深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】新感染~ピンチのとき人のことを思いやれる人間とは~

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≪内容≫

ソウル発プサン行きの高速鉄道KTXで突如起こった謎の感染爆発。疾走する密室と化した列車内で凶暴化する感染者たち--そんな列車に乗り合わせたのは、妻のもとへ向かう父と幼い娘、出産間近の妻とその夫、そして高校生の恋人同士…果たして彼らは安全な終着駅にたどり着くことができるのか--? 目的地まではあと2時間、時速300km、絶体絶命のサバイバル。愛するものを守るため、決死の闘いが今はじまる!

 

 話題になってるので見てみた。

 思えばゾンビ映画は初めてかもしれない。これホラーなのかな?個人的にはアクションになります。韓国映画で今まで殴るシーンがなかったのはこれくらいかなぁ。

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「私の頭の中の消しゴム」の記事を読む。

 

ゾンビものは屍鬼を思い出しちゃうな。

「屍鬼」の記事を読む。

 

人を思いやる心に勝る強さはない

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 離婚して離れ離れになった母親の元に行きたいとせがむ娘・スアンを連れて乗った電車は、ゾンビ化した集団の餌食となっていた。

 避難した感染していない人たちの中にはお年寄りもいて、スアンは席を譲ってあげた。しかし、親父はそんな娘を咎める

 

 ・・・ていうか韓国の映画ってほぼほぼ離婚してるか死別してるんだけどなんで?って思ってググったら離婚率世界3位だった・・・。映画って忠実なのね。

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 スアンは親父のことを嫌じゃないけど、何かが間違っているという感覚がある。親父は自分たちだけ解放されるように根回しして別行動に走るけど、スアンはその手をはじく。

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 そんな二人のぎこちない関係に気付くのは妊娠中のソンギョンとその夫だった。以降、この二人がスアンの手を引いてくれるようになる。

 とにかくこのコワモテのアジョシ(おじさんの意)がめっちゃかっこいい。ソンギョンも妊娠中で自分で精一杯なはずなのに周りのことを考えてる。スアンにとって頼れる大人の存在。

 

 地獄絵図と化した新幹線の中で安全な車両にソンギョンとスアンは非難します。

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 そして、この若い学生のカップル。

 基本的にこの映画は父と娘夫と妻彼氏と彼女姉と妹・・・とタッグでドラマが描かれてます。設定が分かりやすいからその分素直に泣けます。

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 アジョシたちは9両目→13両目まで、このゾンビたちに一切かまれずに突っ走らなければなりません。こうやって死に物狂いで娘の元に向かう父親を見て、スアンも心を開いていくのでした。親父の変わりようにも泣けるし、アジョシの強さにも、学生の純粋さにも胸撃たれます。

 とにかく男たちが頑張ってます。

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 感染していない人間は、その疑いがある者や命からがら避難してきた人間を無情にも突き放します。ゾンビになりたくないから。

 だけど、目の前で襲われてゾンビになってしまったのが大切な人だったら、その人の頭や身体を攻撃できるものなのでしょうか?

 

 作中の血はゾンビ化した人たちを殴ったりした血で、後は襲われたときの血です。だから、トータルするとゾンビの血だけでこんなに血みどろになっているのです。

 

 生きるため、感染を防ぐために、ゾンビと戦わなければならないのだけど、それはゾンビになった人が全くの他人でその人の生前を知らないから出来ることではないのかな・・・と思う。

 ゾンビになっていく姉を見ながら、その姉を見殺しにした人達の側にいる妹の選択は、見殺しにした人達がさせたと思うのです。

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 愛する人のためにすることが、結局その人だけじゃなくて周りの人も守ることになったり、自己保身に走る気持ちの強さでその場でマウント取ったり、これはホラーというか人間ドラマだなぁ。と思います。

 

 月並だけど、守りたい人がいたり、守られてきた人はそれができる可能性を大いに秘めているんじゃないかと思う。

 この生き残った人たちは、みんな守り、守られてきました。とくにソンギョンは夫から守られ、更に自分のお腹の子を守りたいと思っています。

 

 守りたい人や守ってくれた人がいたら、自分がどうなっても認めてくれるだろうと思える気がするのです。例え死ぬことになったり重症を負うことになったり、窮地に立たされることになっても、具体的な像が心にあれば、目の前の出来事だけじゃない大きな視野で物事を見れるかもしれない。

 

 だから、人は宗教を作ったのかもしれないな。

 心のどこかで「韓国だし、ただのハッピーエンドで終わらないだろうな」とは思っていたけど、裏切られませんでした。妙にリアルで夢が皆無に近い。容赦なし。