≪内容≫
体をほとんど二つに折り曲げ上目づかいにこちらを見る姿が異様な、まるで幽霊のような8歳の少女ジェイディ。教師トリイとの交流で少しずつ心を開いた彼女が語り出したのは、陰惨な性的虐待をするカルト集団の存在だった。
事実は小説より奇なり。を地で行くお話。
これがノンフィクションだなんて信じられない(というか信じたくない)し、もしフィクションだとしても十分怖い内容でした。
今まで読んだ中で一番怖い虐待でした。女の子の虐待は性的なものがすごく多いんだなぁと改めて思いました。
当事者と第三者の壁
あたし、よそに連れて行かれたくない。アンバーとあたしとサファイアがみんなばらばらのところに入れられるの、いやだ。お母さんやお父さんに会えなくなるのもいやだ。だれかが牢屋に入れられるなんて、いやだ。どれもいや。ただこういうのをやめてほしいだけだよ。あたしが頼んでるのはそれだけなんだよ
幽霊のような子・ジェイディは身体を折り畳むような姿勢で過ごし、誰とも口を聞かず、選択性無言症と言われていた。トリイはあっさりとジェイディの口から言葉を吐き出させてしまったが、それは悪夢への扉でもあった。
ジェイディは自分は幽霊になれると言い、更には性的な知識も豊富でクラスメイトの性器に噛みついたり、そういうような行為を匂わす発言もしていた。それは彼女が情緒障害を持っているからだとしても、そんな行為は妄想では生まれない。
トリイは彼女が性的虐待を何者かから受けていると確信する。
ジェイディはぶつぶつひとりごとをいいながら、粘土のうんちが入った小さな鉢を取り上げた。「さあ、あんたたちにはこれからこれを食べてもらうからね」粘土のかけらを手にして、彼女はそれを人形の口に押し込んだ。それでも満足できないと、今度はそれを目や鼻など顔じゅうになすりつけた。「食べなさい。食べるんだよ」と彼女は命令した。
彼女の奇妙な行動と、丸にXという儀式めいたマーク、幽霊という言葉と6歳に特別な意味があるという発言は、どこかオカルトの匂いが付きまとう。
トリイたち大人は彼女の言っていることが、妄想なのか現実なのか理解し兼ねた。
それでも彼女が傷付いていることは明白で、両親と離れたくないと言いつつも家に帰りたがらないジェイディからはSOSがはっきりと読み取れた。
それでも、ジェイディが言うように「だれかが牢屋に入れられるなんて、いやだ。どれもいや。ただこういうのをやめてほしいだけだよ。」という願いは、虐待があってもなくても叶えられない。
虐待があれば、だれかが牢屋に入れられるし、虐待が認められなければジェイディの苦悩の日々は続くのだ。
こんなことを8歳にして願わなければならないというのはどれだけ辛いことだろう。自分の頭で想像することで現実を生き延びるということは、どれだけ苦しいことなんだろう。
- 作者: トリイヘイデン,Torey L. Hayden,入江真佐子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1998/06/01
- メディア: 単行本
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彼女が身体を折り畳むようにする理由をトリイが聞くと「わたしの中身がこぼれ落ちないようにだよ」と返ってきた。この言葉だけで彼女が色んな何かから啄まれているのを感じる。小さな子猫をたくさんのカラスが啄むシーンが私の頭の中に浮かんだ。