≪内容≫
始まりは衝動――身勝手な男が紡いだ美しくも哀しい愛の物語。2004年カンヌ国際映画祭出品作品、2004年イタリア・アカデミー賞2部門受賞。ペネロペ・クルス出演、イタリア中を涙に濡らしたヒット作。
原作はこちら↓
いやー実写っていいですね。
小説では自分の想像力のみで進んでいくので、「?」って思う部分や、なんてクズな男なんだー!と思ったところが、映画ではすっぽり昇華されました。
これはね・・・ティモを愛しちゃうなぁ、クズとは言えないなぁ、って思いました。あぁ、愛って結婚が全てじゃないんだよな、って恋愛映画ってこういうことを言うんだろうなって思いました。
娘の生死と過去の愛
バイク事故で瀕死状態の娘。手術のために坊主に。
原作を読んでいるときは、
彼がなぜ、娘の緊急事態に罪を告白し始めたのか・・・それは愛する娘を救うためなのだ。
イタリアが死んでから生き生きした感情も苦しみも慰めもなく生きていた自分に、また居場所をくれたのはアンジェラだったのだと。
だから連れていかないでくれと、懇願したのだった。
と思っていたんですが、この解釈が映画を観たあとだと大分変りました。
ティモ(主人公の男)は、アンジェラ(娘)をイタリア(不倫相手)との子供としても見ていたんです。イタリアが堕胎した子供をアンジェラに重ねていた。
だから、イタリアに対して「君も一緒に祈ってくれ、俺達の娘が助かるように」という気持ちと、アンジェラに対して「君のもう一人の母親を紹介するよ」という気持ちがあったのかな、と思いました。
アンジェラは、ティモとエルサ(正妻)の子供でもあり、ティモとイタリアの子供でもあったという特別な子供なんですね。だからこそ、ティモはイタリアが死んだあとも生きていけた。だからこそ、アンジェラを失うわけにはいかなかった。
子供が生まれたと報告するとイタリアに「幸せ?」と聞かれてこう答えるティモは、このあと子供のように泣き出します。
主人公のティモは医者で、美人で裕福な妻と結婚し端から見たら超絶勝ち組なわけです。一生困らない食い扶持と一生を添い遂げる美しい妻を持った男なんだから。
それなのに、ティモはジプシーで綺麗とはいえないイタリアに愛を求めるのです。妻のエルサが全然ティモを見ていないから、ティモは居場所がなくて不安なまま放りだされてるだけなのです。
後でエルサが電話をしています。
向かいのマンションの清掃のおばちゃんに向かって大声で「僕は女を孕ませた」と叫んでも、エルサは笑いながら電話をしてて気付かない。
最初の方にもこういうシーンがあります。
ティモが砂浜に文字を書いていると、後からエルサがやってくる。だけど、ティモが何を書いているかなんて何にも気にしないで海に入っていく。
子供が親の気を引きたくて悪いことをするように、ティモは眉を潜めるようなことを大声で叫んだり、こんなに分かりやすく書いたりしているのに、気付かれない。一番近くにいる人に無視されてるような孤独。
ティモのTシャツのI♡イタリー。男性のこういうめっちゃ恥ずかしいまっすぐで隠さないところってバカだなって思いつつ何でも許したくなるから男は絶対バカじゃないと思う。
イタリアは妊娠するんですが、そのとき「男の子よ、そう感じるの」と言います。しかし同時期にエルサから妊娠を告げられ、ティモは悩んでしまいイタリアと連絡を絶ってしまいます。不安に思ったイタリアはティモに詰め寄るも、ティモは冷たい。そこで、イタリアはティモの知らないところで中絶することに決めたのです。
イタリアはお金を持っていません。だからジプシーに頼んで堕胎しました。その手術のせいで、お腹に血がたまり急死してしまいます。
だからこそ、アンジェラには特別な思い入れがあったんでしょうね。もう一つの生まれるはずだった命であるイタリアのお腹にいた男の子への思いを、アンジェラに押し付けてしまう。
もうね、ティモがイタリアを失くしてから何とか日々を過ごしているというのが伝わってくるんですよ。
世間的に不道徳な愛を正しい愛にするには弱すぎたティモ。
妻のエルサの方が肌もきれいで髪もきれいでスタイルもいいし、清潔感もあるし、色白でいわゆる美人。
対して、イタリアは歯は汚いし髪もシラミとかあるし肌も浅黒くてシミもあるし、清潔感とはほど遠い。
でもそれでもイタリアが可愛い。愛しい。愛してしまう。あぁ、女性の可愛らしさ、美しさって見た目だけじゃないなって、愛情から生まれるんだなって思いました。だって、死してなおたった一人で生死を彷徨う娘を見守らなければならない不安と孤独に苛まれるティモの元にイスを持って来て座って一緒に待っててくれるんだから。正妻じゃないから、病院の外で。雨に撃たれながら。
いやー、恋愛映画ってやっぱり海外の方が強いなって思いました。改めて。
日本だと「ばかもの」が一番好きですが
韓国だとこれ↓
アメリカだとこれ↓
これ、結構私の中で上位にくる映画でした。
たぶん、一生心に残るだろうな。
こんな愛があるなんて・・・恋愛ってすごいよ。