深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】百瀬、こっちを向いて。~子供が子供っぽくいられるのは当たり前のことではない~

≪内容≫

 人気作家・乙一の中田永一名義による原作を、元ももいろクローバーの早見あかり主演で映画化。冴えない高校生活を送るノボルは、幼馴染みの先輩・瞬から頼まれ、隣のクラスの百瀬とつき合っているフリをすることになるが…。共演は向井理ほか。

 

 乙一さんの映画で一番感動したのはこれで、すごく感動した記憶がある。

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  だけどその一方で、乙一といえばホラーでもある。

 なんでこの人はこんな気持ち悪い物語も描きつつ、こんな美しい物語も生み出せるんだろうか・・・。収録されている「エヴァ・マリー・クロス」は今でもトラウマ!

 3人の大人と1人の僕

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  大人になった僕、ことノボルは作家デビューを記念して学校で講演会を行って欲しいと依頼され懐かしい母校に帰ってきた。

 最寄駅に降り立ったノボルに声をかけたのは、あの日4人で出かけたうちの一人、美しく聡明で学校のマドンナ的存在だった神林先輩だった。

 ノボルはずっと秘めていた疑問を彼女にぶつける。

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 この物語は、主人公・ノボルの命の恩人である幼馴染みの先輩・瞬浮気相手である百瀬とノボルがカモフラージュのために付き合うフリを頼まれる話である。

 瞬は百瀬とも関係しながらマドンナである神林先輩と付き合っている。神林先輩は呉服屋の令嬢で非の打ちどころもない女性であった。

 加えて瞬もスポーツ万能で学校の人気者である。

 

 それに比べてノボルは冴えないその他大勢の一人だったし、百瀬の家は貧しかった。

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  これ、全員高校生なわけだけど、本当の意味で十代の子供、という立ち位置を得ているのはノボルだけです。

 世間的なカテゴライズは皆高校生なわけだけど、瞬は死んだ父親の意志を継ぐために合理的な世界に足を踏み入れてるし、百瀬は機能しない父親のために必死で働く母親の代わりとなって小さなママとなっている。

 神林先輩は資産家の令嬢としてノボルたちと同じ高校に通いながらも外の世界とは切り離されており、それにたいして反抗する気持ちもない。

 

 よって、この4人の中で素直に傷付いたり、悲しんだり、感情を自由に動かせるのはノボルしかいない。本人はそれに対して劣等感を持っているっぽいけれど、適した時間に適した年齢を過ごせない苦しみは後になって訪れます。

 

 百瀬は、瞬に「先輩、こっちを向いて。」と言えないんですよね。言ったら先輩に迷惑をかけるって自制してしまう。だけど、ノボルはそれを素直に百瀬に言うことができる。人が発する言葉には容姿や生まれや特技なんて関係ないその人本人が隠されている。

百瀬、こっちを向いて。

百瀬、こっちを向いて。

 

  百瀬、子供でいいんだよ。わがまま言っていいんだよ。だって君はまだ子供なんだから。