深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】闇金ウシジマくんpart3~本気になれるものを持つのが健全だと思う~

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 ≪内容≫

 

真鍋昌平原作、山田孝之主演による人気ドラマの劇場版第3弾。派遣社員として日々を食いつなぐ真司。彼はある日、ネットビジネス業界のトップ・天生翔のセミナーに参加したことから、人生の一発逆転を懸けたマネーゲームに巻き込まれていく。

 

今回も突っ込みどころ満載の債務者たち。

5万円くらいは自分で働いて用意しようとか思わないのかね。

 

ネットビジネスの罠

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 ネットビジネスで儲ける!というセミナーのために闇金を借りにきた青年

 授業料100万円を両親に払ってもらおうとするが、渡された通帳に記載されているのは95万円。残りの5万円をカウカウファイナンスに借りにきました。

 

 ネットビジネスで億万長者になるつもりだったのに、フタを開けてみれば経営者は借金だらけ。人から羨ましがられるように借金していい時計を買い、いい車を買い、いい生活をする。その生活に憧れる人にセミナーを開催してお金を取るというのが実際の仕事内容。

 

 いま流行り(?)のネットビジネスの裏側はこんなにお金に苦心していますよ~ってお話でした。お金って湯水のようには出てこないんですね。でも他人に対しては「稼いでるなぁ」とか漠然と大きく見積もってしまう。もちろん稼いでいる人はいますけど、楽して稼いでいる人なんてほとんどいないのが現実だと思います。

 

 簡単やお手軽は時間はくれても生きていく上で大切なものを培ってはくれない。 

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 一方、もう一人の債務者であるサラリーマンは既婚ながら、キャバ嬢にいれこみ、会社にくる保険の営業の女の子とも浮気中。同僚の評価を改ざんして蹴落とし、借金は踏み倒す。

  浮気相手からお金を借りてキャバ嬢に送ったラインは、浮気相手に誤送信されていました。

 

 このサラリーマンはネットビジネスの青年と真逆で、野心とか夢はありません。会社にしがみついて、離婚もしないで淡々と生きていくつもりです。キャバ嬢にも浮気相手にも本気じゃない。もちろん仕事も本気じゃない。生きていく中で一つも「本気」を持っていない奴のなれの果て。

 

人を舐めまくって生きてきたサラリーマンは火だるまにされます。人って、平凡な生活では満足できないんでしょうかね。どうしても火遊びしたくなっちゃうものなんでしょうか。ここらへんは中村文則/銃に収録されている「火」という短編で描かれているのですが

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  最初はボヤ程度の火だったのにどんどんどん燃え広がっていっちゃって、しまいには自分では消火できないほど燃え広がって焼き死ぬしかない。

 最初は小さな火が何かを燃やしていく様を美しく感じるのに、どんどんその日は自分に迫ってくる。

人生の中で火遊びは花火だけにしときましょう。そう考えると、夏には思いっきり花火を楽しみたくなってきました。きっと誰にでも火遊び願望はあって、それは親知らずみたいなもので、顔を出す人もいれば一生埋まってる人もいる。

親知らずは抜いちゃえば済むけど、火は一旦ついたら広がるのは一瞬。顔を出す前に、自ら花火で解消させられたらいいなと思う。

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お前そんな悪いことしたの?
自分の命かけて勝負したんだろ
なんもしないよりマシじゃねぇかよ 

 ネットビジネスで痛い目を見た青年は改心して農業ビジネスを始めることにした。心機一転!前を向き始めた青年だったが父の病院へ向かう途中、青年のネットビジネスの商材を買う為にウシジマに金を借りた主婦が「お金を返して下さい・・・!」と道中で土下座してきた。

 一緒にいた青年の母は「謝りなさい!」といい、青年と一緒に謝り父のお見舞いのお金を渡す。取り立てにきてたウシジマはその光景をみて青年に謝る必要について告げて去っていった(もちろんその金は即没収)。

 

 青年は商材を売る為に、お金がないという人にお金を貸してくれとウシジマに頼んだ。その人たちが返せなかったら自分が死ぬからその保険金を受け取れと言って。青年は自分の分は返せたが、返せなかった人たちがいる。

  青年が声をかけなければ、ヤミ金に手を出さずに済んだ人もいるだろう。だけど、借りたのはその人自身だ。断ることや熟考することをせずに、簡単に答えを出すのはあまりに無責任だ。

 

なにもしないでうまい話に乗ろうとするヤツ。

誰かに助けてもらおうとするヤツ。

そういうヤツに自分の命をかけて勝負したヤツが頭を下げる

 

 ネットビジネスに失敗した息子に対して母は「バカなことを・・・」と言います。はたから見たらバカなことでしょう。だけど何もせずに不平不満だけ並べるヤツらよりやっただけマシじゃんかというウシジマ。

  青年はネットビジネスでダメだったからと言って引き込もったり、日雇いに戻ることはしませんでした。新たな事業を自分で考え、新たな道を作り出した。失敗したけど、その中で必死に喰らい付いて思考錯誤したからこそ次の道は自分で作ろうと思ったんだと思う。

 

ウシジマくんにしてはキレイな本作。

これまでの悲惨な最期を迎えた債務者とは違って、未来を感じさせる終わりでした。

趣味であれ、仕事であれ、やっぱり本気になれるものを持つのが健全だと思う。そんなに頑張って何になるの?とか言う人がたくさんいるけど、そのことが結果的に報酬になることが大事なんじゃなくて、自分が真剣に向き合える何かを持つことが大事だと思うから。

 

ただし、その本気は自分自身に対して。

映画「闇金ウシジマくんPart3」DVD通常版

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 人に執着するのは逃げでしかないから。