深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】アンチクライスト~女の体を支配するのは女ではなく"本質"なのだ~

≪内容≫

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の鬼才、ラース・フォン・トリアー監督が、ウィレム・デフォーとシャルロット・ゲンズブールを主演に迎えて放つ衝撃作。子供を失くした夫婦の悲しみと苦悩を、過激なセックス&バイオレンス描写と共に描く。

 

この人、本当に人間嫌いなんだな。そういうとこが大好きだし信頼できる所以なのだが。ここまでむき出しだと尊敬の値。

 

魔女

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 旦那と性行為に耽っているあいだに息子が窓から落ちて死んだ。そのことで精神をおかしくした妻だったが、実は魔女の研究をしており、息子の検死結果や写真から息子に虐待をしていた可能性が夫の脳によぎる。

 

 魔女狩りという残酷な処刑がヨーロッパで行われていたことは有名ですね。こちらの本に少し書いてありますが

差別感情の哲学 (講談社学術文庫)

差別感情の哲学 (講談社学術文庫)

 

 どこの国でも自然に触れる者は畏れとして差別されていました。日本では屠殺に関わったり毛皮えを扱うものを穢れとして「えた・ひにん」として迫害していました。ヨーロッパでは、水車小屋の番人など、火や水などの自然や命を扱うものを畏れの対象にしていました。その中で女性というのは子供を産むという生命を生み出す存在として畏れられていたのです。

 魔女狩りと言っても男性も疑いをかけられていたようですが、ペストなど原因不明の恐ろしい伝染病や自然災害などの恐怖を誰かが背負わなければならなかったのです。

 

「三人の乞食」

肛門から子供を垂らす鹿。→悲嘆

自分の内臓を食べる狐。→苦痛

土に埋められた鴉。→絶望

 

 三人の乞食が現れたとき、人が死ぬ。と妻は言う。そう、人は悲嘆ゆえに自殺したり、苦痛ゆえに虚偽にひれ伏したり、絶望ゆえに殺されたりする。この三人の乞食が揃ったとき、夫は妻を絞殺する。

 

自然(ネイチャー)

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すべての女性達の本質
女の体を支配するのは
女でなく 女の本質なの

 魔女狩りについて調べていく内に女の本質が悪魔であるということや自分の中にも悪魔が棲んでいると思うようになった妻

 "自分が"というより"女"の本質として悪魔がいる、と。

 

 それに対して、「君の悪魔は妄想の産物だ」と非現実を認めない夫。

 この後、夫が妻に亡くなった息子への虐待行為を仄かすとそこではしらばっくれるが、夫が離れていくのを感じ殴りかかる。男の本質が悪魔なら、女の本質だって悪魔だという妻。

 その言葉通り、汚い言葉で罵り、夫の股間を強打→足に砥石を嵌めるという残虐な行為もなんのその。その傍らで性行為は依然として続く

 

 この執拗なまでの性行為ってやっぱり悪魔的な行為の象徴としてなんでしょうかね。エデンにいるときは、善悪や知識がなかったわけで、しかしその実を食べたら股間を隠したわけだから、やはり隠すべき部分であり行為なんでしょうね。

 

 二人は、妻が息子と過ごしたエデンと呼ばれる山奥の一軒家に向かいます。

 そこで凄惨な事件が起こるわけです。先ほど、ヨーロッパの魔女狩りの話で「自然に対する畏れがあった」と書きましたが、この感覚がこの自然の中の生活で妻に芽生えたのではないかなぁと思います。

 

 善悪と知識の実を食べてからエデンは畏怖すべき土地になったのではないでしょうか。

 自然が悪魔を呼び寄せる。悪魔は女の本質。

 自然の中には悪魔がたくさん潜んでいるし、その道のりには幾つもの悪魔が現れ、下を見ればエデンを目指してたくさんの悪魔が昇ってくるのが見える。果たしてエデンは神様の住むところなのでしょうか。

これがアンチキリストってことでしょうかね?

もうキリスト教わからん~!!

 

男という名の暴力

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 この夫、話を聞いているようで全く聞いていないようにみえるんですよ。エゴの象徴。聖者ぶった悪魔とも言える。

 「君を助けたいんだ」と言いつつ殺しちゃう夫。

 どっちが悪いとかの話じゃないんですけど、「俺を信じろ」とか「鵜呑みにするな」とか大体命令形な口調がいやだった。だからセラピストは家族じゃないほうがいいんだなぁと思った。だって妻が悪魔的なことを信じてしまうことに対して1ミリも理解ないんだもん。

 理解出来なくても助けたいならもうちょっと深くなぜそう思ったのか考えてもいいじゃん。って思った。

 そういう気持ちがないことを妻も分かっているから、夫が望む妻像から外れた(虐待がバレた)ときに殴りかかったのではないかと思う。

 大体、無理やり「君を愛しているから」とかいう理由で妻を退院させたり、自分がセラピーしたりするからこんなことになったんじゃないかよ・・・とか思う。

しかも、殺した妻を燃やしているし。隠蔽工作?

ここにきてやっと妻の言っていた悪魔説を信じた?遅すぎるだろ?虫がよすぎるよな?

 

 毎度のことながらスカっとはしない映画ですが、分かりやすい映画とかストーリーって苦手なので、こうもんもんとさせてくるラース・フォン・トリアー監督が好きです。お前勉強不足だぞって言われている感も満載ですしね。サイコサスペンスになっていますが、セックスアンドバイオレンス感満載です。

アンチクライスト [DVD]

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カップルでは見ない方が・・・いいですね。