
≪内容≫
『シーラという子』の続篇。「あんたは自分があたしの人生をよくしたと思ってるんでしょ?あんたのおかげでよけい悪くなったんだよ。うんとうんと、何百万倍も悪くなったんだよ!」情緒障害児教室の教師をやめてセラピストとなった著者トリイが目の前にしているのは、髪を派手なオレンジ色に染めた14歳のパンク少女だった。八方手をつくして探し、7年ぶりにようやく再会したシーラは、かつてふたりのあいだに築いた信頼関係や教室での楽しかった日々などまったく憶えていないという。彼女が少しでも打ち解けてくれることを願い、夏休みの間だけ精神科クリニックで手伝いをしてくれるように誘った。やがてシーラの口から、まだ7歳にも満たないころから連日のように受けていた性的虐待の事実が明るみに…真の癒しを見出すまでのシーラとトリイの葛藤を描いた感動のノンフィクション。
前作の続き。
だよなぁ・・・と思う。私の感想というか、不安は的中した。
受け入れて、許して、そして手放してやること
あんたがあたしにやったことは、すべて最初からそのつもりだったんだよ、トリイ。あたしはあのときまで、自分の生活がどんなにひどいものだったかってことを知らなかったんだよ。そこにあんたがやってきて、突然まったくちがう世界があるってことを教えたんだよ。それもあんたはそのつもりでやったんだ。すべてを仕切ったんだよ。あんたは糞からあたしを作りあげて、それでいてあたしにお花のようにいい匂いがするって思いこませたんだ。
前回トリイは苦しみながらもシーラがこの別れを受け入れて強くなってくれると思っていた。
今回やっとシーラの居場所が分かったトリイは大きくなったシーラと再会することになり、彼女の成長を喜ぶがシーラはトリイと別れたあの日からまた苦しい日々を送っていたのだった。
本書は大きくなってトリイの生徒ではなくなったシーラとの個人的なやり取りの記録でした。トリイのスクールのお手伝いとして、昔の自分のように親から捨てられた子供の面倒を見るシーラでしたが、シーラ自身がまだまだトリイに甘えたい気持ちがあり、母親への執着も捨てきれずにいました。
シーラは母親を探すために広告を出し、返ってきた返事を信じて消えてしまいました。だけどそれは真実ではなく、シーラは絶望のあまり何もかも終わらせてしまいたいと思います。
いったいぜんたいあの人たちはどこにいるのよ?お母さんはどこ?そういうことをちゃんとやってくれるお父さんはどこにいるの?あたしのためにそういうことをしてくれる人は、どうしていつもトリイのような人なの?なんであたしの親は一度もあたしの面倒を見てくれないの?あたしってそんなに悪い子なの?
迎えにきたトリイの車の中でシーラは涙を流します。
シーラはお父さんと暮らしていましたが、父親は相変わらず薬とお酒にハマっていて度々警察にしょっぴかれる。そのたびにシーラは里親のところに行ったり施設に行かなきゃいけない。
母親が消えた理由も分からないし、トリイが教員ゆえにクラスが終わるときに解任されてしまった理由も当時のシーラは幼すぎて理解できなかった。
シーラはずっと執着していた。
・いい子になれば愛してくれる。
・家事ができれば愛してくれる。
・迷惑かけないし、文句言わない。
・勉強だってできる。
だから、今度はお母さんも受け入れてくれる・・・と。
本書ではシーラが過去の傷を振り返り、怒ったり泣いたりしながら手放すお話です。
どうすればよかったというのよ?あのまま彼女を放っておけばよかったの?あのひどい状態の子を、もっとひどい状態のなかに放ったまま、何もしなければよかったの?
トリイのやり方はシーラ本人だけでなく他の人にも批判されてしまう。
結局のところトリイはシーラの親でもなければ親戚でもないわけで、他人なわけですよね。だから親族以上に彼女に愛を与えてしまうことは、彼女にとってもトリイにとってもかなり危ないことなんだと思います。
私はだから危ないから愛さない、という考えになってしまうんですが、トリイはほんとうに強いなぁと思って読んでました。
やっぱり愛するって命がけだよなぁと思う。だからこそ簡単に人を愛せない。