≪内容≫
1963年アメリカ。テキサス及びアラバマ州全土に敷かれた緊急捜査網をかい潜って、脱獄犯ブッチ・ヘインズは、8歳の少年フィリップを人質に逃亡を続けていた。しかし、追い詰められ、凶暴性をむき出したブッチは、一夜の宿を提供してくれた男に銃を突きつけるのだった……。
これ冷血が真っ先に思い浮かんだな・・・。
↑は実話なのですが、この映画に出てくるブッチ像は少なからず似てると思う。
子供を支配する親
脱獄犯のテリー(左)とブッチ(銃持ってるヤツ)。
逃走途中でテリーが民家に侵入。奥さんを襲っているところにブッチと息子・フィリップが駆けつける。ブッチは幼いながらも母親のピンチに出向いてきたフィリップに一目置き、転がっている銃を拾わせる。ブッチとフィリップの間に少しだけ柔らかな空気が流れたのもつかの間、奥さんの悲鳴を聞いた隣人が銃を持って応戦にきたのだった。
やむを得ず人質としてフィリップを担いで逃走を再開するが、性欲が満たされなかったテリーはブッチが買物のため席を外している間にフィリップにちょっかいを出す。ブッチはテリーを撃ち殺し、三人の旅が二人の旅となった。
フィリップには帰ってこない父親がいる。そして母親は敬虔なエホバの証人らしく、フィリップには知識はあるけれど経験できないことがたくさんあった。ハロウィーンはその内の一つだった。
ブッチはそんなフィリップに過去の自分を重ねたのか、自分にできること、自分が知っていることを惜しみなくフィリップに与え、彼が自信を失くしたり落ち込んだりしたときには、ユーモア混じりの励ましの声をかけた。
ブッチとフィリップを追う刑事は、ブッチを少年院にいれた過去があった。それはブッチの父親が生まれつきのワルで、ブッチは家にいるより少年院にいた方がいいだろうという刑事の個人的な匙加減だったのだ。
ブッチが捕まったのは車の盗難で少年院に入れられるほどの重罪ではなかった。何も知らないブッチは自分は不当な扱いを得てると感じてもおかしくない。
ブッチとフィリップは警察の目をかいくぐるために、他の家族と接近することがあった。しかしどこの家でも親は子供を暴力か剣幕で支配していた。
ブッチはついにキレる。
大人の力で子供を叩いたり掴んだりするのは想像以上に子供に傷を残すだろう。何気ない「役に立たない子だ」という言葉も。
ブッチはそんな世界に銃を突き付けずにはいられなかった。
フィリップもまた精神的に抑圧されていた。
フィリップの母親は暴力や剣幕を使わないが、彼女の信仰は子供たちをも縛っていたのだった。ハロウィーンだけでなく、綿菓子も、ローラーコースターも知らない8歳の少年の「言えば買ってくれるよ」の苦しみをブッチは知っていた。
だが心底のワルでもない
人と違うだけさ
刑事にとってブッチの親父は根っからのワルだったけれど、ブッチにとってはぶっきらぼうでやさしい父でもあった。"いい"というのは人によって違う。環境や時代で形を変える曖昧なものだと思う。
だけど、暴力だけは環境や時代でもってしても絶対に肯定的にはならないんだ。