深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】溺れるナイフ~自分の理想で無意識に傷付けあってしまうよね、十代って~

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≪内容≫

ジョージ朝倉の少女コミックを小松菜奈、菅田将暉主演で映画化。15歳の夏、東京から浮雲町に越してきた人気モデル・望月夏芽は、コウと呼ばれる少年に出会い惹かれていく。やがてふたりはつき合い始めるが、夏祭りの夜にある事件が起きる。

 

 

漫画原作モノの中でも群を抜いて原作読んだ方がいいなと思った作品です。

 漫画原作モノ、例えば「ホットロード」「潔く柔く」「僕だけがいない街」などなど観ましたが、割と映画の中で納得できたんですよ。

 私は、映画は映画で違う解釈があってもいいと思っているので、映画は映画で納得出来るんですが、この作品に関しては置いてけぼり感がすごい

 

 映画の良さって分かりやすさだと思うんですが、これは「???」ってところ多すぎました。自分の中にあるめっちゃ頼りない想像力と「~かもしれない?」を引っ張り出して観ないとよく分からない。

 これはなぜかというと、私なりに思ったのが形になる前のモノが散らばっているから

 

 本作のタイトル「溺れるナイフ」が意味する十代の自意識の乱立が全編に描かれています。

 

前半30分はあらすじみたいなもの

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 観た人の中でついていけた人よりついていけなかった人の方が圧倒的に多いんじゃないかと思う。

まず、主軸の二人が特別過ぎる

 

コウちゃん・・・地元の元大地主の跡取り息子

望月 夏芽・・・人気モデル

この二人の気持ち分かる人間いる???

お互い特別過ぎて、会っていきなりビビっときちゃってるっぽいけど、「あくまで恋愛じゃなくてあんたに負けないんだから!」って感じの夏芽ちゃん。

さらに、コウちゃんもお前に興味ないみたいな態度なのに「あいつも俺のもんじゃ」とか言い放つ。

 

こういう特別な二人だからこそ、「なんかコイツすげえ!」みたいなビビが合って、一気に仲が深まっていく(?)っぽい。

 

 

とりあえず前半30分過ぎて、祭りのシーンになる。

ここからどんどん崩れていくので目が離せなくなってきます。

 

美少女の悲劇

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悲劇その①・・・ストーカーに襲われる

悲劇その②・・・好きな男にお前はもっと輝けるとかいって振られる

悲劇その③・・・大人に勝手に期待されて勝手に失望される

悲劇その④・・・自分がいっぱいいっぱいでも「笑って」と言われる

悲劇その⑤・・・女子に下品な噂をされる

 

のう!みんな勝手じゃあああ~!

しかも悲劇には入れなかったけど、「友達でいい」と言っていた男が結局夏芽に対して恋愛感情を持っていたことも、私的には苦しかった。

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 こいつすごいイイ奴なんですよ・・・。

 こいつのおかげで夏芽もすっごい助かったと思うし、頼っちゃった部分もあったので、悲劇と言ったら違う気がするんですが、このシーンの後、私だったら笑えないだろうなーって思いました。

 

 なんかこういう「俺は友達でいいんだ!」って言われたら、言われた方って警戒心かなり薄まるじゃないですか。

 それって友達前提だからこそ成り立つのに、彼の演技が上手いからなのか、やっぱり目とか距離の詰め方が「好き」って出ちゃってるんですよね・・・。

 すごく都合良く「友達」って言葉を使っている気がして、私的にはあまり納得できません・・・。彼的には距離を詰めたいけど、夏芽を思って「友達」って言葉を強調しているのかもしれませんが、うーん・・・何とも。

 

 これって私が割と思ってることなんですけど、あんまり美人だったり優秀だったりする人って自分で自分のことを掘り下げる前に、周りがスポイルしちゃう気がするんですよね。

 「回転木馬のデッド・ヒート」の記事を読む。

 ↑「今は亡き王女のための」はスポイルされた少女のお話です。

 

 本作に出てくる男たちは皆と言っても過言じゃないほど、彼女に自分の理想や欲望を押し付けてきます

 さらに同級生の女の子達は「芸能人様は」と言って彼女から一歩引いています。

  それは彼女が同級生の女の子達を見下している(もしくは興味を持っていない)からなのか、単純に男が好きだからなのか他人には分かりません。

そんで、分からないことが更に誤解を生むと思います。

 

 私は、夏芽ちゃんの一番の悲劇は同性の親友がいないことだと思う。

 

 親友どころか友達一人も出てこないし。

「女は男によって磨かれる」とか言うけど、まず女は女同士のコミュニケーションの中で強くならなきゃ。

 女って怖い。でも、それ以上に情もあるし、色々むき出しだからケンカ出来ると思います。んでケンカするってことが大事だと今ではすごく思っています。夏芽ちゃんは弟がいるだけで、女兄弟もいないし、母も何か優しそう。

 女は女が女に向ける厳しい辛辣な言葉で現実を見たり、何くそこの野郎とか思ったり、相手を立てたりすることを覚えていくと思うので、夏芽ちゃんには是非親友を作って欲しいと思う。もしくは厳しい部活に入るとか。ね、健康だよ、厳しい部活動と親友は。

 

問題がない問題

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 本作とホットロードを比べてみて感じたこと。

 比べる必要なんて全然ないんですけど、何かこのバイクの二人乗りとか、同世代の若い男女がぶつかり合う感じが個人的に「ホットロード」とかぶったので。

ホットロード

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「ホットロード」の記事を読む。

 

 ホットロードの場合って和希とお母さんの関係っていう明確な問題があるんですよ。

 それに対して、本作の二人って際立った問題がないんですよね。

 原作はコウちゃんの生まれとかに色々あるっぽいんですが、映画の中では二人とも同級生から見たら一目置かれる存在なわけです。(いい意味で)

 

 コウも夏芽は大地主の息子とモデルというハイスペックを持ちながら、甘さで言えば一般人とほとんど同じかもっと甘いと思います。

 

なぜかというと、二人とも互いに自分の理想を擦り付けあっているんですね。

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「なんであのとき助けてくれなかったの?」

「誇り高くおりたかったわ。お前が望んだみたいによう」

「コウちゃんが決めて!」

「お前はもっと遠くに行ける」

「コウちゃん殺して!やっつけて!」

とかね。

 

 人って明確な問題があったら、そこを解決するしかないですし、自分が逃げても誰かが尻拭いするか、そこに目を向けさせてくれるもんです、たいてい。

 でも二人には目に見える問題がなかったからこその苦しみがあるんかな、って思って観てました。それが若さだとすごく思いました。そう考えると、春山は相当大人ですね。読んだときも思ってましたが、彼の言葉って理想の押し付けじゃなくて、自立を促す言葉だから。

 

 コウちゃんコウちゃんってくっついてくる夏芽と、その夏芽の理想通りの自分に成りたくて成れなくて苦しむコウ。

 春山は和希が甘えてくると、「俺がいないとなんにもできないような女になるな」と突き放す。和希は夏芽のように「じゃあどっか行っちゃうよ?」なんて言わないで何くそ精神で自立しようとする。

 

 どこから大人になったのか、って曖昧なものですけど、人それぞれそれなりの明確な問題が起きたときなんじゃないのかなって思います。

  問題がないって良いことみたいに思えるけど、なきゃないでずっと成長出来ないと思います。問題が出たら苦しいし辛いし涙も出るけど、どっちかがどっちかに甘えたまんまで大往生出来るほど人生は甘くない。

 

共感やキュンより、ひたすら「若いな~」という感じでした。

ちなみにこのシーン。

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suedeの夜の瞑想じゃん!とか思ったり。

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何はともあれ、二人はとっても美男美女だった。 

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 女性はコウちゃんみたいな男の子がクラスにいたら好きになっちゃうよなぁ。

そんで夏芽みたいな美女が苦しんでたら助けたくなっちゃうよなぁ。