深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】ダブルミンツ~どんなに愛しても一つになれないから生きていけるんだと思う。~

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≪内容≫

女を殺した。今すぐ来い―
中村明日美子原作の問題作を実写映画化。淵上泰史×田中俊介(BOYS AND MEN)W主演、内田英治監
督が描く、犯罪と暴力の中で翻弄される男たちの極限の愛憎劇。

 

原作・中村明日美子と聞いて。

この人の漫画読んだことはないんですが、こちらが良かったので、今回

もそんな感じかなーと思って予告も見ずに観てみました。

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 「同級生」の記事を読む。

 

 原作にどれだけ情報が詰め込まれているのか、映画だから削られてるのかは分からないのですが、この二人を繋いでいるのは同姓同名という名前だけです。

 

 その他にこの二人が共通するところはないと思うし、真逆な人生を送ってる感じ。え?二人友達なの?みたいな。

 さらに、二人の出会いも、それぞれの個人的な性癖なり過去なりの描写もほとんどないですし、たぶんこの作品は好きとか愛してるとかそういうのじゃないんだ、という印象がありました。

 

 人が誰かと一つになりたいと思う時があるとすれば、その相手のことを好き好きでしょうがない、とか、愛して止まない、といった感情に突き動かされて起こると思うんですが、この二人(作品)はそういう感情の部分ではなくて、本能というか運命みたいな部分で起きた繋がりだと感じました。

 

運命的な観点から見ると、君の名は。を思い出しました。

君の名は。

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 「君の名は。」の記事を読む。

 

 

アンドロギュノス

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 二人のミツオはミツオの家でこのテレビを見ている。

 

アンドロギュノスはすごく傲慢で
いつしか神様に二つに分けられ
二人は永遠に求め合うことになりました。

 

 アンドロギュノスは日本では両性具有という意味です。詳しくはwikiってみてください。中々ロマンチックなギリシャ神話だと思いました。

 元々は一つだったものが二つに分けられてしまったから、人はその半身を求める、故に女は男を、男は女を、もしくはその片割れを探すのだと。

 

きっと俺とミツオくんは同じひとつの身体だったんだ。

それが分かれてしまったのかも。

 

 ミツオがミツオに語りかける。

 漢字は苗字も名前も違うんですが、響きは全く同じ。

 だとすると、視覚より聴覚の方がいかに人に作用しているかが分かりますね。

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 不良のミツオ優等生のミツオって感じですかね。

 

 二人は高校の同級生。 高校時代は主人と下僕のような関係で、不良のミツオに何をされても許してしまう優等生なミツオだったが、その関係は大人になって疎遠になっても繋がれていたのだった。

 

入口と出口

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二つに分かれてたもんが一つになった
で、どうなるんだよ
半欠け同士がくっついて
また丸いボールになって転がって
どこに行くんだよ俺たち
どこに行けんだよ

 

 自分の命令通りに罪を半分背負ってくれたミツオに不安を吐露するのは事件を起こした不良のミツオであり、肝っ玉が座ってるのは優等生のミツオなのであった。

 

 話が進んで行く内に感じるようになったことがあって、

 それはミツオ=ミツオだということです。

 

 これは片割れ(不良ミツオ)+片割れ(優等生ミツオ)=ミツオではなくて

悪いミツオ=良いミツオなんです。

 

 物事には必ず入口と出口がなくてはならない、というのは「1973年のピンボール」で出てきた言葉ですが、まさにその通りだと私は思っていて、たぶん、引用文を話したミツオも漠然と思っていることだと思います。

1973年のピンボール (講談社文庫)

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 「1973年のピンボール/村上春樹」の記事を読む。

 

 不良ミツオ優等生ミツオと一緒に暮らすようになっても、放浪癖は治らず、組から抜けることもなく、更に金をちょろまかす悪事まで働いて組の者にしめられてしまいます。

 

 私は悪いミツオのもう一人の自分が良いミツオだと思って観ていました。パラレルワールドというか、もしも、自分が違う人生を歩んでいたら・・・という存在。

 故に、不良ミツオ=優等生ミツオなんです。

 

 だから、彼らは入口であり出口でなければならないし、始まりであり終わりでなければならない気がしてました。

 彼らが出会い、一つになるということは、入口も出口もなく始まりと終わりもない、いわば永遠のループ状態になる気がするのです。

 しかも、アンドロギュノスの話に戻ると、一つになったとしたら待ちうけているのは断絶じゃないですか。結局一つになったところで、その先に待っているのはまた二つに分けられてしまう未来なのです。

 

 ギリシャ神話上は神が裁きますが、この世界では人が人を裁くでしょう。

 悪いミツオはなんとなく漠然とそういう未来が分かっていたんじゃないかなぁと思います。関係を始めたのも悪いミツオなんですがね。悪いミツオはたぶんすごく繊細なんだと思います。

 良いミツオは割と図太いというか、まぁ、Mって強くないとなれないから。

 

 だからね、私は割とラストシーンから想像する彼らの未来はバッドエンドになってしまう気がします。故にちょっと救いのない物語に感じました。

 

 私が悪いミツオだったら、最後の最後の希望として、良いミツオとは一緒になりたくないんです。どんなに好きでも。

 一緒になったらもう、出口が完全になくなるから。

 離れていれば、自分がどうにもならなくなったときでも、自分には出口(救世主)として良いミツオがいるんだ、と希望を持てるから。

 

 人は一つになりたいと思うけど実際一つになれないから生きていけるんだと思うのですよ。

 お互いが入口になったり出口になったりして、それが生きていくってことだと思うんです。どうか二人がそれぞれのミツオのまま、生きていきますように・・・。

ダブルミンツ DVDスペシャル・エディション

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マンガの評価すごく良いですね。気になる・・・。 

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