深夜図書

不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

人間以前/フィリップ・K・ディック~十二歳までの子供は魂のない人間以前~

≪内容≫

人間と認められるのは12歳以上、12歳未満の子供は人間と認められず、狩り立てられてしまう……衝撃のディストピアを描いた表題作を、新訳で収録。長篇『ユービック』と同一設定の中篇「宇宙の死者」、ディック短篇の代表作として知られる現実崩壊SF「地図にない町」(新訳)、侵略SF「父さんもどき」、書籍初収録作「不法侵入者」、晩年の異色作「シビュラの目」ほか、幻想系/子供テーマSF全12篇を収録する傑作選。 

 

 

 フィリップ・K・ディックといえば有名な作品。

 

「人間以前」もそうなんですけど、ジャケットかっこよすぎる。

読みたいな~とは思ってるんですけど、SFって読めないやつが多くて、短編から始めてしまう。

 

本作は一編が30pくらいでまとめられているのと、読みやすいのでさくさく進むし内容も分かりやすく面白かったです。電気羊もわくわくしてきた。

 今更だけど、SFって哲学的ですよね。ただの娯楽ではなくて寓話要素が強いというか。

一日一遍読むのも楽しそうです。

 

 

 

 

収録されている12作品の紹介

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地図にない街・・・路線図にはない駅までの定期券を求める男が現れた。奇妙に感じてその駅があるという電車に乗ってみると・・・・。

どうして自分の記憶を信用できるだろう。どうして確信できる?

 

妖精の王・・・古びたガソリンスタンドを経営しているシャドラックの元に妖精の小集団が現れる。そこにいる妖精の王は死後シャドラックを次の王に任命するが、妖精たちはトロールとの戦争の真っ最中であった。

「こんなことになるなら、最初から教えといてほしかったな。妖精の王様になるってことが、こんなにー」

 

この卑しい地上に・・・天使に魅入られたシルヴィアは手違いで早々に天国に連れていかれてしまった。彼女が下界に戻ってくることを願うリックの元にシルヴィアは帰りたいと言うのだが彼女の肉体はすでに炎に焼かれて失われていた。

「ねえ、リック。かりに送りかえしてもらえても、わたしは自分のはいる器を見つけなくちゃならない。だって、いまのわたしは、形がないのも同然だから。こっち側の世界には、これといったものの形がないのよ。あなたの見ているもの、あの翼と白い幻も、実は存在していない。かりに、わたしがうまくあなたのそばへもどれたとしても・・・」

 

欠陥ビーバー・・・キャッドベリーという雄のビーバーは、自分を有能だと思っているがその割に報酬はさっぱり。妻のヒルダは精神分析医に診てもらえと言ってくる。満たされないキャッドベリーの元に一匹の雌ビーバーが現れる。その雌ビーバーは三人の女へと変わる。

それなら耐えられる。自分自身の消失には耐えられる。だが、この女たちの消失には耐えられない。

 

不法侵入者・・・地球が支配するシリウス星系に侵入してきたアダーラ人の船の積み荷にはミルク色に輝く球体が乗っていた。巨大な真珠のような宝玉が何千何万と。シュアはその宝石を没収し、その一つは妻にプレゼントしようと顔を綻ばせる。

光にかざしてみると、宝珠は不透明だった。乳白色の焔の中でぼんやりしたかたちがいくつも泳ぎ、前後に揺れている。球はまるで生きているように脈動し、輝いていた。


宇宙の死者・・・遺体を急速冷凍することで半生者となる装置がある世界。ジョニーは上司の遺言通り遺体を急速冷凍したがなぜか失敗。しかし、彼の声は宇宙から届き、テレビ、ラジオ、あらゆる電波を通して我々に訴えてくるのであった。

「しかしジョニー、彼は去っていない。そこがかんじんなんだ。電話とテレビでたわごとをしゃべりまくっているあの存在ーあれが彼なんだ!」

 

父さんもどき・・・テッドは自分の父親が二人いるのを見た。その直後、テーブルについたのはテッドの父ではなく、父さんもどきだった。

「ぼくが中にいるあいだに、あいつが父さんを食べちゃったんだ。それkら、家に入ってきて、父さんのふりをした。あいつが父さんを食べちゃったんだ。それから、家に入ってきて、父さんのふりをした。でも、父さんじゃない。あいつが父さんを殺して、中身を食べたんだ」


新世代・・・早期教育が進んだ世界では子は親の影響を受けないようにロボットによって教育されていた。

「でも、こうすることが必要なの。でないと、あの子は正しい発達ができなくなるわ。これはあの子のため、わたしたちのためじゃない。あの子はわたしたちのために存在してるんじゃないのよ。あの子が心の葛藤に悩まされてもいいの?」

 

ナニー・・・子育てロボットの生存戦争。アップデートされたロボットに壊されていく旧種のナニー。常に最新が生まれる世界で、自分を育ててくれたナニーはどんどん旧種となっていく。

「現在お持ちの機種は、ひょっとすると少々時代遅れなのでは?いまの時代の競争の標準に達していないのでは?あー、つまり、結局、うまく生き残れなかったとか?」


フォスター、お前はもう死んでるぞ・・・誰もが持っているシェルターを持っていないフォスターは皆から白い目で見られている。しかしシェルターの値段は高く、維持するために根本の生活が脅かされる自体に陥っていた。

こういうものだと、われわれはどうしても買わざるをえないんだ。こいつは贅沢品じゃない、近所をあっと言わせるような大きくてピカピカのもの、われわれがなしですませられるようなものじゃなくて。これを買わなかったら死ぬんだ。


人間以前・・・中絶が殺人にならないなら、魂のない状態の子殺しは殺人にならないという道徳が根にある社会。人間に魂が宿るのは十二歳からと法律で決められ、十二歳未満の子供たちは親から身捨てられれば殺される運命にあった。

無力な生き物ほど、よけいに人間が抹殺しようとするのはどうしてなんだろう。子宮内の胎児みたいに。本来の意味での中絶で、今では「出生以前」とか「人間以前」と呼ばれている。胎児は自分を守りようがない。その声を代弁してくれる人間もいない。そうした命が、一人の医者につき一日に百人も・・・みな無力で、無言のまま、死んでいくだけ。


シビュラの目・・・古代ローマから現代に生きるフィリップに言葉が届く。

「この時代には、われわれを補佐して共和国に助言してくれるシュビラがいない。だから、ほうぼうの人びとに目覚めよ、と夢のなかで霊感を与えることにした。彼らはやっと理解しはじめた。支配者である嘘つきの手から彼らを解放してやるために、こちらが身代金を払っていることを」

 

 

やっぱり表題作の「人間以前」が衝撃でした。

これ、十二歳未満の子供たちを殺すだけじゃなくて、中絶が近所の人とのコミュニケーションになっていたり、流行りになっているんです。

気軽に「ねえ中絶しましょうよ!それってとっても素敵だわ!」という世界になっています。

 

「フォスター、お前はもう死んでるぞ」では、自分の命を守るために自分の生活を脅かすくらい高額のシェルターを買わせる社会のおぞましさを感じます。

 

 フィリップのwikiが映画みたいでびっくりしました。