深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

マディソン郡の橋~初恋のときめきを永遠に閉じ込める方法は、成長した相手に再会しないこと~

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≪内容≫

屋根付きの橋を撮るため、アイオワ州の片田舎を訪れた写真家ロバート・キンケイドは、農家の主婦フランチェスカと出会う。漂泊の男と定住する女との4日間だけの恋。時間にしばられ、逆に時間を超えて成就した奇蹟的な愛―じわじわと感動の輪を広げ、シンプルで純粋、涙なくしては読めないと絶賛された不朽のベストセラー。

 

名前だけ知ってる名作シリーズ。

この本のすごいところは、子供は子供目線で見れるし、大人は大人の立場で見れるから、大人は子供の自分と大人の自分、両方で感じることができます。

 

愛は両刃の剣

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とても不思議なんだけど、あなたはわたしを支配している。わたしは支配されたくなかったし、そんな必要はなかった。あなたにもそんなつもりはなかった。それはわかっているけど、そうなってしまった。わたしはもうあなたの隣に、この草の上に坐っているわけじゃない。あなたのなかに閉じこめられているのよ、喜んで囚人になったんだけど

 

片田舎に住む主婦のフェランチェスカは夫と二人の子供に恵まれ、日々の生活を営んでいた。写真家のロバートはその田舎にある屋根付きの橋を撮影しにやってきた。二人は出会った瞬間、お互いに何かが芽生えるのを感じ始める・・・。

 

ロバートがやってきたのは、子供も家を出て、夫は共進会に出かけていたため、フランチェスカは一人留守番をしていた。

ロバートの野性的で捉えどころのない魔術的な魅力に忘れていた女性の目覚めを感じたフランチェスカとロバートは、夫が帰ってくるまでの4日間を共に過ごす。

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自由な旅人のように、あらゆる場所に行って写真を撮る生活を送っているロバートと、小さな頃に描いていた夢とは全く異なる土地に骨を埋める人生を決めたフランチェスカ。

ロバートはそんなフランチェスカの思いを知り、また自分も彼女を愛しているため、一緒に旅に出ようと誘うが、フランチェスカは断り、それから二人が出会うことは一度もなかった。

 

もしもいま出ていったら、わたしはひどく自分を責めるでしょう。そして、そのことで、あなたが愛してくれた女とは別人になってしまうにちがいないわ

 

そして、もしフランチェスカが一緒に着いていったら、彼女が愛した孤独で自由な最後のカウボーイであるロバートは消えてしまう。

フランチェスカが隣にいたら彼はもう孤独でも自由でもないのだから。

 

愛してるから、一緒にいると嬉しい。 でも、愛してるから一緒にいると相手を失う。

 

初恋のときめきを永遠に閉じ込める方法は、成長した相手に再会しないことです。二人がお互いを永遠に愛し続けるためには、出会ったときのままでいることが必要なのだと思います。彼は孤独なカメラマンで、彼女は片田舎の主婦のまま。

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"愛"とはいろんな形があり、色んな解釈があると思うのですが、この二人の愛は芸術的な愛で、生活感のある愛ではないと思います。

ボヴァリー夫人(字幕版)

ボヴァリー夫人(字幕版)

 

ボヴァリー夫人はロマンスを求めて生活を失い、命を失う。

私たち誰も、生きていないと人を愛するってこと自体できないじゃないですか。だけど、生きるだけじゃ満足できない。生きることに慣れると「何のために生まれてきた?」などと考え始めてしまう。でもロマンスに走れば生活は崩れてく。

生活が崩れれば、愛したはずの相手は愛し始めた当初とは変わっていく。つまり愛もどんどん形を変えていき、当初の輝きは薄れ続ける。

愛は人生を輝かせもするが、破滅への種にもなる。だから多くの人はこの二人のように両想いじゃなくても、心のどこかに大切に閉じ込めている愛があるんじゃないのかな、と。それを秘かに磨き続けながら日々暮らしているんじゃないかな、と思うのでした。