≪内容≫
銭湯・幸の湯を営む幸野家。しかし、父が1年前にふらっと出奔し銭湯は休業状態。
母・双葉は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら娘を育てていた。そんなある日突然、余命2ヶ月という宣告を受ける。その日から彼女は「絶対にやっておくべきこと」を決め実行していく。
【家出した夫を連れ帰り家業の銭湯を再開させる】
【気が優しすぎる娘を独り立ちさせる】
【娘をある人に会わせる】
その母の行動は、家族からすべての秘密を取り払うことになり、彼らはぶつかり合いながらもより強い絆で結びついていく。そして家族は、究極の愛をこめて、母を葬(おく)ることを決意する。
泣きすぎて劇場で見てたら恥かきそう、と本気で思った。感動ドラマものだと分かって見始めたけどそれ以上だった・・・。
愛が結ぶ他人たち
タイトルは最後の最後で「あ~そーゆーことだったのかぁ・・・・」となります。現実はこの映画のようにさっささっさと問題解決はしないと思いますが、なんせ120分で終わらせないといけないのでね、そこはご愛嬌として見るのをお勧めします。
父がフラっといなくなって母一人娘一人で暮らすある一家。娘・安澄は学校でいじめに逢っていて学校に行くのを渋る。母親はそんな娘の背中を押しながら自分も働きに家を出る。娘のいじめは日に日に悪化していったが母は娘の休みたい、には断固としてダメを貫く。
そんなあるとき、母は勤務先で倒れてしまう。緊急搬送された病院で母は余命宣告を受けるのだった。
母は探偵を雇い、消えた父親を探し当てます。そこには父と娘が暮らしていた。母は二人を家にいれ四人での生活が始まります。娘の母親は迎えに来るからね、といって彼女を置いたっきり帰ってこなかった。そんな経緯があったから彼女は本当の母親を探しに出かけてしまう。
自分が死んだあと、子供たちが生きていけるように銭湯を中心として人を集めていく母。ヒッチハイクで出会った少年や、妻を亡くした探偵と探偵の小さな娘、それからもう一人の家族、母は最期の力を振り絞って血の繋がらない人々を愛で持って繋ぎ合わせていきます。
その不思議な力は他人には効くけれど、本当に血が繋がった唯一の人には届かない、というのがこの映画の土台かな・・・と思ったり。
いじめや、捨て子、育児放棄、パチンコ中毒、行き場をなくして彷徨うヒッチハイカー、等さまざまな問題を抱えた人たちも物語を支えるのは、娘役の杉咲花だと思う。
この子、「夜行観覧車」でもいじめられて家で暴れる娘を演じていて、そのときも「すごい子だな」と思ったんだけど今回もこの子がしゃべる度に泣いてしまうし、心が揺さぶられてしょーがない。
特にいじめられてるのに母が「逃げちゃダメ!」と娘を叱ったときの
なんにもわかってないよ
あたしには立ち向かう勇気なんてないの
あたしは最下層の人間だから
おかあちゃんとは全然違うから
っていうシーンがね、ほんと言葉に言い表せないというか、実際にいじめに遭っている子供とその現場や空気を想像できても肌で感じていない大人とのギャップを如実に表しているというか・・・。
母の気持ちは分かるし正論だけど、娘の辛さもまた辛くて、私だったら子供の問題だろうが介入しちゃう気がします。正解は一つではないと思うけれど、自分が死んだ後に何か事件が娘に降りかかっても「守ってくれた人がいたんだ、自分のために声をあげてくれた人がいたんだ」と思えるような過去を作ってあげれたら、二回目は自分で立ち上がれるかな、とか思ってしまうので。一回目は助けてあげたいのです・・・甘いかな。
いじめだけでなく、安澄には背負わなければいけないものがたくさんあったし、それが母の死によって猛烈なスピードで降りかかります。意味不明なまま突然ぽつんと置かれる辛さ、驚き、悲しみ、それでも前を向かなければいけないという現実、そういうのが彼女の演技全体で伝わってきてそれもまた泣けてしまうのでした。
誰しも強くない。安澄も逃げ出したくて言えなくて苦しんでいたけれど、映画の終わる頃にはとても16歳とは思えないほど地に足ついてます。人って愛されて信頼されると強くなるんだよな。きっと。