≪内容≫
世界でもっとも恐ろしいホラー小説。その称号にふさわしい作品が、『シャイニング』。予知能力を持つ5歳の少年と両親に降りかかる怪異。ホテルの浴槽に、廊下に、鏡に、忌まわしいものが潜む。怪音がどおんどおんと轟き、青い炎がREDRUMのかたちに燃え、ぶるるるる・がちゃんとエレベーターが動き出し、パーティーの始まりを死人が告げ、惨劇の幕が開く。
IT/イット “それ”が見えたら、終わり。も今年の冬だしどうした!?キング熱が凄い・・・今年の11月は水曜日有休取らなくては・・・!
続編から見ても楽しめるとは思うけれど、前作見ていた方が倍楽しめると思うので、ぜひぜひシャイニング、映画もしくは原作見て見てください☆
恐怖はすぐそこに
シャイニングより
物語はジャックという物書きが冬の間だけ閉鎖するホテルの管理人になるところから始まる。冬期は雪に閉ざされる場所に建てられたこのホテルは冬の度に管理人を募る。水道管やらなにやらが凍って使い物にならなくなってしまうわないように、誰かがこのホテルの中で生活する必要があるのだ。
しかしホテルの従業員は誰も名乗り出ない。冬期は地元に帰ったり休暇を楽しむのだ。知人の紹介でこの仕事にありついたジャックは、妻ウェンディと息子ダニーを連れてひと冬を越すためにホテルにやってくるが、閉ざされた世界と広すぎるホテルの中でジャックは疑心暗鬼に陥っていく・・・。
シャイニングより
きさまは一度だっておれを愛したことなんかなかったんだ。そうすればおしまいだってことを知りながら、きさまはここから出ていくことを望んだ。きさまは一度でもおれのせ・・・せ・・・責任ってものを考えたことがあるか?いいやあるまい、これっぽちものだ。きさまの考えることといったら、おれの足をひっぱることだけ。
閉ざされた空間で家族は強制的に向き合うこととなる。なぜなら問題から目を反らすようなこと、スーパーへの買い物だとか、日常的な家事だとか、公共の乗り物で出かけるとか、そういったことが全て失われているからだ。
ジャックは夫として男として父親として一度受けた仕事は責任を持ってこなさなければならないと思っていたし、今更下界に戻ったところで仕事もなく家族が困窮することは妻の目にも明らかなのに下山したがる妻を自分を愛していないのだと決めつける。
対してウェンディはアル中の克服に勤しむ夫に期待を抱きながら、過去の過ちである息子への暴力を許せないでいた。このホテルの怖さはそういった各々が意識的に蓋をしている薄暗い部分を嗅ぎあてることだ。
シャイニングより
ホテルが欲していたのは息子・ダニーだった。なぜなら彼の持つ"かがやき"は人の心理を読み解く故にこのホテルが欲する人物をホテルから遠ざける可能性があるからだった。
ダニーは父親の苦悩を父親の心を見ることで知っていた。だからこそ暴力を受けても父を愛していたのだが、そんな思いは"かがやき"を持たない人間には奇妙な現象、悪く言うと「嘘」や「繕い」にしか見えないときもある。
いまや≪オーバールック≫では、すべてのものがある種の命を持っていた。それはあたかも、このホテル全体が、ひとつの銀の鍵によってねじを巻かれたかのようだった。時計は動きだした。時計は動いていた。
キングの描くホラーというのは日常の延長線上にあるから怖いんですよね。どちらかというとダニーの持つ"かがやき"の方が特別な力であり畏怖するものなのですが、現実的に怖いのはホテルに滞在する何百人の死者の魂とそれに中てられて自分を信じられなくなっていく父親です。
- 作者: スティーヴンキング,Stephen King,深町眞理子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/08/05
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (46件) を見る
現実世界に根を生やすことが難しかったジャックのつまずきに共感する人は多いのではないでしょうか。一度のつまずきが坂道を転がるようにどんどん転がって辿り着いたホテルでは自分を求めてくれていた。現実では誰からも求められなかったのに。
- 作者: スティーヴンキング,Stephen King,深町眞理子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/08/05
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (37件) を見る
映画にはないのがコックが駆けつけてくるときにスノーモービルを貸してくれた現地の人とのやり取り。作中で唯一心が癒される全くの他人同士のコミュニケーションの図。誰の世界にも起こりうる恐怖。それは人の心の傷から生まれる。