≪内容≫
愛のある場所
「鞍田さんは、器用なわりにセックス以外では、ただ抱きしめたり頭を撫でたり、できない」
「そういうふうに、人とつながったことが、ないから。異性だけじゃなく、誰とも」
女をとっかえひっかえしている男の方が欠けてるようにみえて実は必要とされてきた人間で、文句のつけようのないくらい社会的に理想な男が無知ゆえに罪深い。
愛した男は一方的な愛しか信じられない人間で、主人公は愛されたくて必要とされたくていつでも社会的な理想を求めてる。
そんな人たちが織り成すストーリーでした。
上手くいかないのは、セックスだけーではなかったです。
そこが上手くいってたらwin-winだっただけではないのかな、と思う・・・が正直なところ何とも言えないなぁ・・・というのが私の感想です。
まだ私が若かったら、じゃあ結婚すんなよ!とか思うんだろうなーと思うんですけど、こう大人になると、20代後半~30代って全然大人じゃないんだってことを痛感しているので、そうか・・・そういうこともあるよね、みたいに受容してしまいますね。
主人公の塔子は典型的な女性というか、雑誌やネットにあるような女性というか。
まだ二十代半ばだったけど、あの頃が一番不安だった。女友達は誰も結婚していなくて、だからこそ誰が一番先なのか、どんどん追い抜かれていくのか、考え出すと夜も眠れないほどだった。
どんなに高尚な本を読んだり複雑なシステムについて学んでも、一番身近なコンビニの棚は、愛されだのモテだの婚活だの不妊治療だのの文字で埋め尽くされていて、仕事の悩みの特集は大半が白黒ページで、外見も所作も内面もすべて美しくなってモテたり結婚したりするためのカラーページの影なのだ。
愛とは見返りを求めないこと、純粋に与える愛情こそ美しい。そんな文句は、あくまで国の象徴のように生かしながら、その実、結局は「愛する」だけじゃだめで、「愛され」なきゃ意味がない、と堂々と主張している。そんな世論を嫌悪しながらも、その通りだと思った。愛するだけじゃだめ。愛されたい。そして自分はほかの同性よりも魅力的だと錯覚したい。
鞍田さんの言った通りだ。
幸福がなにかなんて、ずっと分からなかった。だから世間的に価値があると言われているものばかりを集めた。
あるよね~「愛され女子はここが違う!」とか「モテ女子はこうやってた!」とかいう特集。
私はこういうのは女性にコスメとか服とか美容に金を使えというメッセージだと思ってしまうので、本気にするヤツはいないだろうと思ってます。
「愛されたい」か・・・。
何回か「これがOOさんの呪いなんだ」っていう言葉が出てきます。
小さい時にかけられた呪い。
たぶん家庭環境に関係なく誰もが一個か二個くらいは持っていると思われる呪い。
私もその呪いの一つが解けたのは二十代半ばでした。
もちろん人とぶつかることで解けた(というか見つけて呪いと認めることができた)んですが、道のりは楽しくはなかったです。
でももしその呪いに気付いてなかったら、本書に出てくる夫の真と同じ、経験と学習をおざなりにして、無知で他人を傷付けていたことだろうと思う。
だから呪いに気付くまでは、私の無知ゆえにたくさんの人を傷付けてきたんだろうなと思います。
人は鏡と言いますが、鏡なら嫌な部分を見ないようにしたって、鏡の中から手が出てくるわけじゃないので自分の都合でどうとでもなるけど、人は違う。
その嫌な部分に向き合わなければどんどん離れていくだけです。
恋愛が素晴らしいとされてるのはたぶん、そういう呪いを解いた後を書いている作品が多いか、呪いが割と軽い場合か、お互いが無視しているか、っていうパターンで呪いのややこしさを見えなくしているからだと思う。
恋愛って全然ポジティブじゃないと本当に思う。
もうめっちゃくっちゃややこしっくてあーもうめんどくせえ!ってなるけど、それを放り出さないで文句言いながら前に進んでくのが恋愛とか結婚なんだろうなあ・・・って思いました。
だから向き合えず逃げ出してしまう人はやはり好きでも結婚相手には選べないのかな・・・とか思ってしまった結末でした。