深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

69sixtynine/村上龍~ウンコに思想があると思うか?~

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 ≪内容≫

1969年、東京大学は入試を中止。そして九州の基地の町にある僕の高校は、ある日バリケード封鎖された。やったのは僕と仲間たち-。自伝的青春小説。2004年公開映画の原作。1987年刊の新装版。

 

え?村上龍だよね?って思うくらい明るくてつい笑っちゃう話。

なんかいいなぁって思った。

大人になる前のお金もなくて力もないけど、情熱とかやる気とか不純な動機とかそういうものだけですっごいことやっちゃうヤツ。

 

びっくりするくらい明るいけど、ところどころに胸に刺さる言葉が入ってる。

これはやはり村上龍の作品なんだな・・・と思った。

 

メスに好かれるという保証がなければ男の子は生きていけないのである

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17歳の男子はこんなこと考えているのでしょうか。

他にも「美女は笑いを止めるけど、ブスは笑いの源である」的なことが書かれている。

美女の好きな男になるためにバリケード封鎖をやろう!とかフェスティバルをやろう!とかありとあらゆる行動に移すが、いざ美女とキスするシーンになると

 

そう言って、天使は、目を閉じた。ブランコが止まった。早く早く早く早く早く早く早くと、心臓が鼓動を打った。僕はブランコから降り、天使の前に立った。

震えているのはひざだけではなかった。

全身が川面で揺れる月に合わせるように震えていた。

息苦しくて、逃げたくなった。

しゃがみ込み、天使の唇を見つめた。

今までに見たことのない不思議な形の生きもののようだと思った。その美しい生きものは、月と街頭の弱々しい光の中で淡いピンク色に息づき、かすかに震えていた。

とても、触れる勇気はなかった。

 

どんだけ世界震えてんねん!!

と言いたくなるくらい全てが震えています。

この気持ち、永遠に分からないから笑っていいのか分からないけど面白かった。下品な話をしたり、ピンク映画観たり、風俗行こうとしたりするくせに、おばちゃんだと元気にならず、美女だと震えて触れず、いつまでも童貞卒業できないヤザキ

面白すぎるだろーが!!!

でも男性ってこういうところありますよね。

純粋で潔癖でロマンチスト。自分の理想に対して「自分なんか釣り合わない」とあきらめたりハードルを下げたりしない。

ブスはブス、美女は美女。

純度が高い。

 

一生、オレの楽しい笑い声を聞かせてやる・・・・・。

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ヤザキ達のバリケード封鎖によって汚された学校を泣きながら掃除する生徒会書記長。

ヤザキを見つけ猛烈に怒りをぶつけてくる。

 

どうしてそんなに怒るのか理解できなかった。

メガネでチビで出歯で十七歳のくせいに白髪がある生徒会書記長、お前は母校の玄関先に落書きされたくらいで泣くのか?

この高校はお前の神殿か?

だがこのての人間が怖いのだ。ものごとを信じやすい。

朝鮮や中国で虐殺や拷問や強姦をしたのはこのての人間だ。

このての人間は落書きで泣くが、中学同級生の女の子が卒業と同時に黒人のちんちんをしゃぶることには心が動かない。 

 

高校生は家畜への第一歩と後に書かれていますが、学校が全て、先生の言うことが全て、教科書で習うことが全て・・・と思っていれば大人から怒られることも殴られることもなく、「善き生徒」の勲章も貰える。

意識的ではなくとも、同級生の変化よりも力のある者への服従の方が大事になっている。

生きてく中で、自分の頭で考えて自分の思想を信じて行動した結果、世間的に「負け組」という烙印を押されて後ろ指さされたとして、一番平和かつ効果があるのは呪うことでも殺すことでもなくて、一生楽しい笑い声を相手に届けることなのだ。

だって耳は閉じられないからね。

これは最高の復讐である。

 

楽しく生きるためにはエネルギーがいる。戦いである。

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私が村上龍を好きなのはこういうことを言うからです。

 

69年当時も、「君たちは無限の可能性を持っている」みたいなことを言う大人が大勢いたが、わたしは彼らを信用しなかった。不特定多数の若者に向かって無限の可能性を説く大人はたいてい嘘つきだ。

(中略)

若者はどんな時代でも無力なものだ。

だからこの『69』を読んだ人は、まず嘘つきの大人たちにだまされないようにしてほしい。

そして若者の特権は「時間という資源」だけだと肝に銘じて、成熟社会をサバイバルしてもらいたい。

 

綺麗事がひとつもないんです。

多分、私も成人式とか卒業式で「君たちは無限の可能性を持っている」的なことを言われました。

その時は「そうなんだ、頑張ろう」って思ったし、可能性は若い方が大きいと思ってる。

だけどなんでもそうだけど、持ってるってことは奪われる可能性もあるってことなんです。

若者がみんな無限の可能性を持っているとして、その可能性の鱗片を見せたら奪う大人がいるんですよ。

だから、可能性は奪われないように戦うんだぞ!くらい言ってくれればまた意味も違ってくる気がします。

 

村上龍は「わたしは、高校時代にわたしを傷つけた教師のことを今でも忘れていない。」と言ってて、こういうところも好きなんですよ。

わたしもこういうタイプなんですが、「根に持つね~」とかイヤな風にしかとられたことがないから、わたしの中で自分のイヤな部分だったんですが、こうあっけらかんと言われると、自分も自分のそういうところを肯定していいんじゃないかって思えてくるんです。

 

わたしもわたしを傷つけたヤツとか、死ぬほど腹立つヤツとかいます。

一生、死ぬまで、全力で生きて、その姿を見せつけてやる。

楽しい笑い声を浴びせ続けてやる・・・。

若いエネルギーにあてられて、あなたも元気になりますよ。