深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】それでも夜は明ける~人は生まれただけでは人ではないのか~

≪内容≫

1841年、ニューヨーク。家族と幸せな日々を送っていたバイオリン奏者ソロモンは、ある日突然誘拐され、奴隷にされる。彼を待ち受けていたのは、狂信的な選民思想を持つエップスら白人による目を疑うような差別、虐待そして”人間の尊厳”を失った奴隷たちだった。妻や子供たちと再び会うために彼が生き抜いた11年8カ月と26日間とは。

 

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 歴史というか過去の社会的な出来事に対して、どう感じたらいいのかな、っていつも思います。現代の常識や道徳で過去を見たら理解からずっと遠いところに行ってしまう。かといってその当時の空気を肌で感じられるわけもなく。

 

 

 

人は生まれただけでは人ではないのか

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 アメリカ南部における黒人差別、及び奴隷に関しての歴史は誰もが多かれ少なかれ知っていることだと思います。

 黒人を売る白人は黒人を家畜呼ばわりする。しかし、問題は黒人と白人だけではなく、黒人が黒人を売ることもあったし、主人公のソロモンは自由黒人という肩書を持っていた。

 

 問題は肌の色が黒いか否かではなく、"生まれ"であり"血"なのだ。犬からは犬しか生まれない。奴隷からは奴隷しか生まれない。

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 本作が生まれたのは、作者であるソロモン自身が自由黒人であったために、高等教育を受けていたからである。当時の黒人奴隷は文字の読み書きがほとんどできなかった。この女主人もソロモンに文字が読めるのかと問い、学なんてなくていい、余計なことはするな、と言い放つ。

  今でこそ、情報が多すぎて迷う、と言えるくらいたくさんの知識なりライフハックなりが溢れてますが、昔は知識は財産であり独占することで自らの地位を固めていました。

 "限定"は価値を高めます。"特別"を生み出し、それは"優劣"へと成長していきます。

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 読み書きができないということは、集団から引き離されれば戻れる術がありません。特別な人間が特別であり続ける為には、知識は限定されていなくてはならない。優劣を決めるのが学だとすれば、それを取り上げることで自分以外の人間を下に置くことができる。

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 さらに、キリスト教の罪に値しない方法として、奴隷を人間として見ることはしなかった。彼らは家畜である。だから罪にはならない。

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 たとえ自分が奴隷に恋して、人間的な営みさえ行っていたとしても、彼らを人間として認めるわけにはいかない。そうすればカトリックである自分は罪を裁かれてしまう。

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 いい年こいて好きな子いじめてんじゃねーよ!

 と、時代とか関係なく猛烈に主人に腹が立つのであった。奴隷パッツィーは主人に好かれちゃったせいで、奥様からは暴行も受けるし理不尽な差別も受けるし、身体さえ洗わせてもらえない。しかも夜を我慢しても嫉妬で狂った奥さんの命で主人にムチで打たれる。

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 パッツィーはそんな日々に希望を奪われついにソロモンに自分を殺してほしいと頼み込むのだった。

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 自由黒人だった頃は、話せばわかる世界にいたのだと思う。

だけど、奴隷になってからは話すことも恐怖の一つになってしまった。もしもここでソロモンが希望よりも恐怖に足を取られてしまっていたらこの事実は誰も知らない歴史の渦に巻き込まれてしまっていたと思う。

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 映画は二時間ですし、ソロモンも大人になってから奴隷になったので12年の月日はあまり感じられなかったのですが、12年って改めてすごくないですか?

 12年・・・自分だったら諦めずにいれたかな?ほんと想像つかない。

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 私はあなたと同じ人間です、と言うのは簡単なのだけど、何をもってして人間なんだろうな・・・とそんなことを思いました。

  誰かが死のうが生きようが、自分が死のうが、それでも夜は明けるよな。最初は希望的なタイトルかと思ったけど、鑑賞後に改めて読むと諸行無常の響きあり。