≪内容≫
レイキャヴィクの湿地にあるアパートで、老人の死体が発見された。侵入の形跡はなし。何者かが突発的に殺害し逃走したらしい。ずさんで不器用、典型的なアイスランドの殺人。だが、残されたメッセージが事件の様相を変えた。明らかになる被害者の過去。肺腑をえぐる真相。
北欧ミステリーだと超有名なのがこれ。
こちらはスウェーデンでしたかぁ・・・。アイスランドって初めてかなぁ。典型的なアイスランド殺人、と言われてもピンと来ないくらいはじめまして。
アイスランドのDNA
この映画で重要なポイントは
- アイスランドの人口は約30万人
- すなわち街の人達はほとんど顔見知り
- 故に国が国民の家系情報を管理
- なぜなら近親相姦は負の遺伝子を繰り返すから
です。
特に、「街の人達はほとんど顔見知り」が当たり前なので、苗字がありません。
日本の感覚だと「かなちゃんとたくやくんよ」と言ったら「誰の家のかなちゃんとたくやくん?」となるところ、この映画では「あぁあいつとあいつか。」くらい話しが早い。自然すぎて観てる側も「あああいつなのね」とかなっちゃうマジック。
人口30万人って東京ドーム6個に国民全員が収容できちゃうわけだから、30万って結構少ないんですよね。日本の人口は約一億。
映画ってほんと国が出ますね。
さてこの物語は、とあるアパートで死んでいる男が発見されるところから始まる。主人公の刑事は事件現場を調査する。行き当たりばったり的なアイスランドの典型的なずさんな事件・・・そう思ったのもつかの間、一枚の写真が刑事に隠された負の連鎖を伝えるのだった。
写真の人物・ウイドルはすでに何年も前に亡くなっている少女だった。
刑事はウイドルの家族を調査するも、ウイドルの父親は不明、母親はすでに他界していた。そこでウイドルの叔母に接触したところ、ウイドルの父親は殺された男であることが分かったのだった。
消えたウイドルの脳、そして殺された男・ホルベルクの脳の腫瘍。そしてホルベルクの死と時期を同じくして亡くなった少女の死因は遺伝性の脳の病だった。
この人口わずか30万人の国の、一つの街で、同じ遺伝性の病を持っている人間が三人もいる。しかも彼らは全て別々の家庭にいた。
彼らの家族で系列としてこの病を持っている者は見つからなかった。
つまり、どこかで誰かの遺伝子が組み込まれたのだ。
ウイドル、ホルベルク、そして少女、この三人のほかにもう一人同じ遺伝病を持っている人間がいた。最後の保因者だ。
その人物は一人で真実に辿り着き、そして絶望の淵に立つこととなった。
今まで父親だと信じて疑わなかった男とは血が繋がっておらず、自分の遺伝子学的な父親は強姦魔であらゆる場所で負の遺産を撒き散らしていた。
その結果、生まれてきた彼の妹にあたるウイグルは死に、自分の娘も、その遺伝病によって幼くして命を落とした。
最悪な父親が死なずに生きつづけ、負の遺産を拡散し続け、そして自分も父親と同じく負の遺産を背負ったまま発症することなく生き続けている現状への絶望。
人は清く美しく生きたいと願うものだ。だからこそ刑事は自分の娘が街の誰もが知っている売春婦、と言われていることを苦々しく思っていた。
しかし、今回の事件をきっかけに柔軟な考えに傾いていく。
この映画、全体を通してトーンも暗いし内容もヘビーで救いがないので、観る人を選びそうですが、私はこういう映画大好きです。
この物語に込められたメッセージはかなり響きました。キレイなことばかり求めると結局生きることができなくなる。期待しない、とは別問題で世の中も人間も割と汚いもので出来ている。