深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】渇き。~出会う男すべて狂わせる娘と、出会う女すべて殴りつける親父~

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≪内容≫

 元刑事のロクデナシ親父・藤島昭和(役所広司)に離婚した元妻から連絡が入った。
成績優秀なうえ、容姿端麗、学園のカリスマでもある女子高生の娘・加奈子(小松菜奈)が失踪したという。
自分のせいで全てを失った男が、再び“家族"を取り戻すべく、姿を消した娘の行方を追うことに。娘の交友関係をたどって行く先々で、語られる“知らない加奈子像"に戸惑う藤島。
想像を超えて肥大し、踏み入れるほどに見失う娘の正体。
やがて藤島の激情は、果てしない暴走をはじめる―。

 

 この監督、「告白」のときは、原作者の湊かなえ氏のイヤミスっぷり故の胸糞だと思ってたんですが、この作品見てから「あれ?実はこの監督やばいんじゃね?」と思ってきましたw日本で一番ヤバイのは園子温監督で、過激バイオレンスなら三池監督と思ってたんですが、前者二人が本当に血汗涙みたいな作品を描くのに対して、中島監督は女子っぽい華が入るからよりグロテスクでサブカルな・・・ヴィレッジバンガードみたいなとこありますね。映像がオシャレ。キャスティングもオシャレ。

 さらにこのエログロバイオレンスに「劇薬エンターテイメント!!」という言葉を嵌めたのが誰だか知らないけれど最高にセンスいいな、と思う。これほんと、エンターテイメントです。

 

超人な車とオヤジ

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 この映画、笑わせに来てるのか怖がらせに来てるのかいまいち分かりかねるというか、まあ「嫌われ松子の一生」もそうだったんですけど、このちぐはぐな感じがたまらない魅力になっているというか中島監督の個性なのかな?と思います。

嫌われ松子の一生

嫌われ松子の一生

 

  「嫌われ松子の一生」の記事を読む。

 

 んでほんとに間がないというか、スピード感がありまくるのでこれもはやアクション映画じゃね?カーアクションじゃね?と。パッケージや予告では「離婚して大分会っていない娘を追いかける疎遠のクソ親父は本当の娘の姿を知る・・・本当の娘の正体とは一体!?父と娘の因縁とは・・・?」みたいなサスペンス臭を醸し出しているくせに、中身はアクション×バイオレンス×アニメという最高のだまくらかし感。監督は、観客を列車に乗せてただ猛スピードで最終地点まで運ぶ。その間、客は誰にも感情移入することができず、ガタガタゴトゴトと激しく揺さぶられながら最後に窓から唐突に放り出される。このSっぷり・・・嫌いじゃない!!!!

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  まるで「出会う男すべて狂わせるガール」な娘・加奈子は売春の斡旋をしていたんですね。ですがこういうのって大体ヤのつく人たちが絡んでいるので、加奈子ももちろん目をつけられる。この話、どっかで読んだことあるなぁと思い返したらこれでした。

製鉄天使 (創元推理文庫)

製鉄天使 (創元推理文庫)

 

「製鉄天使」の記事を読む。

  この物語でスミレという女の子がいるんですが、確か彼女だったな。彼女も美しくて不良仲間のマドンナみたいなマスコット的な愛されキャラだった。

 

 加奈子がほんとうに自殺した緒方の復讐のために売春組織をぶっつぶして乗っ取って自分に好意を寄せる同世代の子供体をシャブ漬けにして顧客に売りさばいていたのかは正直分からない。私的には加奈子を崇拝する松永の言葉より二階堂ふみ演じる遠藤の

 

分かんないよ加奈子の気持なんか

 

あいつは誰にも優しくて残酷で

 

あいつにめちゃくちゃにされたのに

なんで

なんでみんな加奈子に夢中になるの

 

  の方が信じられるのでね。

 なんでみんな加奈子に夢中になるの、の回答としては、加奈子が対面する相手の本人も気づいていない意識の奥深くにある欲望というか願いというかそういうものを見つけることが出来て、更にそれを取り出してヨーシヨシヨシってしてあげるからじゃないですかね。

 そうやって自分の中から引っ張り出されたモノを誰かが大切にしてくれると、それが間違っていない、正しいものなんだ、表に出てきていいものなんだ、っていう自信になる。でも自分で取りだすっていう過程を経てないから、歯止めが効かないノンストップ状態。もちろん加奈子はヨシヨシしただけでブレーキも責任も持ってない。

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 親父は基本車移動なんですが、他の車に追突してケガを負わせることはもちろん拉致ったり同乗者に手を挙げたりやりたい放題。

 しかも自分自身は血だらけで殴られまくりなんですが不死身か?ってくらい動く。更にひかれたり追突されたりする妻夫木演じる嫌な刑事も不死身か?ってくらい次のシーンにふつうに登場してくる。なんでやねんwと思うしかないw

 

 あと、親父は何で上下白の綿だか麻だかのスーツなんだよ!血が目立つやろがい!!っていうつっこみどころもあります。

渇き。

渇き。

 

  高校生の時のクラスカーストって意味分からない謎の地位だし頂点にいるリア充の力ってたぶん下層からの憧れか権力者の独裁力。確かに意味分からん魅力を持った人間(オーラがあるとかカリスマ性?)って正直いるかもしれないけど会ったことないから分からない。でも会ったことはないけどなぜかいるはずと思っている。この魔法は何なんだろう?

 「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」の記事を読む。