深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】哭声/コクソン~キリスト教を知らない人間が見るとこうなる~

≪内容≫

平和な田舎の村に、得体の知れないよそ者がやってくる。彼がいつ、そしてなぜこの村に来たのかを誰も知らない。この男についての謎めいた噂が広がるにつれて、村人が自身の家族を残虐に殺す事件が多発していく。そして必ず殺人を犯した村人は、濁った眼に湿疹で爛れた肌をして、言葉を発することもできない状態で現場にいるのだ。事件を担当する村の警官ジョングは、ある日自分の娘に、殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く…

 

 

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これは・・・面白い・・・。

韓国の映画ってバイオレンス多くて好きなんだよな。

嘆きのピエタはかなり面白かったし、「息もできない」も相当良かった。めっちゃ口悪いのですが、癖になる。プライムビデオにあったのか。もう一回見よう。ていうか韓国映画って(ドラマも?)かなりドロドロしてるというか、他人との境界線関係なしに

息もできない(字幕版)
 

 ズカズカ入ってくる系なので、そういうの好きな人はめっちゃハマると思います。

愛のタリオ [DVD]

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 これとか相当クルッテル。

これはね・・・これはかなりオススメなのです。愛が憎しみに変わって、でも憎しみが変える愛もあるのです・・・。日本映画でこういうのあるかな・・・私は見たことがない。男に捨てられて復讐する。うん。まあそういうのは日本でもある。でも、日本の場合は私の中では愛ゆえに憎み切れず自分を追い込んで自死→呪うっていう構図なんですが、韓国は生きてる時にぶつけまくる。

 どっちがいいとかじゃなく好みかな、と思います。私はたぶん、相手を憎むだけのエネルギーを注げないです。憎むって相当に疲れるし、相手にぶつけるのも疲れる。こういうこと考えてるから恋愛出来ないんだよな・・・。←唐突な自戒

 

 

 

キリスト教を知らなくても楽しめる

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人々は恐れおののき霊を見ていると思った
そこでイエスは言った

 

"なぜ心に疑いを持つのか"

 

"私の手や足を見よ
まさに私だ"

 

"触れてみよ
このとおり肉も骨もある"

 この「ルカによる福音書」からの引用文で始まる本作。

どうやら、これがこの作品のテーマのようです。

 

キリスト教を書いてる作品ってたくさんあると思うんですが、私が思いつくのはこちら。

とりあえずキリスト教に詳しくない・・・というか祈祷師とかシャーマンについても詳しくない人間が見た感想書いてきます!

 

 

登場人物と世界観

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 ①平和な村の中で、家族による家族殺しが頻発。

しかも犯人はかなり様子がおかしい。

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 ②それとこの村の中で謎のキノコが発生していた模様。犯人の血液からはこのキノコの成分が検出された。事件現場からも大量に発見された。

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 ③しかし周りは「たかがキノコであんな惨殺が?」とキノコを信じてない。その変わりに謎の日本人の噂がジョングの耳に入るようになる。

 

 この世界で起きてることをまとめると

・謎の惨殺事件勃発

・幻覚性キノコがなぜか生えている

・犯人には謎の発疹ができ、その後死亡する

・村人たち恐怖

・よそ者である怪しい日本人が一人いる

です。

 

 

よそ者は日本人だけ。でも日本人VS村人でもない

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 日本人VS村人ならめちゃくちゃ話は簡単だったと思うのです。

 たかがキノコで家族を殺すなんて信じられない(信じたくない)のは、この村が小さな田舎村ゆえにほとんどが血縁関係だからだと思うのです。自分の親族の殺人の理由は出来るだけ自分も他の村人も納得できるものであってほしい。殺人はもちろん最悪な出来事で取り返しがつかない。でも残された家族のこの村での生活は続くし、狂う前の親族を憎んだり嫌わないためにも、殺人を正当化できる理由があるなら、それに懸けたい。それ故、気味の悪い日本人を悪霊とみなすのは、まあ分かる。道徳とか倫理とか、そういうキレイなものを選べるのは、日々の生活が泥臭くない人間だけだと思うから。理想じゃ生きていけないのよね・・・ほんとに。

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 祈祷師は日本人をモノノケであり、怨霊であると言い

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 謎の女は悪霊であると言う。

悪名しか聞かない日本人を怪しんでも何ら不思議はない。ジョングは自分の娘を守るため、祈祷師に頼んで日本人という名の怨霊を退治してもらうことにした。

 

 そう、でも終わらないんですよ

これってなんかに似てません?

私は、魔女狩りホロコーストが浮かびました。

 

 

 

祈祷師と女と日本人はそれぞれ救い主である

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 祈祷師は悪霊は女であったと言い

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 女は自分を信じろと言い、

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 日本人は生き返り、冒頭の「ルカによる福音書」をそのまま喋り出す。

 

 結局のところ、救世主は一人じゃないと意味ないんですよ。

三人もいるから、迷えるジョングは疑心暗鬼でしどろもどろ。誰を信じればいいのだ?!と見てる側もなるはず。そしてそれと一緒に犯人は三人の内の誰なのか?と思ってしまうと、制作者の罠にかかった気がする。

 

 で、じゃあなんで三人もいるのかっていうと、これは宗教戦争のメタファーなのかなぁと思うのです。神様がたくさんいると、「私の神はこう言ってる」「いや私の神はこう言ってる」「いや私のk・・・」と結局相容れないわけです。

 

 だって神様って民を守ってくれる存在なんじゃないのかよ、その為になんでたくさんの人が死ぬんだよって誰もが一度は思ったことあるんじゃないでしょうか・・・。なんのための宗教なんだよって・・・。

 

 

 

信心への痛烈なアンチテーゼ

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 キノコなんですよ。毒キノコ。

 だけどね、人は自分が信じたいようにしか信じない

メディアが取り上げようが、事件現場にどっさり置いてあろうが、血液検査で発見されようが、犯人が食べたと言おうが、もう呪い一拓なんです。

 

 科学が発展しようが、研究が進もうが、信じないんじゃ意味ないじゃん。科学で証明できることと、科学では証明できないスピリチュアルなものの使い分けというか、それをごっちゃにしちゃったら、誰も幸せにならない。

 

 信じる心は大事。だけど、それによって視界が狭くなるのなら、信じる心は自分を追いつめるだけじゃないのか?それは自分だけじゃなくて愛する家族まで追いつめることになるのではないの?

 

 なんかそういう強烈なダメ出しみたいなのをくらった気持ちでした。

哭声/コクソン(字幕版)

哭声/コクソン(字幕版)

 

 たぶん見る人によって色んな見方ができると思います。長いけど飽きずに観れました。すごいことだ。