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書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

アントニーとクレオパトラ/シェイク・スピア~今も昔も他人の痴話げんかほど耳が痛いものはない~

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≪内容≫

 シーザー亡き後、ローマ帝国独裁の野望を秘めるアントニーはエジプトの女王クレオパトラと恋におちる。妖女の意のままになったアントニーはオクテイヴィアスとの大海戦に敗れ、クレオパトラ自殺の虚報を信じて自殺する…。多様な事件と頻繁な場面転換を用い、陰謀渦巻くローマ帝国を舞台に、アントニーとクレオパトラの情熱と欲情を描いて四大悲劇と並び称される名作である。

 

 前作の書評はこちら

ジュリアス・シーザー (新潮文庫)

ジュリアス・シーザー (新潮文庫)

 

 かっこよくね、ブルータスをやってやりましたけれどもけ・れ・ど!

なんかほんと何なの?って感じ。私はこの作品に地味に期待しまくっていたせいか、「ぇええええええええ!」って感じがぬぐえない。なんだろうな。あまりに恋愛してるからかな。信じろや、を毎回つっこみで使えると本気で思った。

 

超リアルな恋愛劇

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 とりあえず、前回シーザーをぶっ倒したブルータスをぶっ倒したアントニーは、ローマ帝国を統治する三人のうちの一人になった。

 武勇伝ありありのアントニーは前評判は良かったものの、なんと今はエジプトにほぼいるというではないか。

 エジプトの女王クレオパトラに惚れこみ、ローマ帝国を守る一人であるにも関わらず異国の女性にほだされるとは!ゆゆしき問題ですぞ!と、めっちゃ簡単にいうとこんな感じで話は始まります。

 

 そんな中ローマに危機が訪れる。アントニー不在の中、アントニーの妻と弟は必死に闘うが連敗し妻は死んでしまう。妻の訃報を聞いてやっと重い腰を上げたアントニーだったが、アントニーに正妻がいることを知っているクレオパトラはもう二度とアントニーが帰ってこないのではないか、やはり自分は遊びで正妻が大事なのね!と情緒不安定になる。

 

 しぶしぶローマに帰ったアントニーを待ち受けいていた二人の党首のうちの一人、オクティヴィアスはアントニーとの絆を強固にするため、自分の姉を新たな妻に。つまり政略結婚なわけだが、その報を聞いたクレオパトラは苦しみ最悪の結果へと繋がっていく・・・。

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このとおり、おれはアントニーだ、だが、この姿をいつまでも保っていることが出来ないのだ。おれが戦をしたのはエジプトの女王のためだった、それを女王はーあれの心はおれのものとばかり、そうではないか、あれにはおれの心をあずけてあったのだから、そのおれの心がおれのものであった間は、万人の心を掴んでいたおれが、今はそれもすっかり失ってー 

 

  悲しいのは、アントニーとクレオパトラが愛し合っていながらも世論に巻き込まれて疑心暗鬼になりお互い憎しみ合い死んでいくことです。

 もう大人になると、こう・・・打算なしに好きになることって難しいのかな・・・とか思っちゃう。潔く死ぬことが美じゃないんだけど、死に際まで嘘ついたり騙されたりで、まあ人間臭いっちゃあ人間臭い。

 

 でもハムレットのオフィーリアが苦しみを一身に背負って死んでいく姿に心を撃たれた人が大半で、個人的にシェイク・スピア作品とはそういう芸術的なものだと思っていました。

ハムレット (新潮文庫)

ハムレット (新潮文庫)

 

「ハムレット」の記事を読む。

だからここにきて「えーーー!めっちゃ現実的な中年の男女じゃないかーーーーー!」という悲しみ、いや落胆?

 

 現実の恋愛って引用文のアントニーの言葉のように、自分を保つことができなくなっちゃって情けないかっこ悪い自分になってしまうことあるよね。

 綺麗に別れるとか、ケンカしないとかもあると思うけど、二人の呆れるくらいの口ゲンカの内容たるや・・・耳が痛い!昔も今も痴話げんかって他人から見ると恥ずかしいものなんだなぁ・・・。