深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】クリーピー 偽りの隣人~家に鍵がかかっていても心の城砦が開け放たれていれば、誰でもそこに踏み込むことができる~

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≪内容≫

 あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です。
未解決の一家失踪事件×奇妙な隣人家族
犯罪心理学者が迷い込んだ2つの≪謎≫に隠された真実とは-?

 

 これ観たとき怖かったし割と記憶に残っていたんですが、もう一度観ると、また真剣に見ちゃうほど・・・不謹慎だけど面白いんですよね・・・。でも不謹慎というか、こういうの面白がってしまう自分を好きにはなれない。

 

一寸先は地獄

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 これは・・・原作の方がいいかなぁ?と思いました。なぜかというと、主人公夫妻が原作では週末婚みたいな設定で奥さんの一人の時間がものすごく多いんです。対して映画版では、夫婦が一軒家に越してきて旦那の仕事中は妻は一人だが、旦那は昼に帰ってくることもあり、あまり妻の孤独な時間が想定できないのです。

 

 映画版では、夫が家にも仕事を持ち帰るため同じ家にいながら主人と家政婦のような寂しい夫婦像を描いていると思うのですが、物理的に夫がこんなに近くにいて、しかも毎日不規則な時間に帰ってくる状況で隣人が手を出せるか?という部分が個人の想像力や経験に委ねられている気がします。

 

 登場人物は、

主人公・高倉(西島秀俊)

妻・康子(竹内結子)

隣人・西野(香川照之)
娘・ (藤野涼子)

 が主で、高倉家の引っ越してきた家の隣に住んでいたのが西野家でした。引っ越し当日、高倉と康子はもう一つのお隣さん・田中家に挨拶に行くが「近所付き合いはしていない」と冷たく断られてしまう。

 その足で西野家に挨拶に行くが西野は不在で、翌日康子が一人で西野家に挨拶の品を持って行き、そこで初めて西野と顔を合わせたのであった。

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  挨拶の品とは康子の手作りのチョコレートであり、受け取った西野は康子の料理上手な面をほめ、感謝する。家に一人で料理ばかりしている(たぶん)康子は気を良くし手作りのシチューのおすそ分けにもう一度西野家を訪れるのだった。

 

 こうして夫が知らない間に、西野と康子の心的距離は近付いて行くのだった。

 西野は「奥さんが目障り」と高倉に告げたり、高倉家の家に入り、食事会をしたり、高倉夫婦をちょいちょい試していく。

 「奥さんが目障り」という警告を高倉が康子に言っていないから、翌日康子はシチューを持って行くし、このことで、高倉夫婦の絆が弱いことは西野に丸分かりである。

 加えて、康子は全くの他人の手作りのお菓子を挨拶の品にもらう相手の気持ちを考えられないほど、誰でもいいから自分を認めてもらいたい、自分に興味を持ってもらいたい、と主観的な目が強く、客観的に判断する能力が薄いと考えられる。

 

 西野はそういう言葉ではない行動の部分で、見た目には活発で明るい良妻な康子の孤独と、大学教授で愛妻家然としているが洞察力が低く、異常犯罪にしか興味のない冷酷な高倉の一面とを目ざとく見抜いて行く。

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  こういうのを対岸の火事と大半の人は思うと思う。無差別事件ならもしかして?と思うかもしれないし、明日は我が身と思うかもしれない。

 エリートでイケメンな夫と料理上手で美人で明るい妻、そしてふわふわの犬。

 まさに画に描いたような幸せそうな夫婦が、なぜこんな怪しげな男に狂わされてしまうのか、全く理解が出来ないように思う。

 

 だけど、この映画、やっぱり俳優陣の演技がものすごくその理由を教えてくれる気がします。とくに狂わされていく竹内結子の目の変化。あの明るい声と、眉毛を上下に動かすくらい顔全体を使って話す活発な表情がどんどん濁っていく様は、人には表には出さない孤独な面や、誰かがほんの少し揺さぶるだけで崩れてしまう弱さがあることを提示しています。

 個人的に黒い家と似たような怖さを感じる作品でした。

クリーピー 偽りの隣人
 

  なんかあまり評価が良くないんですが、確かに「エッ!why!?」となる部分は多数あります。すっきりする部分はたぶん1ミリもないと思う。これは、どうやって一つの家が乗っ取られ、人間が変容されてしまうのか、そういう犯罪心理的な部分を見るものかな?と思います。犯人は健康な人間を前にしたら撤退すると思います。でも揺さぶってみていけそうな行く。その引きと押しの絶妙さが、やはり常人ではない異常者なのだと思いました。怖いね。