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書評と映画評が主な雑記ブログ。不定期に23:30更新しています。独断と偏見、ネタバレ必至ですので、お気をつけ下さいまし。なお、ブログ内の人物名は敬称略となっております。

【映画】タクシー運転手 約束は海を越えて~メッセンジャーと運び屋がタッグを組んで世界を変える~

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≪内容≫

韓国の反政府デモ弾圧の真実を伝えた記者と彼を助けた人々の実話を元にしたヒューマンサスペンス。タクシー運転手のマンソプは、「通行禁止時間までに光州へ行ったら大金を払う」と言う記者の依頼を受け、民主化デモが行われる光州へ向かうが…。

 

 光州事件はこちら↓

 

 光州事件 - Wikipedia

 

 1980年ってめっちゃ最近ですよね。約40年前って考えると自分のかあちゃんとうちゃんが普通に?生活してたんだし・・・たかだか40年でこんなに世界は変わるんだってことを如実に感じました。

 

世界を変えてくれよ

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 1980年の韓国・光州市で起きているデモに目を配っていたドイツ人記者のヒンツペーター。(以下記者と書く)しかし情報が少なすぎて不信感を抱く。更に現地から急に連絡が途絶えたと聞いた記者は真実を追い求めるために、ビジネスマンを装い光州に潜入。最初こそ記者魂でカメラを離さなかったが目の前で無抵抗のまま殺されていく市民たちの姿と血だらけの患者まみれの病院内で気力を無くす。

 

 一方、運び屋(タクシードライバー)であるマンソプは、父子家庭で家賃滞納をしていた。そのせいで一人娘が大家の息子にいじめられても「家賃返せ」と取り合ってもらえないことに悔しさを感じていた。そんなときに、ある外国人を光州に乗せていけば10万ウォンだという話を聞き英語が分からないにも関わらず記者をタクシーに乗せる。

 

 最初は金目的だったが、光州で起きている残酷な現実を目にしマンソプは記者に真実を世界に伝えてもらうべく彼を軍の攻撃から守りぬき、見事出国まで見届けたのだった。

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  でも、マンソプだけが記者を守ったのではなく、光州市の人たちが文字通り命がけで記者に光州の未来を託したんです。

 この時代、まだテレビのニュースと新聞だけが国民の情報源だったため同じ韓国内でもマンソプの住むソウルでは、軍が市民を制圧しているのではなく学生のデモを制するために軍が戦っている、という図式でテレビに流れていました。

 しかし実際は白旗を上げても一方的に撃ち殺され、全ての市民を虐殺する勢いで軍は拳を振り上げていました。軍の命令でニュースは規制されているわけなので、もちろん国外にも本当の情報が行くはずもない。

 だからこそ軍は外国人記者を韓国国内から出すわけにはいきませんでした。本当は光州内で撃ち殺そうとしたのでしょうが、マンソプと仲間のタクシードライバーの協力によってソウルに辿り着き、一便早い飛行機に乗り込んだおかげで真実を世界に伝えることに成功したのです。

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  光州内では歩いているだけで撃たれるので、撃たれて倒れている人を助けようにもできない状態でした。それでも我慢できずに肉親や恋人を助けようと出ていく人たちが次々に撃たれ倒れていく光景に、タクシー運転手はタクシーをバリケードとして使いながら負傷者を乗せ病院に運ぼうと一致団結します。

 この映画、ものすごくタクシーが大活躍なのです。サリン事件の時も、現場になった駅ではタクシーに乗れるだけ乗って病院に行ったりしていたそうで、タクシーっていうのは普段高級なので乗れないのですが、緊急時にはものすごく貴重な存在なんだな、と深く感動しました。

 サリン事件の被害者たちのインタビューがまとめてある本です。

この本の感想を読む。

 

 最近では香港デモの現地内容がtwitterで多く見られました。40年前はこうやって命がけで外国人がカメラを回し現地の人の協力を得て九死に一生レベルで持ち帰った映像だったのが、今は現地の様子を現地の人があげて、それを普段使ってる端末で見ることがきるのだ。今の人たちはリアルタイムで見ることができる。少なくとも"知る"ことが難しくない時代に生きているのだ。40年。

  途中、マンソプが娘に靴を買ったんですが渡さないまま光州に戻るんです。いや、一回戻ってぇええええ!顔見せてやぁああああああ!と娘視点になりました。そういうマンソプの家庭のシーンとか、タクシーVS軍用車のカーアクションとか、歴史映画にもエンタメがつがつ盛り込んでくれているので、親しみやすいと思います。