
≪内容≫
月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、大物実業家の違法行為を暴く記事を発表した。だが名誉毀損で有罪になり、彼は『ミレニアム』から離れた。そんな折り、大企業グループの前会長ヘンリックから依頼を受ける。およそ40年前、彼の一族が住む孤島で兄の孫娘ハリエットが失踪した事件を調査してほしいというのだ。解決すれば、大物実業家を破滅させる証拠を渡すという。ミカエルは受諾し、困難な調査を開始する。
昔、スウェーデンで映画化された方の三部作を見て大好きになったキャラクターが、リスベット・サランデル。
ていうか、今三部作ぜんぶprimeで見れる・・・。
孤独な天才ハッカーのリスベット。
いつか原作読みたいとは思ってたんですが、既刊が5まで出てて合計10冊。これは読む時間取らねば・・・と敬遠してた。だけど、ついにこの年末年始の9連休中に読み切りました・・・!
ほんと、噂通り面白かった。
女を憎む男達
この物語、最初に必ずスウェーデンの女性が男性から被った被害についての短い一文から始まる。
原題は「女を憎む男達」。被害を受けた女が男を憎むのではなく、男が女を憎んでる。この被害を受けた女を体現するのが主人公・リスベット・サランデルです。
彼女はある事情から後見人が必要な社会的弱者として国から扱われている。実際はミルトン・セキュリティという警備会社で優秀な成績をおさめており、自活できる給料と、自制心、財産管理力はあるのに、国から決めつけられた弱者というレッテルによって自由に生きることができない。
そのことを逆手に人は彼女を攻撃する。
もう一人の主人公、ジャーナリストのミカエルは不正を見抜いて糾弾することに情熱を燃やしているが、権力によって不正はもみ消され、自身が罪を背負うこととなる。
そんな彼に届いた依頼が二人を結びつける。
40年前に行方不明になった16歳の少女ハリエットを殺害した犯人が一族の中にいるはずだ。だからその犯人を見つけ出してほしい。というのが依頼内容だった。
二人は協力して過去の情報を集め、事件の真相に迫る。
リスベットはもちろんミカエルのことを最初から信じていたわけではなかった。ミカエルもハッカーとしてこまやかな個人情報まで知りつくすリスベットに対して苦い気持ちを持っていた。
しかしミカエルの人間性はリスベットが求めている人間像と一致していたのだった。
たとえばぼくは銀行世界の悪党について書くとしても、そいつの性生活に触れることはない。ある女が小切手を偽造したと報じるとしても、彼女がレズビアンだとか、飼い犬とセックスしたがってるとか、そんなことは書かない。たとえそれが真実だとしてもだ。悪党にもプライバシーを守る権利はある。他人の生き方を攻撃するのは、その人を傷つけるとても安易なやり方なんだ。わかるかい?
リスベットももちろん情報として持ってもプライバシーを公表することはなかった。なぜなら彼女自身が自分の生き方を攻撃され続け傷つき閉口したからだ。
ハリエット失踪(依頼主は殺人と思っている)について調べていくと、犯人は大量に女だけを殺してきたことが分かった。
それだけじゃなく人種差別、隠蔽、そういったものまでこの物語には含まれている。
この物語の面白さというのは、やはり作者の情熱から来ていると思う。社会的強者によって踏みにじられなかったことにされてしまう者に焦点を当てるのがジャーナリストのミカエル。そして彼を助けるのが社会に抹殺された女リスベット・サランデル。
素晴らしいのは物語の軸が全くブレないところにもあると思う。こういう熱い作品に出会えることは読者として大きな喜びの一つだと改めて思いました。