深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】少年は残酷な弓を射る~大人って子供の空気を読む力に救われてるよなと思う話~

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≪内容≫

自由奔放に生きてきた作家のエヴァは、キャリアの途中で子供を授かった。
ケヴィンと名付けられたその息子は、なぜか幼い頃から母親のエヴァにだけ反抗を繰り返し、心を開こうとしない。やがてケヴィンは、美しく、賢い、完璧な息子へと成長する。
しかしその裏で、母への反抗心は少しも治まることはなかった。
そして悪魔のような息子は、遂にエヴァのすべてを破壊する事件を起こす―――

 

一言で少年が母へ愛を求める話・・・とは言いたくないなぁ。まぁ端的に言うとそうなるんですが・・・。

「子供だから」と思ってると分かりあえないことがあるのかなぁと思う。

大人のずるいなと思うところは「どうせ子供にはわからない」と騙したり嘘をついたりするくせに、自分の触れられたくない部分に関しては怒ったり、悲しんだりすることで踏み込まないように強制するところ。

 

欺瞞を許さない子供

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 子供って親が欲しがってる言葉がわかる・・・というか、親が半強制的に「ね?わかるでしょう?」と自分の意見を静かに押しつけたり、子供が納得していなくても「でも、きっといいことがあるわ」みたいに、会話してるようでほぼ強制なんだよなって思うことが多いです。

 まさに、少年・ケヴィン母・エヴァの会話はそんな感じです。

 子供は「なんかおかしいな?」と思いながらも「まぁいいか、ママが喜んでるし」みたいに流されてくれるんですが、ケヴィンはそうはいきません。

 

 エヴァはケヴィンが生まれても呆然としていて抱きしめているのはパパなんです。ケヴィンは赤ちゃんですが分かっているんです。彼女にとって自分はいらない子なのだと。

 あやすのも自分を愛してるからではなくて、パパに認められたい、世間から母と認められたい、そういう感情からだということを。

 そういう母の弱さを許さない。ちゃんと自分と向き合うまで許さない

 なぜ問題を起こすのか、なぜ言うことを聞かないのか、というのは向き合うきっかけをケヴィンなりに作っているからです。

俺が優等生ならチャンネルを変えているだろ?

という言葉が物語っています。

 

事件はなぜ起きたか

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 学校に立てこもり、無差別に同級生?(被害者は出ていない)を弓で射殺すという事件を起こしたケヴィン。

 エヴァが学校からの連絡で急いでケヴィンの学校に向かうとそこには逮捕されるケヴィンが。

ケヴィンはずっと母をみています。

パトカーに乗せられてもずっと・・・。

母はケヴィンに話しかけることもせず、車で自宅に戻る。

そこで弓が刺さった娘と夫を発見するのだった。

 

 この事件の前に二人が離婚する話を聞いてしまったケヴィン。そして親権は当然俺にあるだろうという父の言葉に詰まる母。

 

 恐らく、この離婚によって母と離されることに対しての抵抗だったのではないかなぁと。

 離婚の原因について「ぼくのせいだね」と言うケヴィンですが、「もう困らせないから離婚しないで」とは出てこない。

 彼にとって母を困らせることが、自分の存在を認められる唯一だったのではないかなぁと思います。彼は母を縛る方法を知っています。それは「」です。

 よく愛と憎しみは紙一重といいますが、母と愛で繋がれないのは分かっているので憎しみで繋がろうとしたんじゃないかなと思います。

 

反抗と愛情は紙一重

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 この作品の前に「キャリー(リメイク版)」を観たのですが、こちらは母と娘でしたので似たようなの選んだなぁと不思議な気持ちになりました。

キャリーはね、クロエちゃんが可愛すぎて微妙でした。

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 あと、あんまり怖くないし、うーん何か評判の割にイマイチだったので色々検索してたらオリジナルの方がすごくいいみたいですね。

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 今回は母と息子ですが母と子って本当に深いんだなぁと思いました。父が表面的にしか分かっていない(見ていない)部分も母には見えるからこそ不安なんですね・・・。

 

どこまでいけば見捨てられるだろう?

どこまでなら許してくれるだろう?

どこまでいっても受け入れてほしい。だけど、信じられないから少しずつ少しずつ反抗していく。まだ大丈夫、まだ大丈夫・・・。

 

と、いうのが母と離されるということになって振り切ったんだと思います。人として最低最悪の犯罪行為、母の愛する父も娘も、キャリアも世間体もぶっ壊しても、それでも自分を受け入れてくれるか。

パトカーの中でふり返って母をずっと見てるケヴィン。「今度こそもう見捨てる?」そう言ってるように思えました。

 

 逮捕後の母の行動はケヴィンにとって予測していなかったと思います。「お前が来るまでは幸せだった」と赤ちゃんのケヴィンに告げたように、「お前なんか産まなきゃ良かった」と言われるのだろうと思っていたと思います。

それなのに何度も何度も少年院に面会に来る母。最後には「なぜ?」と問いかける母。

 

 小さな頃から母の心を読めていたケヴィンです。

 最後の「今はわからない」というのは、母の変化を受け取ったからじゃないでしょうか。今はもうこんな事をしなくても母は自分を見ていたとわかったからなぜあんなことをしてしまったのかわからなくなってしまった。

 

原題は「WE NEED TO TALK ABOUT KEVIN」。私たちはケヴィンについて話す必要がある、ってことですね。

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 子供は親が思うよりずっとずっと深い部分で親を見てる。侮るなかれ。