≪内容≫
本の街・神保町を舞台にした極上サスペンス
四十過ぎの翻訳家・吉野解は、かつて自分が下宿していた古本屋の二階で謎の美女、白井沙漠と出会う。粗末な部屋で何度も体を重ねるが、沙漠が解に借金を申し込んだことから歯車が狂い始め…。
再読。
よく分からなかったので、こちらを参照しながら読みました。
あと、この二作。
全く救いのない話です。
お金に使われてしまった人間の話という感じですかね。
タイトルから猟奇殺人とか想像してしまいそうですが、内容はお金です。
お金の奴隷になると、こうなりまっせ。
満足感とお金
「そうじゃ、なくてさ。
ぼくが思うに、いまはあまりに不景気だからさ、お金をかけずに消費したかったら、並んで、一時間もかけて手に入れたラーメンを食すってのが、いちばん手っ取り早いんだろう。
お金では買えない価値のある人生、なんて、たいへんな割にはふんわりしてるものを探求するより、ずーっとらくなんだ。
一時間、ただ突っ立ってりゃあいいんだから」
この物語の主軸である砂漠と解は、自分の都合の悪い場所に来ると思考をぽんっとどっかにやっちゃうんです。
何かを追求するより、目の前に転がってきたものにふわっと乗っかる。
ブラックホールのような砂漠は、あるもの全て喰い尽してそのツケから逃げ回る。
解は過去と決別しようともがくけど、決別するために行ったのが"逃げ"であるため、永遠に逃れられない次元に一人で生きている。
自分を縛るものは殺して前へ進む解。
だけど、本当に自分を縛っているのは人間なんだろうか。
それはあくなきお金への執着に私は見えます。
目的があって必要とするお金は使い道があるけれど、ただ単にお金が欲しいという目的のないお金を求めたら、何が生まれるか。
この小説から、その答えを求めるなら"破滅"です。
お金って、結局誰かのために使わなければ自分を生かしてはくれないんですね。
知識という光
あぁ、この世はほんとうにわけのわからないことばかりだ。そして、人は、わからないものには本能的に恐怖を感じる生き物だ。
知識によって、その闇に強い光を当てることで、乗り越えられる恐怖もある。
光になれたなら、いいのだが。
やっぱり、これに尽きますね。
どれだけ知っているかってことなんだと思います。
お金のことだけじゃなくて、生きていくにあたって必要なのは情報であり知識だと思っています。
世の中のニュースって、本当にいい仕事してるな~って思います。
視聴者に口当たりのいいニュース、もしくは少しだけ不安になるようなニュースだけが流れてる。
本当のことを知ったら不安で生きていけないような事実は公表されない。
私たちはニュースを見てるようで、見たいニュースしか見ていない。
それと同じで、欲しい知識しか得ようとしない。
都合の悪い、耳触りの悪い言葉には触れようともしない。
別にそれでも生きていけるし、何でもかんでも知るなんてことは、この短い人生ではもったいない時間の使い方だと思う。
だけど、自分に関係する知識は持っておいた方がいい。
過剰なサービスが当たり前になってきて、店員の説明や会社のサービスに依存して自分で使うスマホや家電製品の知識さえ持とうとしない人がいる。
困ったら店員に言えばいいや。
インフォメーションセンターに電話すればいいや。
それは、確かにそのときは助けてくれる。
だけど、それ以降の自分の人生には何ら関与しないもの。
自分の人生は自分しか舵を切れないんだから、誰かに任せちゃいけないんですよ。
中島みゆきさんも言っている
お前のオールをまかせるな!!!
合掌。
ばらばらでちぐはぐな死体
なんか、ポップコーンってこう見ると人間の抜けた歯に似ていませんか・・・
生きてるあいだ、ずいぶんちぐはぐで変な人間だなと思っていたけれど、ここでこうしてばらばら死体になってみると、不思議なことに、初めてこの人らしい姿に落ち着けたように見えた。
このばらばら死体となったのは、白井砂漠という33歳の女性なのですが、彼女はあらゆる借金を踏み倒していて、そのお金の使い道は整形費用だったんです。
ばらばらにされた遺体とこの女性を関連付けたのは、豊胸手術のシリコンの製造番号。
彼女の母は不倫相手の運転する車の事故で溺死、父はその後病死。
一人っ子の彼女はだんだんばらばらになっていきます。
どうやったら人間がばらばらになるのかって言ったら、たぶん目的のない欲に支配されたら、ばらばらになるんだと思います。
まず、彼女は全然具体的じゃないんですよ。
芸能人を見て「いいなぁ、かわいいからきっと成功しているんだろうなぁ、だったら私も整形してかわいくなればうまくいくかもしれない」と思う。
ここでまず
自分にとっての成功とはどういう状態か?
うまくいくとはどういう未来か?
を具体的に思い描くべきなんです。
それが自分でも分からない内に闇雲に舵を切るから、船はさまよった挙句に鮫に食べられちゃったんだと思います。
こういう人って、意外に華やかな人が多い気がします。
とりあえず、皆が羨むブランドバッグを持って。
とりあえず、今流行りの女子力を上げて。
とりあえず、リア充に見られるような生活をして。
とりあえず、資格を取って。
とりあえず、流行りの店に行って。
・・・で?何したいの?って人が意外に多い。
しかも、自分自身では何がしたいか分かっていないことを分かっていない。
「今これがやりたいの!」「今これにハマってるの!」で、今しか見えていない。だけど未来へのふわっとした希望は確実にある。
大体なんで分からないのかって、基準が他人にあるからだと私は考えます。
「皆にこう思われたいから」「皆にうらやましがられたいから」そういう中から自分が興味のあるものを選んでいるだけ。
自分のやりたいこと!と言っているけど、それの源泉が他人だから分からなくなるのです。
登場人物、ほぼ全員、自分が大事で生きています。
他人を蹴落とそうとか、そういう足の引っ張りじゃなくて、自分が不利なときに他人を利用するような汚さが始終漂っています。
お金は大事。
だけど、お金に使われちゃおしまいよぅ。
飼い殺された魂は一気に老いる。