深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】闇金ウシジマくんFinal~見返りを求めたとき、やさしさは偽善に変わる~

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≪内容≫

真鍋昌平原作、山田孝之主演による人気ドラマの劇場版完結編。闇金融業を営む丑嶋の下を中学時代の同級生・竹本が訪れる。生活するための金を貸して欲しいという頼みを冷たくあしらわれてしまった竹本は、その後、住み込みの仕事を始めるが…。

 

一番の戦いは、悪と戦うことじゃなくて偽善と戦うこと。

しかもその偽善者は少年時代に自分が救われたと思っている男。

 

人は誰でもさりげない優しさとか、偽善に助けられるときがあると思う。

助けられた優しさに立ち向かわなければいけないとき。それこそ本当の戦いだよなぁ。

 

人生は孤独な戦い

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竹本:人が人を見捨てたら心の貧しさはなくならない。

 

 

ウシジマ:簡単に手にした金は簡単に使う
ダメな奴は簡単には変わらねぇ 

 

 カウカウファイナンスにやってきたのは、ウシジマの旧友である竹本

 かつて転校生だったウシジマをクラス全員でリンチ(どんな学校やねん)することになったが、竹本はウシジマに攻撃することが出来ず、逆にクラスメイトに攻撃されてしまう。リンチによって大怪我を負い入院したウシジマだが、復活するとクラス全員にお礼参りを発動

 しかし竹本がケガしているのを見て「仲間に加わらなかったな、嬉しかった」と言う。その後、クラスのリーダーである江崎に頼まれ最強と言われる鰐戸三兄弟を倒しに行く。

 その時に一応死を覚悟(?)したウシジマは、母の形見であるウサギを竹本に預けるのだった。これがウシジマにとって生涯忘れられない恩となる。

 

 そんな恩人である竹本が皮肉にもその時と同じ優しさの代償として金を借りるためにウシジマと再会するのであった。

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プロペ通りィイイイイイ!!!!

 

竹本は偽善者だ

偽善者のクソ野郎だ

自分を犠牲にしたいなら好きにさせてやれ

 

 竹本は顎戸三兄弟が仕切るタコ部屋に送られます。

タコ部屋での悲劇は予告犯でも描かれています。

映画 「予告犯」  (通常版) [DVD]

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  タコ部屋ではケガをしても病院に行けません。その為に痛みに泣き叫ぶルームメイト。少ない給料で諦めたように働くみんなを解放してほしいと竹本は顎戸に頼みます。竹本がウシジマの旧友と知った顎戸は竹本を囮にウシジマをやっつけようと画策します。タコ部屋労働者全員にカウカウファイナンスで金を借りさせて、取り立てに来たウシジマたちを襲う作戦です。

 ウシジマは不信がりながらも、竹本が全員分の保証人になることで金を貸します。

 

 竹本は顎戸たちの作戦を知ると協力する代わりにみんながやり直すチャンスとしてカウカウファイナンスから奪う金をみんなにも分けてほしいと言います。顎戸は了解し竹本たちタコ部屋労働者は分け前を貰うのですが、それを知ったウシジマはタコ部屋労働者にその金を借金返済に充てろ、そうしなければ全員の借金を背負って竹本は死ぬような仕事に派遣されると言います。そのことを聞いたタコ部屋労働者は竹本の命より、お金を選びました。

 

竹本:薫ちゃんお母さんのこと大好きなんだね

 

ウシジマ:当たり前じゃねぇか。竹本、お前だってそうだろ?

 

竹本:よくわからないな 人を好きになる感覚は

 僕は人並みの両親に人並みに大切にされて暮らしてる。
それは息をするくらい当たり前過ぎて自覚出来てないのかも

 そこまで人を好きになれる君が羨ましいよ薫ちゃん。

僕も君みたいに人を好きになってみようかな

そうすれば薫ちゃんみたいに誰かの為に戦える強い人間になれるかな。

 

 竹本はウシジマに、貧しい人にチャンスとして金をくれといいます。だけど、金を貸すこと自体がチャンスを与えることだと思います。誰かに金を借りるっていう事の重大さに対しての意識が竹本とウシジマでは違いすぎる。

  竹本はタコ部屋のみんなを救いたいと言ってウシジマを嵌める作戦に加担します。「薫ちゃんは奪いすぎた・・・」と言って。

 ウシジマは10日で5割という利息をとっています。それは奪いすぎという意見も分かります。だけど、だからといって竹本が奪う権利はあるのか。

 

 竹本がしたのは他人を救うのに他人の金を奪ってそのお金をチャンスだと言って無償で分け与える。

 対してウシジマはタコ部屋のみんなに仕事先を紹介し労働で返せと言うのです。

 

 全員の借金を背負った竹本は一人、死ぬ確率の高い仕事に向かいます。自分の正義を証明してみせると言って。

  大切な友人がクソみたいな奴等のために自らボロボロになっていくのを見るのはとても辛い。だけど、じゃあそこで自分が友人の代わりに金を払うのがやさしさなのか、救いなのか。 

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俺たちは色んな戦いを戦って戦ってギリギリのところで生きのびてこうやって飯食えてんだよ

 

  小さな頃は当たり前すぎて思いもしなかったけど、お金がなきゃ食べられない。その為の戦い方を私たちは選んでいるだけで、サラリーマンも金貸しも戦っています。

  弱肉強食とはよく言ったもので、本当にそうだと思う。

 ケンカが強いとか勉強ができるとかそういう強さではなくて、自分で自分のことを決められる強さ。

 当たり前のように見えて、これが出来ない人ってすっごく多い。「OOさんが言ってたから」「だって儲かるって言ったじゃない」「怖くて断れなかった・・・」「みんながやるなら私も・・・」とかね。

 

 自分で自分の意思を持たなければ食べられちゃうよ。食べられちゃう~!って逃げ込んだ法律事務所だって食い物として見てるし。

 

 幼いころ竹本がウシジマのウサギを預かったとき。

 竹本は見返りを求めなかった。

 人に更生してほしいとか、まっとうに生きてほしいとか、そういう見返りを求めたとき、やさしさは偽善に変わると思う。

 自分が他人を左右出来るような人間だと思う気持ちが少なからずともあるから、信じるって綺麗な言葉を使いながら見返りを求める

 

 人は誰しも無力だし、誰も救えない。

 救うというのは、受け手があなたに救われたと思ったときに実現することだから。自分の人生を精一杯生きることだけが出来ることだと思う。

 その姿を誰かが見て「いいな」とか「自分もこうなりたいな」とか思って変わる人もいるだろうし。本当の救いって、実現されたことさえ知らないことだと思います。「なんかアイツ最近元気になったな~なんかあった?」とか、そういうのかと。

 

自分がどうやって生きていくのか。

闇金の怖さだけじゃなく、生き方や考え方までそれって本当に正しいのか?と問いただすような作品。

映画「闇金ウシジマくんザ・ファイナル」DVD通常版
 

 闇金に限らず借りたお金は返しましょう。