深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】凶悪~全員を救いたいなら、誰も愛さないってことと同じだよ~

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≪内容≫

 史上最悪の凶悪事件。その真相とは?
ある日、雑誌『明朝24』の編集部に一通の手紙が届いた。それは獄中の死刑囚(ピエール瀧)から届いた、まだ白日のもとにさら
されていない殺人事件についての告発だった。彼は判決を受けた事件とはまた別に3件の殺人事件に関与しており、その事件の
首謀者は“先生”と呼ばれる人物(リリー・フランキー)であること、“先生”はまだ捕まっていないことを訴える死刑囚。
闇に隠れている凶悪事件の告発に慄いた『明朝24』の記者・藤井(山田孝之)は、彼の証言の裏付けを取るうちに事件に
のめり込んでいく……。

 

 クリーピー偽りの隣人のときも思ったけれど、一番近くにいる人を大切にしてほしい。博愛主義は美しいけれど、それは果たして人間にできることなのかな?そこんとこはエス/鈴木 光司の中のエロスとしての愛について書かれていたけれど、人間にアガペーはできないから、それをしようとするとそれと真逆の出来事が起こるんじゃないかな。

 

救う=殺すジレンマ

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 記者の藤井(山田孝之)は、上司からデスクに手紙を送ってきた死刑囚の須藤(ピエール瀧)に会って話を聞くように命じられ、彼と面会する。

 そこで語られた一連の事件とさらに未解決となっている事件の黒幕である「先生」の存在について知らされる。

 藤井は事件が闇深く、まだたくさんの死者が誰に知られることもなく冷たい地に埋められていることを知り憤慨するが、上司からは「ネタとしての期限が切れた」と調査の打ち切りを命じられる。藤井は独断で須藤との面会を重ね、須藤の証言の裏を取り、ついに未解決事件の告発と先生なる人物・木村(リリー・フランキー)の逮捕を実現したのだった。

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  事件を追う藤井の家庭は妻と認知症の母親との三人生活だった。妻は母親の介護に疲れ果てており、母親から妻への暴力をがっちり目撃するも事件を追うので精一杯と我関せずの藤井だった。

 母親を介護施設に預けることは良心が咎めるため拒むが、妻は叩かれても目を背けることで対応していく。

 事件の記事を読んだ妻から告げられた言葉は悲しかった。

 

あたしずいぶん前からお母さんのこと殴ってる
もう罪悪感も感じなくなっちゃった
お母さんが死ぬのをどこかで待ってるの

 

自分だけはそんな人間じゃないって思ってたんだけどね

 

  自分が動くことで、世間に気付かれずに死んでいったたくさんの人たちを救うことができる、犯人を裁くことができるんだ、と家庭を顧みなかった結果、家庭に暴力が生まれていた。妻から母へ。母から妻へ。

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  告発された事件の一つ「日立市ウォッカ事件」は、5000万の借金をつくった父親の保険金を狙って家族が先生の父親殺害の計画に加担し、大量のお酒を飲ませ事故死に見せかけた事件だった。

 藤井の告発により、家族たちは逮捕された。

 

 先生はあくまでも「家族からの依頼」と言う。もしも、藤井の家に漂ってきた不穏な母と妻の匂いを先生なる人物が嗅ぎつけてきたらどうだろう?

 これは全く他人事ではないのだと、本当の事件はそういう日常生活のラインに起きていることなのだということを改めて突きつけられる。

凶悪

凶悪

 

  母親を救いたいという気持ちが妻を見殺しにし、無残に殺された人たちの魂を救いたい気持ちが須藤と木村を殺したいという気持ちに変わる。個人的に「死んだ人の魂なんてどうだっていいよ。あたしは生きてるんだよ?」っていうのがね、私は基準だと思うんですよ。須藤の働きで救われた人もいるかもしれないけれど・・・それは社会を動かす大きな事で、真の犯罪者が裁かれたことは正しいんだろうけれど・・・でもめでたしめでたし、とは言えないのでした。