言われているようで悲しくなります。

 

あらかじめ決められたストーリーを辿っているという感じで、そのどこかで「もしかしてこうすればいいんじゃない?」とかそういう他の道を探せないことが辛いなぁ、と思います。

 

といっても「その女アレックス」も「傷だらけのカミーユ」も読みました。

主人公カミーユの班のキャラクターは個性があって魅力的だし、ユーモアのある会話などはさすが欧州といった感じ(個人的に欧米はブラックユーモアなイメージ、ときに笑えない)で、人気シリーズっていうのは、こういうのが大事なんだなぁと思いました。

 

だけどそうやって刑事側のキャラクターが立つほど、被害者も犯人もすごく雑な扱いをされているように感じました。

 

ひとつ、この本を読むには、グロテスクな細かい描写を受け入れることを要求されます。そういう耐性がない人は本屋さんで事件のシーンだけチラ見して確認することをオススメします。

フランス人の半分は作家のなりそこないで、残りの半分は画家のなりそこないなんだ。