≪内容≫
フリーターの姉・葉月と女子高生の妹・呼春は、母の佐和と3人暮らし。14年前に女の人を作って家を出て行ったきりの、父の記憶はほとんどない。ある日、佐和から「離婚したお父さんがもうすぐ死ぬから会いに行って、ついでにその顔を写真に撮って来てほしい」と告げられる。
離婚すると子供が可哀相という意見があるけれど、私の友達で離婚して父と疎遠になった子は「いや~ケンカするくらいなら別れてほしいから全然辛くないよ」と言ってるし、もう一人はずーーーーっと単身赴任のお父ちゃんだからほとんど一緒に暮らしてないって言ってて、ほんと人の数だけ家族のカタチがあるよね。
親の役割は躾でなし
母と姉妹二人の女三人で平和に暮らす一家。父は子供たちがまだ幼い頃に外で女を作って出て行ってしまった。母は慰謝料も貰わずに女手一つで二人を育て、離れ離れになった父と娘たちはそれから二度と会わなかった。
しかし、突然母親からもうすぐ死ぬ父親に会いに行って写真を撮ってきてほしいとデジカメを渡されて放り出される姉妹。渋々電車に乗ってはるばると父の住んでいる街にやってくると、そこには父が余所で作った家庭の息子が迎えに来て父は死んだと告げるのだった。
一方、自宅で訃報を受け取った母は喪服に着替え式場に行こうとしていたが、娘からのメールで行くのを取りやめる。
高校生のときから恋愛して結婚した夫の裏切り。許せなくてもどうしても気になる存在であった。それに離婚するときに話したこともあり母は娘たちに全てを託し、旅をさせたのである。
逃げ道・・・あったよね いつも
うん・・・あった
実は父が母を捨ててまで選んだ女性は父を捨てて失踪しており、子供である息子は一人取り残されることになる。
しかも親戚の中には二人がやってきた目的を遺産相続狙いと決め付け一筆書かせるなど、妊娠中でいっぱいいっぱいなのかもしれないが思いやりがあるとは思えない人間であり、その人たちの中で育つ異母兄弟のことを心配に思う二人は、もしも何かあったら自分たちに連絡して、というのだった。
私たちが逃げ道を作ってあげる、と。
二人は寂しい思いこそあれど、いつでも逃げることができた。その場所を作ってくれたのが母であり、また母の逃げ道も子供に繋がっていたのであった。
思いやりとか繋がりってものは社会では教えてもらえない。もしも教えてもらったという心があるなら、それは自らが求めて得たものであり授かるものではない。大きく成長した娘たちの物語。二人が父を恨まずに思いやりを持てたのは母の力が大きいんだろうな。