
≪内容≫
自閉症と診断された九歳の少年コナーは、ぬいぐるみの猫を決して手放さず、奇妙な言葉をつぶやく。やがてその言葉は、彼の母親の恐ろしい過去を掘り起こしていく…圧倒的筆致で贈る驚愕の物語。
「ビューティフル・マインド」をすでに鑑賞済みだったことが、大いに役立った気がする。
人の想像力がどこまで現実に影響を及ぼすのか、それがどこからが現実でどこからが夢だとするのか・・・・そういったオカルト的な内容でもあります。
絨毯の下にいる幽霊は現実か妄想か
「幽霊がいっぱい。ひそひそ、ひそひそなにかいってる。ネコには幽霊が見えるんだ。ネコがいってる。『ここに幽霊がいる。ここのじゅうたんの下に男がいる』って。ネコには見えるんだ。ネコは知ってるんだ 」
自閉症と診断された9歳の男の子のカウンセリングを担当していたジェームズは、その母親であるローラと休日にマクドナルドで偶然出会う。
普通は患者やその親族と診療所を離れて会うことはないけれど、ローラが有名な作家であり、また素晴らしいストーリーテラーであること、そして何より患者のコナーの謎の言葉「ネコ」と「幽霊」の謎を解くために、ジェームズはローラの出生を彼女の口から聞くことを選ぶ。
わたしがいいたいのは、現実って何なの、ってことなのよ、パパ。このところ、わたしはずっとそのことを考えていたの。現実ってことはそれに触れられるってことなの?それがすべてなの?もしそうだとしたら、手で触れられないものは現実ではないってことになるの?でも、そうだとしたら、愛はどうなるの?それとかほかの星の周りをまわっている惑星は?そういうものは現実ではないの?神様はどうなるの?
※太字は私がつけました。
ローラは里親の元で育ち、そこの本当の子どもでありローラの兄となる人物に性的虐待を受けたことから、父親の元に戻って生活をするという複雑な幼少期を過ごしていました。
ローラの心のよりどころは、森の中で暮らすトーゴンという強く聡明な女性でした。ローラはいつでもトーゴンに会うことができたし、トーゴンの森の中の生活から学ぶことがたくさんありました。
しかしそんなローラの姿は端から見ると、友達もいなく、部屋にこもりっきりでとても健康な状態には見えなかった。トーゴンもトーゴンが暮らす森の中の決まり、家族、食事、そういったものはもちろん他人には見えない。
「人がぼくたちと同じようなやり方をしないと、その人はぼくと同じじゃないんだと考えがちだよね。あの人たちは同じ気持ちじゃないんだとか、同じことは考えないんだとか。きみはこれってほんとうだと思う?」
ローラは人から「おかしい」と言われながらも、自分なりにトーゴンの世界と向き合い、そこが本当の世界ではないことを自覚していましたが、ローラ以外にトーゴンの存在を信じる人間が現れたのです。
そこからローラは幼少期の悪夢ともう一度向き合わなければならなくなったのです。
今度の人質は猫ではなく人間でした。だからこそ彼女は父親に連絡して逃げたときのように逃げることができなかった。
そもそも現実というのはどこで、空想と言うのはどこなのか?物理的に場所的な意味合いで。同じ景色が見える世界を現実と言うのだと今のところ私は思っている。だから二人で違う景色が見えたら、それぞれが違う場所にいるってだけで、どちらかが間違ってる世界にいるわけではない・・・と思ってる。