深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

ひとなつの。/~キラキラは永遠に続くものじゃないけれど~

≪内容≫

7月のある日、「郵便」を発見したぼくの、胸がきゅんとするやりとり―(「郵便少年」森見登美彦)。映画の撮影用に借りた家に住むことになった映画監督の息子の夏(「フィルムの外」大島真寿美)。浪人2年目の夏、青春18きっぷを片手に出かけたあてのない逃避行―(「ささくれ紀行」藤谷治)。夏をテーマに大島真寿美、瀧羽麻子、藤谷治、森見登美彦、椰月美智子が競作。まぶしい日差しの中、きらきら光る刹那を切り取った物語。

 

 

もう秋になってしまいましたが・・・。

夏の爽やかでちょっぴり切ない物語が詰まった一冊。

 

読書につかれたときにもオススメです。

 

 

 

 

フィルムの外

f:id:xxxaki:20170916182612j:plain

ほんとだ、由奈。きみの言うとおりだった。

あの少年と少女はただの友だちではなく、恋人同士でもなく、ひと夏を乗り越えるために必要だった、かけがえのない相手、パートナーだった。

この話に限らず、本書の5つの物語の登場人物はみんな学生です。

つまり夏休みがあるんです、1か月くらい。

 

社会人になると夏休みがあっても一週間くらいなので、「ひと夏を乗り越えるために必要だった、かけがえのない相手、パートナー」っていう発想がまず削がれると思います。

なので、童心にかえって読みましょう。

 

社会人になると悪く言えば「夏休みが短い」ですが、良く言えば「役割から外されない」ということになります。

 

なんで「ひと夏を乗り越えるためにパートナーが必要なのか」は、自分の役割が夏休みにはなくなってしまうからだと私は思いました。

手持無沙汰というか。

 

自由といえば自由だけど、逆に自分で役を探さなきゃいけないし、やるべきこと、やりたいことも自分から捕まえにいかなきゃいけない。

 

そういった状況って意外に孤独だったりします。

だからこそ夏を乗り越えるという表現になるんだろうし、パートナーが必要になるんだと思う。

 

この物語の中の二人はひと夏のパートナーとして永遠に映画の中で生き続けます。

 

 

 

 

三泊四日のサマーツアー

f:id:xxxaki:20170916183642j:plain

光圀とレオにいつかどこかで会えたらいいなと思った。

そのくせ、自分からはきっとレオに連絡を取らないことも知っていた。おそらくレオも同じように思っていることだろう。

連絡先は、お守りのようにとっておこう。

 こういうのあるよね!!!

なんか、また会いたいんだけど、また遊びたいんだけど、このステキな三泊四日間の出来事から外に出したくない気持ち!!

 

最初は仲良くなかったけど、一緒に生活していく内にそれぞれのいいところが分かってきて、尊敬したり、感動したり、そういうことって・・・尊い。。。

 

大人になると、まず「なんやねんこいつ嫌いだわー」みたいに思えなくなるからな。なんとかこの三泊四日が最悪なことにならないように、っていう事前防衛みたいなことしちゃうからな。

もう傷付きたくないから。

そして時間が貴重すぎるから。

 

なんかもう自分の直感より処世術の方が先に来てるなってことを実感して悲しくなりました。

でも読んだことで、懐かしいような純粋な気持ちが蘇ってきました。

こういう本読むと若返る気がする。

アンチエイジング本。

 

 

 

ささくれ紀行

f:id:xxxaki:20170916185819j:plain

そして彼女がたくましく、幸せに生きているであろうことは、この旅のあとに続いた僕の今の人生を、ちょっとばかり支えてもいるのだ。

青春18切符で旅をする事に決めた、20歳の浪人生の僕。

その旅行で出会った色んな人たち、自分から出てきた言葉、想像と現実のギャップ・・・帰るときに出会った彼女は一人きりで渋谷まで行くことに決めたらしい。

 

僕をだしにして、青春18切符で新幹線に乗った彼女は笑顔で手を振って消えていった。

彼女がたくましく幸せに生きていることを、僕は根拠もなく信じている。

 

全然恋愛とかじゃないし、一緒にいる時間も少ないんですけど、旅行先で出会った人ってなんか記憶に残りますよね。

 

したたかでたくましくて、ちょっと弱くて、でも前向きな女の子。

ささくれていた僕は彼女に出会ったことで前向きになれたような気がします。

たいした話じゃなくても、人の生き方を見て励まされることってありますよね。

 

これは学生でも社会人でも同じ。

本書は最初の小学生の話からどんどん年齢が上がっていき、この「ささくれ紀行」が一番年上の20歳です。

 

年齢は違っても、ひと夏に起きた特別な出来事の輝きは変わりません。

眩しくて、でも一瞬だけの切なさが詰まった作品でした。

 

 

作家自体はもう大人なのに、こういうキラキラした作品が書けるってやっぱり感性が若々しいというか瑞々しいんだろうなぁ・・・と羨ましく思いました。