深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

君の膵臓を食べたい/住野よる~誰かと比べて足りないところがあっても、あなただけの魅力がある~

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≪内容≫

ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それはクラスメイトである山内桜良が綴った、秘密の日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて―。読後、きっとこのタイトルに涙する。「名前のない僕」と「日常のない彼女」が織りなす、大ベストセラー青春小説!

 

話題作を読む。

クラスにいる人気者の女の子と、無口な男の子が病院で出会う。

全く正反対な二人は彼女の病気をきっかけに歩み寄り始める。

それぞれが持っていないもの、持っているものを交換し合う日々はある日突然消えてなくなってしまうのだった・・・。

 

住野よる作品

君の膵臓を食べたい

また、同じ夢を見ていた

よるのばけもの

 

誰もがオンリーワンだよね

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 こういう人生を歩みたかったとか、こういう家に生まれたかったとか、いい容姿が良かったとか、明るくコミュ力高い奴になりたかったとか、生きるって他人と比較すること。

 まだ十代だったころ、本気でお母さんに「なんであややみたいに美人で歌が上手くて肌がキレイで色が白くでぱっちり二重に産んでくれなかったのさ!!!!」と泣きながら訴えたことがあります。

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母は最初は苦笑しながら何言ってんのと流していたんですが、私が食い下がらず号泣しながら喚いていたので「あんた!可もなく不可でもない顔に生まれただけいいと思いなさい!!!!」と本気で怒られました。

 でもそのころは本当にあややになりたかったんです。

あややになれたらどれだけ幸せだろうと思ってたんです。無敵で最強になれると。

でもあややはいなくなってしまいました。

 

www.cyzo.com

こういうの大人になるまで全く気付かなくて。

親はもう知ってるから、芸能人なんてほんとうに大変なのよ、とか言うけど幼い私からすれば楽しさ以外の何も見えなかった。

 

「10代の頃の記憶はほとんどない」 過呼吸、パニック障害…堂本剛を心の病から救ったもの | ダ・ヴィンチニュース

 

 KinKi Kidsなんて見ない日はないほどテレビに出てて、たぶん剛が出てるってだけでドラマも見まくってたし、アルバムも買ってた。

私がまだ記憶のある「硝子の少年」~「僕の背中には羽根がある」の期間はちょうど彼が死にたいと思いながら生きていた時代で、私にとってはKinKi Kids無双時代です。

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 ↑特に大好きだった曲。

 

  こういう事実を知って、私は人が死にたいと思うほどのストレスの中で生まれた作品を見たり聞いたりして喜んでたのか・・・と思うと、生きるってなんだろう?とか思います。

 私がいいなあいいなあと羨んでた人達はとても苦しい人生を歩んでいた・・・彼らが苦しいとき、私は死にたいなんて思わずに生きていた。

 

 

 本書の主人公である僕山内桜良は正反対の人間で、桜良が人と人との繋がりの中に自分を見出すのとは逆に僕は僕だけの世界で生きてきた。

 

 ある時、気づいたの。

 私の魅力は、私の周りにいる誰かがいないと成立しないって。

それも悪いことだとは思ってない。だって、皆そうでしょ?人との関わりが人を作るんだもん。うちのクラスメイト達だって、友達や恋人と一緒にいないと自分を保てないはずだよ。

 誰かと比べられて、自分を比べて、初めて自分を見つけられる。

 それが、「私にとっての生きるってこと」。

 だけと君は、君だけは、いつも自分自身だった。

 

僕は僕で山内桜良に憧れていました。

 

 「僕は、本当は君になりたかった」

 人を認められる人間に、人に認められる人間に。

 人を愛せる人間に、人に愛される人間に。

 

人と人との繋がりの中で生きている人間に生まれる苦悩、自己完結の世界で生きている人間に生まれる苦悩、結局どちら側に属しても苦悩は生まれる。

 

自分と誰かを比べて「あの人はいいなあ」と思う。

自分が持っていないものを持っている人に対して嫉妬や羨望を抱くのは悪いことではないけれど、そこには絶対苦しみがあるんですよねえ・・・。

 

 私がこの作品をいいなあと思うのは、山内桜良が僕に憧れを持ちつつも自分の今までの人生や価値観を肯定して「どっちもいいよね」っていう視点を持っていたところです。

 これが主人公に対して「君の自己完結精神は治した方がいいよ、私が死んだら他のクラスメイト達と仲良くして人と人との繋がりを持ってね」っていうスタンスだったら、う~ん・・・となったと思う。

 

【連載】森博嗣 道なき未知〈第1回〉道を探しているだけで良いのか | 森博嗣「道なき未知」

 

上記コラムより↓

 

成功すると、そこに道ができるけれど、それはほかの者が通っても同じような成功へは辿り着けない。本や雑誌に書いてあるノウハウというのは、参考にはなるものの、それで必ず上手くいくというものではない。どこに問題があるのかといえば、それは「道を探そうという姿勢」にある。積極性は立派だが、自分の道というのは、探すのではなく、自分で築くものだからだ。

 

誰かみたいになりたいって思うのは全く自由です。

だけど、誰かが開拓した道は誰かのものであって、自分の道ではない。

誰かが示した思想や生き方に感化されたとしても、それをどう自分の中で育てていくかが大事なことなのだと私は思う。

 

ありきたりな言葉だけれど、人はオンリーワンなのだと本当に心から思う。

芸能人じゃなくても、クラスの人気者じゃなくても、人から見たらモブでしかない奴でも、その人にしかない魅力っていうものが必ずあると思うから、誰かを認めて自分を否定するんじゃなくて、誰かを認めて自分も認める。

そうして自分にとっての「生きる」っていう道を開拓していく。

みんな違ってみんないい。