深夜図書

書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】あなた、その川を渡らないで~自分が見送る立場の時にこれは悲しいことではないんだと思えるようになりたい~

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≪内容≫

結婚76年目の愛情溢れる老夫婦の日々を描いたドキュメンタリー。小さな村の川のほとりで暮らす98歳のお爺さんと89歳のお婆さん。いつも笑い声が響きわたり、愛に溢れた生活を送っていた。ある日、お婆さんはひどくなっていくお爺さんの咳を聞き…。

 

 人の「生」を見つめるのは楽しいけれど、「死」を見つめるのはどうしてこんなに苦しいんだろうか。生まれたときから分かりきってることなのに、どうして涙が止まらないのか、これが神が罪人の子である私たちに授けた罰なのだろうか・・・と思うほど、誰もが逃れられない悲しみ。

 

生きて、そして死ぬ

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  韓国の田舎村で暮らす二人の老夫婦に密着したドキュメンタリー。14歳で嫁いだお婆ちゃん当時19歳のお爺ちゃんは手を出さなかった。結婚してもお婆ちゃんが傷付くと思ったお爺ちゃんは手を出さずにお婆ちゃんが大人になるまで待つ、と言ってくれたのだとお婆ちゃんは語る。それが嬉しくて数年後お婆ちゃんから抱きついたのだと話すお婆ちゃんの目には涙が。

 

 愛し愛された日々を共に過ごしてきた夫が先に死ぬことをお婆ちゃんは分かっているのだ。お爺ちゃんはお婆ちゃんを溢れんばかりの愛情で包み、その愛の中でお婆ちゃんは少女から強くやさしい大人の女性へと成長していったのであった。

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  二人の正式な生年月日が分からないが、二人は戦時中に結婚し子供を儲けたとのこと。12人産んで6人死んでしまった。まだ小さな時に死んでしまった子供たちに寝間着を買ってあげたかった、とお婆ちゃんは語る。当時はお金がなくて買えなかったのだと・・・。

 先に子供たちに会うであろうお爺ちゃんに「私からだとちゃんと言ってよ」と伝えるお婆ちゃん。お爺ちゃんはすでに耳が遠くほとんど話さない。

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  二人は山奥(たぶん)に二人だけで住んでいる。買いものや日用品をどうやって手に入れているのかまでは描かれていないが、二人の子供たちが集まったり様子を見にくるシーンがたまにある。

 しかしそこではお婆ちゃんの誕生日会だというのに、子供たちが年老いた両親の世話を押し付け合い口汚く罵り合う展開へと発展する。「やめなさい」というお爺ちゃんの言葉も声に力がなく弱々しいせいか、怒鳴り合う子供たちには届かない。

 

 お爺ちゃんの介護を一人きりで行うお婆ちゃん。仲睦まじいと言えばそうだけれど、こういうシーンを見ると頼りたくても頼れない事情があるのかもしれない。

 

 親を何より大事にする、と噂の韓国だったのでこういう子供たちが6人いて誰も面倒をみない(たぶん)というのは割と衝撃であった。

 ドキュメンタリーなので、映画のように起承転結ですっきりしているわけではないし、お爺ちゃんがどんどん悪化していく過程などは他人であるはずなのに全然他人事に見えず自然と自分の父親を重ねて見てしまって苦しかった。

  全員がその川を渡るときがくる。そのとき、自分が見送る立場の時にこれは悲しいことではないんだと思えるようになりたいと切実に思った。