深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

タイド/鈴木 光司~大いなる母と壮大な兄弟げんか、選ばれた者は捨てられた者の怨念を引き受ける~

≪内容≫

高山竜司、二見馨という二人の男の人生を生きた記憶を持つ、予備校講師の柏田誠二は疑問を抱えていた。おれは何のためにこの世界にいるのか…。謎の病に伏した少女を介し受け取った暗号に導かれ、伊豆大島に渡った柏田は、『リング』という本に記された竜司の行動を追うことで、山村貞子の怨念の起源を知る。自らの使命を自覚する柏田だったが、時を越え転生した貞子の呪いに身体を蝕まれ…。新「リング」シリーズ第2章!

 

 

 

リングシリーズ劇終!!

怖いものを怖いまま終わらせたい人は「リング」で終わっていた方がいいし、読んでも「らせん」までにしておいた方がいいと思う。

それ以降はこの奇妙なオカルトをかなりロジカルに描いているので、夢は夢のまま終わらせたい人向きではない。

リアルではないけどリアルな終わりは、「ぇええええええ!!!!」っていう感じ。

 

リングシリーズすごく面白いんですよ。だからね、読む順番は絶対守った方がいいです。「タイド」のネタバレは全てのネタバレです。

そしてこの記事はめちゃくちゃネタバレします

 

 

 

 

 

 

登場人物とあらすじ

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柏田誠二・・・主人公。高山竜司とニ見馨(ループの主人公)の記憶を持つ。予備校の数学教師

川口・・・柏田と瓜二つの人物。水を通して柏田と会話が出来る。

 

高山瑞穂・・・高山竜司の母親

山村志津子・・・貞子の母親

 

春菜・・・土偶についていた蛇に取り付かれ、石化していく

由名理絵・・・春菜の友人、柏田の数学の授業を受ける生徒。春菜のことを柏田に相談する。

 

物語の発端・・・柏田の授業を受けていた理恵が石化していく春菜が小鳥を介して送ってきた暗号を解いてほしいと相談を持ちかける。柏田は暗号解きの名人だった竜司の記憶によって、暗号を解いていく内に、そのメッセージが春菜と理絵を介して自分に送られたものだと気付く。

 

 

 

 

 

竜司とは何者なのか

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 本作では「リング」~「エス」までの伏線を回収している。

私はミステリーをあまり読まないこともあるせいか、伏線の存在に気付かない人間であると自分で思っています。

あちらこちらに散らばっているのだろうけど、そこで立ち止まることが出来ず、「ふうん」と流している気がする。

というのをこの「タイド」で実感させられた。

貞子の弟とか忘れてたから!!

いや、確かに「リング」であったよ。生まれてすぐ亡くなったって書かれてた気がする。そんで「へえ~」で進んでいった。

それが、ここにきて、こんな大事な伏線となっていたとはね!!

そもそも竜司という超人輪廻転生男が私達と同じ人間だといつから錯覚していた・・・?

 

ね、もう分かりました?竜司ってね、貞子の弟だったのですよ。

 

 

 

 

 

壮絶な兄弟げんか

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 とりあえず、始まりである「リング」では貞子の大衆への怒りや憎しみと、天然痘ウィルスの利害が一致して、無差別に人類を呪い殺すという、どちらかというと貞子の怨念がメインのものでした。

それが、「らせん」では貞子のDNAのみの世界、「ループ」では不治の病、「エス」では貞子狩り、とだんだんロジカルな展開に・・・。

結局貞子は何がしたいねん!となった答えが「タイド」の世界。

 

お気づきの方もいると思いますが、あらすじで書いた

高山瑞穂・・・高山竜司の母親

山村志津子・・・貞子の母親

ですが、竜司が貞子の弟なら、竜司の母親は山村志津子ということになります。

では高山瑞穂とは?

そう、高山瑞穂=山村志津子なのです。

 

 志津子は火山に飛び込み自殺したとされていたが、彼女は天涯孤独だった高山瑞穂という存在になりかわっただけなのです。竜司が柏田になりかわったように。

 別人になりすますには、貞子は成長し過ぎていた。だから志津子は貞子を捨て、竜司だけを手元に置いて育てた。

 

貞子の呪いは、母を自殺に追い込んだ大衆への憎しみだと思っていた。だから無差別に人を呪い殺すのだと。

しかし、実際は一人の人間に送られていたのだ。

選ばれし人間である竜司を呪い殺すために、人類全てを媒体にしたのである。

なんという迷惑な兄弟げんかなのだろうか。

たまったもんじゃねえわ!

と思うでしょう。

 

でも、この話がここまで大きくなったのは、我が国の伝記、イザナギとイザナミのときから続いている形態をとっているためなのです。

すごいよね、集団心理って。

刻まれてるよDNAに。

 

 

 

 

大いなる母の元へ還れ

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そもそもは竜司が母を訪ねるというところから始まります。

竜司はこの世界では柏田となっているし、死亡解剖もされて葬式もあげられているため、母に会おうとは思っていなかった。

しかし、道に迷った時、頼るは母。母の元へ還れ。

そこが物語の本当のスタートラインであり、まさに母体であると思います。

 

なんか、これ読むと女性って感情的に生きるべきなんじゃないかと思えてきました。いや、リアリストも強いんですけどね、誰かのために泣くとか、その人以上に悩むとか、その人のために祈るとかね、そういうお金にもならない現実的解決にもならない情感あふれる行動って、後々まで響くよな、って思ったりして。

 

読後、母親の役割が大きすぎて女性って大変だな~って思いました。

まあ、子供を産んでも私は私!って生きる人もいると思いますが、なんかね~なんか・・・「君はいいこ」の「私がこの子にやさしくすれば、この子が他の子にやさしくできる」っていう言葉が真理っていうか、自分に関係する人間や子供、家族、そういう限定された人間以外の人が起こした事件に対して「親は何やってるんだ」とか「なんでこんな子供が育ったんだ」とか、色んな意見が出ると思うんですけど、結局それって大衆に返ってくるんですよね。

 

今タイムリーな話題でこの記事がすごく突いてるなと思うのですが

dot.asahi.com

周りがやんや言っても事件は減らない。

というか、それって更なる憎しみの連鎖になっていく気がしてしまう。

 

貞子の母は社会的にはダメな母親でしょう。

だって、自分の娘を捨てたんだから。だけど、じゃあ全ての女性が子供を産んだ瞬間強く母親に変身できるかって言ったらそうじゃないと思う。

なのに、世間はそれを許さない。

母親なんだから、母になったんだから、子供を産んだんだから。

 

父親だってそう。だけど、貞子の憎しみはレイプした男でもなく、母を捨てた父親でもなく、母親に向かうのです。

 

 

鈴木さんの作品って親目線な部分が多くて、ちゃんと子供や生まれてくる赤ちゃんを守るべきものとして見ているのです。それが強くて悲しい。