深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】禁じられた遊び~一人で死にたくないけれど誰も死んでほしくないジレンマを抱える5歳の少女~

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≪内容≫

1940年6月。
5歳の少女ポーレットは、ドイツ軍に占領されたパリを逃れて田舎道を両親に連れられて逃げていたが、両親は機銃掃射で死んでしまう。
1人になった彼女と出会った農家の少年ミシェルは、彼女を自分の家に連れ帰る…。

 

 小学生の時ピアノの発表会でこの曲弾いたけど、まさかこんな悲しい映画の音楽だったとは・・・。でも、これはこういう曲なんだよってあらかじめ言われてたらトラウマになってたかもしれない。こういう戦争映画って本当に20代半ばまでは見れなかったから。

 

生きるための遊び

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  ドイツ軍の一斉射撃から逃げる最中にポーレットが飼っていた犬が逃亡した。犬を追いかけて銃撃の下を走るポーレットを追いかける両親。ポーレットは犬を抱きとめたが両親は銃に撃たれ死んでしまう。さっきまで元気に走っていた犬もポーレットの腕の中で死んでしまった。

 一人ぼっちになったポーレットは犬を抱きながら川沿いに進み、そこで少年ミシェルと出会う。ミシェルは突然やってきた身なりの良いお嬢様にどっきり。家の中に招き入れポーレットの悲しみに寄り添う。

 ミシェルは目の前で両親を失ったが、両親は放っておいて犬だけを手にやってきた。大人たちには両親は死んだ、と言うがどこか上の空である。ポーレットは犬を埋めようとするが、そのとき犬が一人ぼっちなことに気付き、一緒にお墓に入れるお友達をミシェルと探し始める。

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  田舎で暮らすミシェルにとって「死」は身近なものであった。飼っている動物はもちろん家の中で死んでいく人間もいた。しかしお嬢様であるポーレットにとって「死」はものすごく遠いところにあってまだまだ先にあるはずだった。

 犬と一緒に埋葬するための他の生き物を探すということは、他の死んでいる生き物、もしくは殺す生き物が必要になる。そのことまで理解してミシェルは協力するのだが、願っているポーレットは犬は一人ぼっちにしたくないけれど殺したり死ぬのは見たくない。

 

 ミシェルは「え?」って思うし、ポーレットだって「え?」と思う。お互いやりたいことは同じだけれど現実的思考のミシェルとファンタジー思考のポーレットはどんどん噛み合わなくなっていく。

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  ポーレットの無茶なお願いのせいでミシェルは散々痛い目に遭うんだけど、それを差し引いても戦争孤児となったポーレットは悲しいです。

 両親や犬だけでなくそれまでの生活全てがあまりに突然無くなってしまったから、ポーレットは現実について行けず、かろうじて納得できた犬の死だけを受け入れたんだろうと思います。

 そして、犬を一人ぼっちにしたくない、十字架を盗んで立派なお墓にしたい、というのは無意識の内に自分が大切にしていたものを他の人も大切にしてくれるかどうか確認したかったのではないかな、と思います。

 

 ミシェルはそんなことはおかまいなしに近い年齢のかわいい女の子が来てかっこいいところを見せたい、助けてあげたいという一心で協力していたのでしょうが、そのおかげでポーレットは現実と向き合うようになったのではないかな、と思うのです。

 ミシェルを通してやっと現実が追いついてきた。もうママもパパもいなくて、永遠にミシェルとも会えない世界に生きているのだということが。

  禁じられた遊び=戦争なのは明白で、埋葬ごっこに耽る子供たちを大人が叱れるんかいな、ってね。5歳でこんな遊びに触れるような世界悲しすぎるよな、ほんと。